ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■スポンサーの死
彼がAAを離れてからは、滅多に会うこともなくなりました。彼が若い頃の無茶な生活のせいで体を痛めていて、しばしば入院するようになったことも聞いていましたが、見舞いに行ったのは一度きりでした。「俺の前に来るより、その時間で新しい人の相手をしろ」という言葉に甘えて、そのうちにと先延ばししているうちに、その日は来てしまいました。

僕のやり方は彼のやり方とは全然違います。でも彼の目標を僕の目標として受け継いでいる、という自負はあります。感謝を伝えることは滅多にしなかったけれど、彼があの頃キレるのを堪えたことは、決して無駄ではなかったと思ってもらいたい。それが僕のするべき感謝の示し方だろうと思っています。彼が身を引いた苦しみ悩みもよく分かります。だが、あえてそれを引き受ける者がいても良いと思います。

スポンサー夫妻は、AAミーティングに部屋を借りている教会の信徒になっていました。教会の定例のミサの中で彼のことを追悼すると聞いて、半日仕事を休んでミサに出席させていただきました。奥様が一番良い写真を選んだのでしょう。「別人みたいだね」と皆でうなずきあいました。泣いている人もいましたが、自分はまず泣かないだろうと思っていました。だが、「また会う日まで」と賛美歌を歌いながら、ああもう会えないのだと思うと、ふいに涙が溢れました。

神ともにいまして 行く道を守り
  あめの御糧もて 力を与えませ
また会う日まで また会う日まで
  神の守り 汝が身を離れざれ

12月24日(月)
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