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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■山麓閑話
ステップやアルコホリズムの話ばかりだと何なので、たまには違う話でも。
最近「円安」なのだそうです。1ドル100円近くになっています。ただ、年配の人は1ドル360円だった時代を憶えているでしょう。
これは、1950年以降の対ドル為替レートのグラフです(wikipediaより)。太平洋戦争敗戦後の1945年から1971年までは、1ドル=360円の固定相場制でした。その後1ドル=308円の時代を経て、1973年に変動相場制に移行しました。
その後しばらくは、1ドル=180円から300円弱を行ったり来たりします。これがざっと10年間続きました。
1985年のプラザ合意から2年後のルーブル合意までの間に、1ドル=120円まで円高が進行します。これは各国政府による協調介入で、意図的にドル安(円高)を実現するものでした。
それから2007年ぐらいまで約20年間は、100円から150円弱を行ったり来たりです。しかし2007年からは、政策によって円高がさらに進み、2011年に戦後最高値の1ドル=75円を記録。その後も70円台が続きました。
円高が進むということは、日本円の価値がドル換算で上がるということです。1ドル=80円とすると、円の価値は1ドル=360円時代の4倍になったということです。
例えば、時給720円で働いている人がいるとしましょう。1ドル=360円時代なら、ドル換算で時給2ドルです。それが1ドル=80円時代になると、時給が4倍になって時給8ドルです。円でもらっている額は変わらないのに、世界の基軸通貨であるドルではどんどん時給が上がっている計算になります。
給料をもらう側からすれば、日本円でもらう額が増えるわけではないので、特にうれしくありません。しかし、給料を払う側の企業からすればありがたくない話です。特に輸出企業の場合、国内の生産コストが上がるので、国際的な競争に不利になります(自社の製品が勝手に値上げされてしまうようなもの)。
輸出が減る一方で、海外のものが相対的に安くなるので輸入が増え、結果としてGDPの伸び率が悪くなって不景気になります。これが円高不況と呼ばれるものです。1971年以降、長期的に見れば、日本はどんどん円高へと進んできました。この40年間、日本の経済は円高不況との戦いの連続だったと言っても過言ではありません。
一般に、輸出産業の生産性は高く、輸入産業は低くなります。しかし、円高になり不況になると、輸出企業は海外に生産拠点を移してしまいます。実際日本では1980年代以降、自動車や電機の企業がどんどん工場を海外に移転させてきました。新規の投資も多くが海外に対して行われています。
これは生産効率の高い仕事が海外に流出し、効率の悪い仕事が国内に残るということです。効率が悪いとは、キツイ仕事を長時間しても給料が少ないということです。企業は競争に勝つために「効率化」を追求しました。特にバブル期以降、経済団体の発表する文章には効率化の文字が目立ちます。
そして働く従業員にも効率化が求められました。無駄な時間を使うな。のんびり仕事をするな、ということです。無駄の排除ということです。
効率化は企業が生き残るのに必要なことでした。そうでなければ国際競争に勝てず、国内の競争相手にも負けて、市場から撤退(つまり倒産)させられてしまうのですから。
ただ最近思うのは、効率化=非効率(無駄)の排除は、日本全体にとって良いことだったのだろうか、ということです。
どんどん効率化が行われてきた、ということは裏返せば、昔の日本の職場は余裕があった(無駄だらけだった)ということです。何十年か前の日本では「職場結婚」というのが多かったのですが、それには職場で若い男女が親しくなるだけ雑談できる余裕があり、周囲もそれを容認する労働環境だったということです。少子化と効率化は無関係ではありますまい。
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04月18日(木)
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