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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■AAの共同体とは(その3)
 これはアルコホーリクだけでない、おそらく誰でもやっていることです。グチを聞いてくれる相手がいるのは幸せなことです。配偶者を失った人が淋しさを感じるのは、グチの聞き手がいないことに気づいた時だとも聞きます。

 グチというものは、なにかのトラブルを、自分以外の誰かの責任にしたり、悪口を言ったりするものですから、あまり健全なものとは言えません。しかし、人間というのは100%健全にはなれませんから、必要なものなのかも知れません。

 ただ、AAミーティングでそうしたグチを展開して良いものなのでしょうか。12ステップは、他者の落ち度ではなく、自分の落ち度を追求することによってトラブルを乗り越えていく手段です。だから、グチばっかりの話はAAミーティングには相応しくないと言えます。

 ただ「ビギナーは仕方ない」と言われます。AAではビギナーはあらゆる点で多目に見てもらえます。ともかく彼らは酒を止め続ける必要があり、そのために、ミーティング場でグチをこぼして「心が楽に」なるなら、それもオッケーだろう、というわけです。

 しかし、何ヶ月も何年も経てば、ミーティングで「心の荷物を降ろして楽になる」以上の事が求められます。自分を変えていくことが必要になります。

 自分の話を黙って聞いてもらえることは、幸せなことです。酒を飲み続けているアルコホーリックは、トラブルばかり起こすし、恨みがましくなっていますから、徐々に人間関係を失い、クチを開けば逆に叱られるような関係ばかりが残っています。それが、自分の中のネガティブな感情を言葉に出しても、責められるわけでもなく受け止めてもらえる。これはビギナーには大きな安堵とカタルシスを与えます。

 ただ、この種のカタルシスは、ミーティングへの出席を続けるうちに徐々に薄れていきます。古いメンバー達の関心もより新しいメンバーに移っていきます。2〜3年もすればその人はマンネリ化し、ミーティングに魅力を感じなくなり、グループから離れていきます。もっと早く離れる人もいます。

 AAから離れても、すぐに酒を飲むわけではありません。多くの人は、数ヶ月か数年、あるいはもっと長く酒をやめ続けたあげくに、例の強迫観念によって最初の一杯を飲み、やがて飲んだくれに戻ります。その人は、過去に通ったAAのことを思い出すかもしれません。しかし、同時にこうも考えます。

 「AAは私には効果がなかった」

 この言葉を聞けば、真面目にやっているAAメンバーは怒るかも知れません。AAプログラム(12ステップ)を試すことなくAAを去ったのに、それに効果がないと言うなんて!

 けれどその人を責めるにはあたりません。悪いのはAAのほうです。せっかくその人がAAに何ヶ月か何年か通っていたのに、その間にAAプログラム(12ステップ)に触れ、取り組むチャンスを提供できなかった責任がAAにあります。

 なぜミーティングで共通の解決方法(12ステップ)の話をしなければならないのか? 新しい人を助けるため。AAをつぶさないためです。なぜ日本のAAはメンバーが増えないのか? それは、12ステップに取り組むことなくAAを離れる人が多く、AAが能書き通りの効果を発揮できていないからです。

 日本のAAは二人のメンバーによって始まりました。その一人、ミニー神父の言葉にこんなものがあります。

 「回復を望む人には、そのチャンスが与えられるべきだ」

 日本のAAは、回復を望む人にそのチャンスを提供できなくなっているのではないか? 創始メンバーの理念が失われているのではないか、と危惧しています。

(さらに続くよ)

08月27日(月)
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