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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■AAミーティングはナラティブセラピーなのか?
こう考えると、12ステップとナラティブセラピーは対極的なアプローチです。だから、12ステップグループにナラティブ文化が及んできたとき、12ステップの力が弱まり、導き手たるスポンサーを求める人は減っていったのではないか・・・。ま、今となっては確かめようがない昔の話ですが。

ジョー・マキューは、他の治療法の影響によって、AAの12ステップが「薄まった」結果、AAの有効性が徐々に失われたと主張しています。同じことは北米だけでなく日本でも起きたんじゃないでしょうか。

もう少し、AAなどの12ステップグループはは本来語り重視じゃない、という話を続けます。

日本のAAでは、新しくやってきた人にも、なるべく早くミーティングで話をするように薦められます。もちろん話をせずに「パス」して、ただ聞くことに徹することもできますが、「話すことが回復につながる」という考え方があります。ところがアメリカのAAメンバーに聞くと、あちらでは新しく来た人に対しては、半年か1年ぐらいはミーティングで話をせず、他の人の話をだまって聞くように提案されるのだそうです。新しい人というのは身勝手な自己主張をすることが多く(いるよね、日本でもそういう人)、それが自省や回復の妨げになる、というのがその理由だそうです。

また drunkalogue(ドランカローグ)という言葉があります。drunk は飲んだくれ、logueは「語り」という接尾語です。いわば「飲酒譚」。酒を飲んでトラブルを起こし、社会的に次第に落ちぶれていくストーリーは、時に切なく、時には笑が取れる話で、聞いていて楽しいものです。しかし、あちらのミーティングではドランカローグをとうとうと語る人は好まれないのだそうです。

その理由のひとつが「酷かったころの自分の話」は、しばしば自慢話に過ぎなくなってしまうからです。人はポジティブなことばかりでなく、ネガティブなことも自慢します。もうひとつは、ドランカローグの内容は人によって違います。そのせいでAAの序文にもある「共通する問題」がぼやけてしまうからです。

AAミーティングは、人によって違う問題、違う解決法を分かち合う場所じゃありません。共通する問題、共通の解決方法を分かち合う場所です。ドランカローグは耳目を集めますが、メッセージを運ぶ手段としては良くないのでしょう。

日本のAAは人数がなかなか増えてくれません。けれど、AAミーティングには新しい人は結構やってきます。しかし、続けて出る人は多くありません。一番問題視されているのは、2〜3年するとAAを去っていってしまう人たちの存在です。メンバーシップ・サーヴェイを見ると、この年数あたりでメンバー数のグラフがどんどん縮んでいます。なぜ人がAAを離れていくのか。それはもうAAに魅力を感じなくなったからでしょう。その人たちも、自分自身の問題や自分なりの解決を見つけたからこそ、AAに留まっていたのでしょう。たぶんナラティブな効果によって。しかし、その間にメンバー皆に「共通する問題」や「共通の解決方法(12ステップ)」に触れることができなかったからこそ、もう自分にはAAは必要ないと結論付けて去ってしまったのではないでしょうか。

去っていった人たちが悪いのではなく、「共通する問題」「共通の解決」を提供できないでいる日本のAAに問題があるのだと思います。僕が「AAのメンバーを増やす最善の方法は、いまAAにいるメンバー一人一人が12ステップをやることです」と言うのはそのことです。

ナラティブセラピーは、その専門家に任せておけばいいじゃないですか。

03月13日(火)
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