ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■AAを自助グループと呼ばない
つまり「自助」とは人の力を頼らずに自力で成し遂げることであり、スマイルズの自助論はそれを美談として取り上げた本です。

セルフヘルプにしても自助にしても、その語義の中心に「人の手助けを受けないで」という意味があります。ところが、自助グループというのは人から手助けを受けるために参加する場所です。確かに、自助グループは行政主導ではないし、職業的専門家から指導を受けるわけでもありません。けれど、それは人を頼らず、人から手助けを受けないという意味ではなく、むしろその逆、積極的にお互いに助け合う場です。

セルフヘルプグループは「互助会」と訳した方が良かったのでしょう。英語でも mutual help/mutual aid group という名前が使われています。「相互援助グループ」「相互支援グループ」と訳されます。

自助という言葉は誤解を生みやすく、AAを指して自助グループという言葉を使うのは適切とは言えません。

もうひとつ誤解を挙げます。自助グループは共通した問題を抱えた人の集まりとして説明されることがよくあります。AAの序文にも「共通の問題」という言葉が出てきます。

しかしながら、ビッグブックの第二章の冒頭にはこうあります。

「同じ苦しみを味わったということは、私たちを結び合わせる強力な接着剤の一つではあるが、それだけでは、いまの私たちのようには決してなれなかっただろう。私たち一人一人にとっての偉大な事実は、私たちが共通の解決方法を見つけたということにある」

共通の問題を抱えている人が集まってもAAにはなりません。AAミーティングは、ある人は問題をこのように解決した、別の人は別の方法で解決した・・という分かち合いをする場所ではなく、全員が同じ解決方法を共有している集まりです。そして、その方法が12ステップなのです。

自助グループ(self-help group)とは何かがはっきり定義されているわけではありませんが、共通の問題を抱えた人の集まりである事は意識されていても、ひとつの解決方法を参加者全員が共有することを目指していることはあまり意識されていません。AAはそうですが、自助グループは必ずしもそうではない。

だから、やはりAAを示すのに自助グループという言葉は使わないほうが良いのです。

実のところAAは自らを自助グループだと定義したことはないし、AAはself-help groupだと表明したことはありません。アメリカのGSOや常任理事会の出した文書を総ざらえして調べたわけじゃありませんが、おそらく無いでしょう。

AAをself-help group(自助グループ)に分類したのはAA外の人たちのしたことです。その影響を受けてAAメンバーがAAのことを自助グループだと思い、AAは自助グループだという情報を発信したことはいくらでもあったことでしょう(このサイトのタイトルにもまだ含まれているし)。日本のJSOなり理事会の発した文書に自助グループという言葉が含まれていたことがありました。今は、自助グループという言葉は使うことを避けるようにしています(取り締まっているわけじゃありませんよ)。

(注:AAはセルフ・サポートという言葉は使っています。ただしこれは、伝統7にある経済的な自立を示す言葉です。AAはAAメンバーからの献金のみを受け取り、他から寄付や助成金を受け取りません。そのことを指してself-supportと言っています)。

大切なことは、AAはお互いに助け合う場所だということです。

先月アメリカに行く機会があり、三晩連続でAAミーティングにも出席しました。ミーティングの前後には、たくさんの人が僕に声をかけてくれました。「日本から来たのか。ステップはやっているのか。スポンサーはいるのか」と声をかけてくれました。「なんだったら俺がスポンサーをやってやろうか」という勢いです。数ヶ月前までホームレスをしていて今も正業があるか怪しい若い黒人がそう言うのです。明日には僕は日本に帰っちゃうのにね。それはともかく、AAへ来たことを歓迎する気持ちと、「俺はお前の手助けがしたいんだ」という闇雲で暑苦しいほどの熱意は感じました。その熱意こそが、アメリカのAAを140万人の大所帯にした原動力の一つに違いありません。


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07月10日(水)
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