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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■リーフレット「司会者の心得」について
メールで問合せがあったので、他にも関心がある人がいるかもしれないと思い、雑記に書いておきます。

10年ほど前まで、日本のAAでは「司会者の心得」というリーフレットを頒布しており、ミーティングで読み上げられることもよくありました。
それには、こんなことが書かれていました。

・司会者が話したことも、他のどのメンバーが話したことも、個人の意見であり、AA全体を代表した意見でも、このグループを代表した意見でもありません。
・持ち帰りたいものは持ち帰り、それ以外は、この場に置いていってください。
・ここで話されたことや、ここで会った人のことはこの部屋にとどめておいてください。
・出席している方々のプライバシーを尊重するために、写真撮影、テープ、メモ等はご遠慮ねがいます。

なぜこのリーフレットが作られたのか古老に聞いたところ、かなり以前に関東でプライバシーがひどくないがしろにされるトラブルが続発し、対策として自分たちで作ったものが徐々に広がって、やがてオフィスから配布されるようになったそうです。

「司会者の心得」に書かれたことの中には、AAの方針に間違いなく一致する部分もありますが、それぞれのメンバーやグループの判断に任せるべき部分も含まれています。ところが、これがミーティングで読み上げられていると、これがAA全体の方針であるとか、ルールであると勘違いする人が増えてきました。

例えば、どこそこのミーティング会場で○○さんに会った、という話をヨソでしてはいけないのだ、とか、ミーティング会場でメモをとってはダメなのだ、というふうに、これを「AAのやり方」とか「ルール」と解釈し、そこから外れた人を責める道具に使う人まで現れました。それは、最初に善意でこのリーフレットを作った人たちの意図から明らかに外れたものでした。

そんな事情もあって、10年ほど前に「司会者の心得」は廃止することになりました。もちろん、もう使ってはならぬ、という話ではなく、使いたいグループが使い続けるのはそのグループの自由ですが、AA全体で使うものとして配布することはやめたということです。

代わりに希望するグループには「ブルーカード」というのを頒布することにしました。ブルーカードも「司会者の心得」に似たリーフレットで、ミーティング会場で読み上げられることを目的としたものです。そこに書かれた文章を要約すると、とてもシンプルです。

・「AAの目的は一つ」であり、ミーティングでは「アルコールの問題」「アルコホリズムに関わること」だけが分かち合われるようにお願いします。

というものです。

僕としては「司会者の心得」が「ブルーカード」に替わったのは良いことだと思っています。

「司会者の心得」の内容は善意で書かれたもので、常識的なものです。例えば、プラバシーを尊重することは(自助グループに限らず社会一般で)大事なことです。ミーティングで自分が話したことが、どこまでも広がってしまうのであれば、話しづらくてしかたありません。特にビギナーにとって、秘密が守られるということは大事なことです。依存症という病気に対する偏見は少なくなってきているものの、自分がその病気であると認めるには恥の意識が邪魔になることもしばしばです。それを認めることが回復の第一歩であるなら、ビギナーの回復のためにもミーティングで話されたことが外に漏れないことが大切です。

でも、ビギナー期を過ぎれば次第にそのことは気にならなくなります。何百人の聴衆の前で話をしたり、何千部も発行される雑誌に記事を書いたりできるようになります。それは、自分自身の中にあった(病気に対する)偏見が取り除かれていったから、つまり回復の結果です。

ミーティングで話をしている目の前でメモを取られたら、話しづらいでしょう。取材じゃないんだし。多くのグループでミーティング中のメモを歓迎しないのには、そんな理由があると思います。

でも私たちは「経験を分かち合う」ためにミーティングをやっています。つまりそれは、お互いに経験を伝え合うということです。伝えるために話をしているという意識があれば、相手が「メモを取っても良いか」と聞いてきたら、断る理由はありません。

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10月19日(金)
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