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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■mil 原点回帰運動について(その6)
「バック・ツー・ベーシックス」や「ビッグフット」にどんな意味があったのでしょうか?
少なくとも僕は「これだけで回復できた」という人は一人も知りません。これらのビギナー向けのテキストがメンバーに回復をもたらさなかったのは明らかなことです。(回復した人はそれ以上のことをしています)。そもそもどんな形式であれビギナーズ・ミーティングとは、それだけで回復が達成できるものではありませんから、効果がなかったと非難するにはあたりません。
ある精神科医がビッグフットに対して「これは旅行のパンフレットのようなものだ」と評しました。私たちが旅行会社のパックツアーに申し込むと、旅行の日程を書いた紙が送られてきます。そこには何日にどこへ移動し、何を食べ、何を見、どこへ泊まるか書いてあります。それを見て私たちはどんな旅行になるのかおおよそ理解します。もし旅行に申し込んでも、集合場所しか知らされず、旅行の内容についてさっぱり情報がなかったら、あなたは大いに不安になるのじゃないでしょうか。
12ステップが旅行そのものだとすれば、ビッグフットは旅行の日程表のようなもので、旅行(ステップ)の概略を把握できる効果があります。けれどパンフレットを読んだだけで実際に旅行をしなければ、旅行の経験は得られません。しかし、旅行に行こうかどうか迷っている人には、旅行の中身を知ることは決断する上で大切です。
もし日本のAAがステップで回復した人の集合体であったならば、ミーティングではステップという旅行の経験談がたくさん話されていたに違いありません。その話はビギナーの人たちの耳にも入り、自分もどんな旅行をするのか(つまりステップは具体的にどうするのか)おおよそのところがはっきりと分かるはずです。
しかし現実のAAにステップをやった経験者が少なく、経験と力と希望が分かち合われていないとしたら、ビギナーの人たちには情報が与えられず、突然「ステップをやろうじゃないか。私がスポンサーになってあげよう」という人が現れても、知らないおじさんについていくのは怖いと感じて怖じ気づいて当然です。
こうして考えてみると、ビッグフットの果たした役割は、「ビギナーをステップにいざなう」という本来通常のAAミーティングが果たさなければならない役割であり、その機能を代行したにすぎなかったわけです。
「バック・ツー・ベーシックス」や「ビッグフット」を経験した人の中で、準備ができていた人たちはビッグブックのやり方でステップに取り組みました。ビッグフットは入り口として十分な役割を果たしたと言えます。ビッグブック・ムーブメントの成熟とともに、こうしたビギナー向けミーティングは下火になっていった感があります。しかし、何らかの形のビギナーズ・ミーティングは常に必要とされているはずです。いずれ新しい何かが始まるのではないか、と期待しています。
さらに続きます。
12月02日(水)
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