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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■書評:ギャンブル依存との向きあい方(その2)
高澤さん、中村さんは、それぞれ日々の仕事でギャンブラーに接する中で、「アディクションとは違う問題」を幾つかにタイプ分けしています。発達障害タイプは、上に書いた自閉圏やADHDなどです。知的障害のタイプもあります。また、発達障害とも知的障害ともされなくとも、全般的にキャパシティが小さいタイプは、普通の人なら耐えられる負担でも大きなストレスに感じてトラブルに発展します(キャパ小タイプという名が与えられている)。いずれにせよ、本人の苦手なこと(例えば金銭管理)を無理にやらせるよりは、周囲が支える仕組みをうまく整えることによって、問題が解決していくことが多いわけです。個別の具体的な対応策については、ここで紹介しきれるものではないので、本を読んでいただくのが早いと思います。
もちろん、きれいにタイプ分けできるわけではなく、中間タイプもあるし、アディクションタイプの人もいるわけです。必要なのは、その人の生育歴や生活ぶりを調べて、どのような支援が必要かを調べ、個別のメニューを組み立てることです。その人がアディクションタイプであれば、GAに通って、経験を分かち合うことで内面的洞察を深めるやり方も奏功しうるでしょう。
彼らの発信する情報から、ひとつの明確な考えが導き出されます。「何かを乱用しているからといって、依存症とは限らない」ということです。ギャンブル乱用だからといって、ギャンブル依存症とは限らない。もちろんそのことは、アルコールや薬物にも言えますし、最近の新しい依存症のジャンルにも言えることでしょう。なるほど、ミーティングでの分かち合いや12ステップは強力なツールではあるのですが、何でも切れる矛(ホコ)ではありません。そのことは、12ステップを使って問題解決を手伝っている立場として、身に染みて感じることです。畑違いのことは、その分野の人に任せるのが良いわけで、何でもかんでも12ステップで解決しようとするのは頭が悪すぎる、専門性があるとは言いません。
もしあなた自身か、あなたの家族がギャンブルの問題を抱えていて、他の人のようにすんなり問題が解決していかないのなら、この本を手にとって通読されることをお勧めします。また、ギャンブル以外の分野の人にも一読をお勧めしたい。きっと視野が広がる体験をするでしょう。
また、この本の後ろ3分の1はワンデーポート理事長の稲村さんによる債務整理の説明になっています。ギャンブラーの人は借金の問題を抱え、「借金さえ解決すればギャンブルの問題も消える」と信じている人も少なくありません。しかし、借金には原因があるわけで、その原因を解決せずに債務を片付けても、再び借金ができるだけです。稲村さんは司法書士として債務整理に関わるなかで、そのことに気付かれてギャンブルの支援に入ってきた方です。
具体的には、借金が表面化した時(家族にばれたとき)こそが解決のチャンスであり、そのチャンスに向けて家族をすること。また、借金は片付けるよりむしろ返さないでおくのが良いとしています(片付けるのは本人の回復が軌道に乗った後)。そうは言っても、借りた金を返さなければ催促が来てしまうわけで、それにどう対応したら良いか。また家族はどうすれば良いか。法律の専門家の立場から解説しています。
ギャンブルの問題に関わるに当たって借金のことは避けて通れないわけで、特にご家族、支援者の人にこの項は必読だと思います。
最後にまとめになりますが、昔は依存症は病気だとは思われていませんでした。そこからひとつ進歩して、依存症は病気だということが知れ渡るようになりました。21世紀になって、そこからさらに進歩すべき時期が来たのでしょう。この本がその新時代を切り開く先鋒となることを期待を表明して、紹介を終えることとします。今後とも、このお三方の活動に注目していきます。
※アディクション関係の本は1,500冊売れれば御の字だと言われます。この本は初刷り1,500部が早々に品切れになり、アマゾンの中古が定価の数倍に跳ね上がるという現象を引き起こしました。幸い増刷もでき、現在は安定入手できる状況ですが、ご興味を持たれた方は早めの入手をお勧めします。
(この項終わり)
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01月10日(木)
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