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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■荒削りな人生学校
しばらく前のことです。ある人(AAメンバー)から、こんな事を言われました。
「ひいらぎさんは、僕らアル中とは違ったタイプの人間なんだと思ってましたが、この前のイベントで、やっぱり同じ仲間なんだなと思いました」
僕のことを(強いて言えば)バランスの取れたまともな人間だと勝手に思っていたのが、一泊二日のイベントをその人と一緒に過ごしたことで、僕もアンバランスなアル中であることが分かってもらえた、ということでしょうか。「化けの皮が剥がれた」とでも申しましょうか。元々僕は何ら特別なアル中ではないし、マトモでもありません。
僕の考えでは、どれだけ酒を長くやめようとも、どれだけ回復しようとも、やっぱりアル中はアル中であって、バランスが取れることもないし、マトモにもなりません。理想的な回復を遂げたアル中に会ったことなど一度もありません(キッパリ!)。
AAに入った最初の頃、地元のAAメンバーの姿に正直失望を感じていました。「心の平安」などという話をしている割りには、メンバー同士が些細なことで仲違いや諍いを繰り返していたからです。この地元の「先行く仲間」はダメであっても、日本のどこかにはもっとまともなAAをやっている人たちがいるに違いない・・・違いない、とそう期待しました。
その期待の先が関東のAAでした。何しろ日本のAAメンバーの半数が関東という狭いエリアに集中しています。その数多いAAメンバーの中には選りすぐりの人たちがいて、きっと理想的なAAをやっているに違いない・・違いない。しかし期待は現実によって裏切られました。確かに人数が多ければ、マンパワーもあるし献金も集まるので活動は豊富なのですが、些細なことで争いが起こるのは変わりありませんでした。
メンバーの中から選ばれてきた評議員や理事も、会議の席上でしばしば感情的にムキになって対立します。そして極めつきはAOSMという国際的なイベントにオブザーバー参加したときのことで、その国のAAを代表してやってきたAAメンバー同士が、つまらないことで言い争いをしている姿に、アル中はどこまでいってもアル中であるという思いを深くしました。(英語の聞き取りがろくにできなくても、話の中身が似たようなものであるのは容易に想像がつきました)。
性格上の欠点を取り除くプログラムだなんて言いながら、こいつら欠点だらけじゃないか、と自分のことを棚に上げて思ったものです。もう、うんざりだよ、と。
しかしながら、「だからAAはダメなんだ」とAAそのものに失望を持たなかったのはなぜか。
それは(口はばったいけれど)多少なりとも僕も回復を得たからではないでしょうか。
あるとき、ある医師が言った言葉に僕は深く共感しました。
「依存症の人は、いつも良い気分でいることに必要以上にこだわる」
普通の人が普通の人生を送っていても、いつも良い気分でいるわけではありません。なのに、アル中(とか他の依存症の人)はいつも自分が良い気分でいて当たり前だと思っています。生きていて、いつも良い気分でいるなんてあり得ません。普通の人は、不安になったり、腹が立つことがあったりしても、大体そんなものだと受け入れて暮らしています(それが精神の健康であるのですが)。
ところが、アル中の人は、不安になったり、腹が立つことがあったりすると、「これはおかしい。間違っている」と感じ、その状況を変えて気分を良くしようとします。時には状況を変えることに成功するかもしれませんが、むしろ変えられないことの方が多いわけです。そこで、アルコールや薬物やギャンブルによって、無理矢理気分を良くすることになったりするわけです。
人生とか、生活というものは、大小多くのトラブルの連続です。トラブルがない生活なんてものはなく、トラブルが来ても乗り越えていけるという手応えこそが幸せなのではないでしょうか。自分好みの解決じゃなくても、ともかく解決すれば良いんだし。
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01月28日(月)
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