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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■日本アルコール関連問題学会岐阜大会の印象(その2)
その人の問題を良く分解してみれば、社会経験の圧倒的な不足だったり、あるいは知的な弱さだったり、その人固有のスペシャルニーズが見えてくるはずです。
不思議なことに(?)そうしたスペシャルニーズを抱えた人は、パチンコにはまり込んでみたり、スマホのゲームにどっぷり使ってみたりします。それを表面上だけ見てギャンブル依存とかネット依存と見なしてしまうのも残念なことです。
(ギャンブル依存や性依存の存在を否定するわけではありませんが、ギャンブルや性の問題がある=依存症ではありません)
そしてその固有の問題は、実際にソブラエティやクリーンを維持する妨げになっているので、解決のために手助けが必要なのは間違いありません。AAのミーティングに通ったり、12ステップに取り組んでも、そうした個別の問題に対する手助けは期待できません。また家族が支援者に相談に行っても、その支援者がこうした問題が見えていないクソ馬鹿野郎様だったりすると、「家族の手助けは共依存ですから突き放しなさい」とか助言してしまい、家族がそれを真に受けて事態が泥沼化してしまったりします。
こうしたスペシャルニーズを抱えた人は目立ちます。普通の支援だけでは安定した回復に結びつかず、スリップを繰り返しがちな「困難ケース」になりがちだからです。病気が重い人、回復する気(やる気)のない人だと事情を知らない人たちからは思われがちです。でも依存症という病気が重いかどうかは分かりません(ひょっとしたら依存症ですらないかもしれない)。
クソ馬鹿野郎様でない良心的な支援者は、そうしたニーズを抱えた人を集めて支援を試みます。そして、それが功を奏して結果を出します。そして学会の大会や各地のセミナーで発表されていたりします。うん、あなたは素晴らしい支援者だ・・・が、ちょっと待って。それって「アディクションの支援」とは違うんじゃないですか?
アルコホーリクは働かないと飲んでしまうから、就労支援が一番良い、という人がいます。確かに、働ける人は働くべきだし、働きづらい人には綿密な支援が必要です。でも、それってアディクションの支援とは違いますよね。その人の抱えるスペシャルニーズへの支援です。
その人の問題をよく見極め、その人に合った支援をする。画一的な病気への支援とは違う「人に対する支援」です。たしかにそういう言葉を聞く機会が増えてきました。本質だと思います。
さて、このスペシャルニーズへの支援をアディクションの支援者(例えばAAスポンサー)がするべきなのでしょうか? 僕は多様なニーズに応えられるのが良いスポンサー、良い支援者だと思ってきました。けれど、最近では様々なことに手を出すより「共通する問題」に集中したほうが良いように考え直しています。
僕は数年前から発達障害のことに関心を持って、いろいろ学んできました。発達障害のことについては(例えば自閉症の支援者などが)20年、30年に及ぶ支援の経験と知識を集積しています。アディクションに関わる人間が一からノウハウを蓄積しようとするより、任せられるものはその道の専門の人に任せてしまった方が良いんじゃないでしょうか。
知的障害にはそのための施設や支援者があるし、精神障害についても同様。単なる就労支援だったらリワーク施設があるし、金銭管理だったら社協の任意後見制度を使っても良い。(それが使えればの話ですが)。多様な支援メニューを目指すよりは、むしろそういった他分野の専門家と連携して協力できることの方が大切ではないかと。
こうやって共通の問題とスペシャルニーズというふうに分類してみると、今自分が取り組んでいる問題がどこに位置するのか見えてくるかもしれません。
依存症は解決が難しい問題です。5年、10年と酒をやめ続けられる人は多くありません。多くの人たちが、本人も、家族も、支援者も、解決を見出そうとしています。その中で成果を上げたことが次々と発表されてきます。けれど、12ステップのような共通の問題への解決策がスペシャルニーズを解決できるわけではありません。また、スペシャルニーズへの対応策が依存症全体の問題を解決できるわけでもありません。全体像を見失うと、右往左往することになります。
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08月05日(月)
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