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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■AAミーティングはバイキング料理?
「AAミーティングはスモーガスボードみたいなもんだと思う」

スポンシーと一緒に公民館の草むしりをしながら、そんな話をしたのですが、当然それだけではまったく理解してもらえなかったので、もうすこし詳しく話をしました。

私たちの身体は、私たちが何を食べるかによって、健康にも不健康にもなります。栄養のバランスが取れた食事を心がければ健康が維持されるし、偏食が激しければ不健康になります。脂の多い、味の濃い料理は美味しいものですが、生活習慣病の元です。炭水化物主体の食事ばかりだと、アミノ酸が不足して鬱になりがちです。

身体を健康にしたければ、好きになれない食品も食べた方が良いわけです。(医食同源というやつね)。

同じ事は、精神についても言えます。

私たちには誰にでも「自分なりの考え」というものがあります。他の人から何かを言われたときに、自分が納得できる考えであれば賛同できるし、納得できなければ退けてしまいます。私たちが食べ物に好き嫌いを持つように、考え方に対しても好き嫌い(偏食)があります。

そして、考え方の偏食がひどくなると、私たちの精神は不健康になってしまいます。「回復の役に立つ」として示された考え方でも、気に入らなければ退けてしまう傾向が私たちにはあります。偏食は自力ではなかなか直せません。

さて、スモーガスボードという料理があります。日本ではバイキング形式とも言います。様々な料理が並べられていて、自分の好みに合わせて選んで食べる形式です。バイキング形式のレストランでは、僕はたいてい食べ過ぎてしまいます。

バイキング形式では、人は自分の好きな料理ばかり取ってくるものです。嫌いな料理をたくさん取ってくる人は滅多にいません。健康に気を使っている人は、栄養のバランスを心がけているでしょうが、それでもやはり手を付けない料理があります。

AAミーティングは、参加するメンバー一人ひとりが自分の考えを話すものです。人間は誰一人として同じではないので、ミーティングでは様々な考え方が提供されます。いわば、考え方のバイキング料理みたいなものです。ミーティングの参加者は、他の人の何らかの考えを取り入れて帰るものですが、誰のどの考え方を取り入れるかは自分次第です。もちろん、私たちには好き嫌いがあるので、気に入らない考えは否定して取り入れることはありません。考え方の偏食の結果、私たちの精神は不健康なままです。

偏食がなかなか修正できないように、自力で回復するのも難しいことなのです。

10年以上前のことですが、日本のAAには「司会者の心得」というリーフレットがありました。ミーティングで読み上げられることもありました。それには、こう書かれていました。

「司会者が話したことも、他のどのメンバーが話したことも、個人の意見であり、AA全体を代表した意見でも、このグループを代表した意見でもありません。持ち帰りたいものを持ち帰り、それ以外は、この場に置いていって下さい。」

持ち帰りたい意見だけ持ち帰り、持ち帰りたくない意見は忘れてしまえ! という、まさに偏食の勧めです。このリーフレットが廃止されたのは良いことだと思いますね。

AAにやって来るアルコホーリックの精神は不健康です。考え方も不健康に偏っているし、なおかつ考え方の偏食も激しいので、気に入らない考え方には腹を立てるだけです。だから、AAミーティングだけで回復するのは実は結構難しいことなのです。

そのために用意されているのがスポンサーシップという一対一の関係です。スポンサーは「このような考え方をしなさい」という提案(という名の指示)をします。バイキング料理のような好き嫌いは許容されません。スポンシーに必要な栄養(考え方)を摂ってもらって、健康を回復してもらうのがスポンサーの役目です。もちろん、ニンジンの嫌いな子どもにニンジンを食べさせようとするようなものですから、反発があるのが普通です。当然そこには工夫が必要だし、一筋縄ではいかないし、失敗もあります。


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10月15日(月)
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