ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■mil 原点回帰運動について(その5)
さらに続きます。

「ワリー・Pという一個人の12ステップの解釈を、AAの原理だとして広めてはならない」という批判を受けて「バック・ツー・ベーシックス」は1年あまりで使われなくなってしまいました。では本当にワリーの解釈は偏っていたのかどうか? 6年経ったいま再評価してみると、それはワリー個人の解釈ではあるものの、決してビッグブックの伝える内容から外れてはいません。ワリーの本もあくまでビッグブックを読むことを前提としていたわけで、AAの原理から外れようがなかった、ということでしょう。批判は的はずれでした。

しかしワリー・Pの本を日本で出版して使っていこうとしても、翻訳許諾のために提示された条件が厳しすぎてクリアできそうにありませんでした。そこで日本のメンバー達は一計を案じました。自分たちでテキストを書けばいいのです。
日本ではAAメンバー自身が回復のためのテキストを書くのはごく珍しかったのですが、アメリカではたくさんのテキストが広まっていました。ネットでダウンロードできるものもあれば、ヘイゼルデンで売っているものもあります。そこで日本のメンバーも自分たちが手にしたもの基づいてテキストを作ることにし、完成させたのが「ビッグフット」です。

ビッグフットはビギナー向けミーティング用で、「1時間のミーティング4回で12ステップすべてをこなす」というコンセプトは引き継がれました。これを使ったAAミーティングが行われるようになり、毎夏には一泊二日で12ステップを学ぶセミナーが開かれるようになりました。

当然予想されたことでしたが、これもワリーの本と同じように批判の対象となりました。AAのオフィスで売っている本ではなく、メンバーが書いた本をミーティングで使って良いのかどうか。かまびすしい議論が続いた挙げ句、その是非は常任理事会というAAの最終責任機関に持ち込まれました。彼らの判断は、賢明にも政府的役割を避けました。ビッグフットをAAミーティングで使うことの是非は判断せず(つまりそれは各グループの良心に委ね)、AAと外部の接点になる病院メッセージではメンバーが書いたテキストは使用しないで欲しい、という限定的な依頼の形を取りました。

それでビッグフットを使っていた病院メッセージで、ビッグブックだけを使うことになったわけですが、それで特に不都合は起きませんでした。ビギナー向けのミーティングでも本を二冊使うのは煩雑だと感じられるようになりました。こうして、独自のテキストを作って使う熱は徐々に冷めていきました。

現在でも「ビッグフット」の名前を冠したミーティングは行われていますが、すでに独自テキストは行われておらずビッグブックのみを使っているという話です。それでも、1時間のミーティング4回で12ステップを、というコンセプトは維持されたままです。

まだ続く。

12月01日(火)
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