ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■ホーソン効果
AAは素人の集まりでプロの治療者はいません。しかしそこには同じ問題を抱えた人に対してお互いの関心があります。それに治療的な効果があるのでしょう。フェローシップ(仲間意識)は断酒継続の支えを提供し、ステップは飲まない人への変化を提供すると言われます。だから変化のためには12ステップが必要だということなのですが、それは逆にステップをやらなければ変化がないことという意味にはなりません。ステップに熱心でないAAグループに参加する人にも、ステップが希薄なスポンサーシップでも、やはり何らかの改善がもたらされます。それには「ホーソン効果」に代表される、人は人に関心を寄せられることによって良くなる、という効果があるのでしょう。

日本にはアディクションの施設がおそらく100以上は存在します。しかし専門的なスキルを備えたところが少ないという批判があります。だから自分たちで勉強したり、精神保健福祉士のような国家資格を取得しようという動きがあり、それはそれで素晴らしい歓迎すべきことです。これからそうした動きが強まっていくでしょう。僕自身も自助グループという枠の中で、ステップやスポンサーシップというスキルを広める取り組みをしようと思っています。

しかし、忘れてはいけない、忘れて欲しくないことは、専門的スキル以前に「人に対する関心」が必要なのだということです。関心とはすなわち愛情です。トルストイは「天国とは人がお互いに助け合って生きるところだ」と書いたとされます(僕はトルストイとか読まないから知りませんけど)。ジョー・マキューは、新しく来たアルコホーリクが愛らしいなどということは絶対にない、と書いています。反抗的で助けを拒む人が愛らしいわけがありませんが、そういう人たちこそ最も関心を必要としています。

専門的なスキルなど持たなくても、多くの人を救ってきた実績を持つ施設はたくさんあります。そこに何があったか、それはスキルより大事なことです。

(追記:ここ十数年経済が長いこと苦境にあることにより、どうやって気持ちよく働いてもらうかという心理的手法をとる余裕が失われ、どのように体を動かすかなどの機械的な動きまで決めてしまう現場改善が多くなってきています。こうした労働強化が病んだ人を増やしている側面もあると思います)。

03月31日(木)
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