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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■底つきではなく「底入れ」のために
しかし、絶望が深くても、それだけで人にやる気を出させることはできません。人は絶望が深かろうとも、そこからの出口がなければ、(つまり希望を持てなければ)、絶望的状況に対して「否認で対抗する」だけです。絶望が深ければ深いほど、より頑固な否認と抵抗に出会うだけです。

だから希望や解決を示す必要があります。解決はステップ2で示されます。深い絶望とそこからの出口が示されたとき、人はほぼ自動的に回復に向かって歩き出します。「おぼれる者が救命具にすがりつこうとする真剣さ」(12&12 p.31)というやつです。そこにステップを経験して回復した先ゆく仲間の姿が「生き証人」として存在していれば、なおのこと良いのです。

つまり、底つきは、事態の全貌について正しい情報を提供され、深く絶望し、そこへ示された希望に向かって歩きだすことで成し遂げられます。

底つきは、仲間からの手が差しのべられた環境で可能になる。

スポンサーの最初の役割は、スポンシーを底つきへと導くことにあります。1960年代後半以降AAは様々な力を失った、とジョーは緑の本で書いています(アメリカでの話)。例えば、AAが介入に関する技能を失ったがために、AA以外のところで専門家が「介入」について語り出したのです。介入やMATRIXなどの専門家たちの技法を、AAメンバーが否定的に捉える必要はありません。そこには学べるものがたくさんあります。しかし、まずAAメンバーとして取り組むべきことは、AAが本来持っていた能力を取り戻すことです。

RDの話になってしまいますが、RDのマニュアルの序文にジョーがこう書いています。

「施設の中には、自分の意思に反して入所させられた人や、自分が依存症だと受け入れられない人たちもいます。そういう人たちにどうやってプログラムを応用すればよいのでしょうか。(略)AAの回復の方法を彼らに提示することが何よりも重要、それが答えでした」(http://rdp2010.exblog.jp/9811894/

ビッグブックのやり方という話をすると、棚卸しや埋め合わせのやり方など先のほうのステップばかりが注目されます。しかしジョーが重視したのはステップ1と2でした。否認が強くやる気がない人たちを放置せず、どうやったら底つきや回復へと導けるか。ジョーが心を砕いたのはそこでした。その姿勢こそ、僕がジョーに心酔する理由です。また、それはAAを始めた人たちにとっての最大の関心事であったはずです。

スポンサーは、ステップ1と2を伝える能力こそ磨くべきです。

家族もまた底をつく必要があります。しかし、家族は本人との関係性の中では底をつくことができません。家族もまた事態の全貌について正しい情報を提供され、深く絶望し無力感を味わい、そこへ示された希望に向かって歩きだすことで底をつく必要があります。そのためには、家族には家族の仲間が必要です。

AAや12ステップ以外に、いろいろなやり方が作られ始まっています。AAのメンバーの中には、そうした自分たち以外のやり方を嫌い、否定的な見方をする人もいるでしょうが、決してそんなことをする必要はありません。また、そこから何かをAAに付け加える必要もありません。それよりも、AAや12ステップが本来持っていた力を取り戻す必要があることに目を向けましょう。

12月08日(水)
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