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頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■小ネタ集
《西から風が吹いてきたら 続編》

東京から戻ったぼくは、仕事を探しながらも、ふるさとを満喫していた。
やはりふるさとはいい。
それまで、力んでいた生活が一気に溶けたのだ。
妙な孤独感もなかった。
すぐに友だちに会うことも出来る。
もしかしたらあの人に会えるかもしれない、という確率も大である。
こちらに帰って1週間ほどたった頃に、ぼくは一つの歌を作った。

「さわやかな 春の風
 懐かしい 海の香り
 ぼくはここで 暮らすよ
 そばに聞く 君の声と

 少しだけ 大人の君と
 少しだけ 子供のぼくと
 小さな家を 建てよう
 二人だけの 家を

  華やいだ 春の夢
  かけまわる 雲の上を
  君とぼく 二人だけで
  他にはもう 誰もいない

 暖かな 春の日よ
 優しく つつんでおくれ
 君をもう 離さないから
 優しく つつんでおくれ」

『西から風が吹いてきたら』を書いてから、まだ1ヶ月もたってなかった。
この心境の変化。
ふるさとの力は、何と偉大なんだろう。
もはやぼくは、何が起ころうとも北九州を離れるまいという気持ちになっていた。
そして、その気持ちは今もまだ続いている。


《改装》

いよいよ来週、ぼくの店は改装にはいる。
今は在庫商品の最終処分で大忙しの状態だ。
以前接客した人が、続々と店に現れる。
ぼくが今の店に移ってからもうすぐ5年目に突入するが、顔なじみのお客さんがけっこう多くいることに初めて気づいた。
そのお客さんたちには、「いらっしゃいませ」などという商売人の挨拶ではなく、「こんにちは」という自然な挨拶を交わしている。
昨日、そういうお客さんの一人が商品を買った。
60歳前後の方である。
配達を頼まれて、伝票に住所や名前を書いている時に、そのお客さんが言った。
「よく、こういう店に来ると、『サレ』と書いた紙がぶら下がっとるけど、あれは何かね」
「『サレ』ですか?」
「ああ、『サレ』」
「『サティ』の間違いじゃないんですか?」
「いや、『サレ』。ほらそこにもある」
「どこですか?」
「ほら」
と、そのお客さんは天井を指さした。
しかし、『サレ』などと書いた紙は見あたらない。
「どこですかねえ」
「そこそこ。ほら、ローマ字で『エス、エー、エル、イー』と書いとるやろ」
「『S、A、L、E』・・、ああ、セールですね」
「あれはセールと書いとるんかね」
「そうですよ」
「どういう意味かね」
「『売り出し』という意味です」
「なんか、売り出しか。英語はよくわからん」
今、ぼくの店は、来週の改装に向けて、最終処分サレ中である。


『改装中の話』

処分セールが終わると、約1ヶ月間、店は休みに入る。
パートやアルバイトは、その間休めるのだが、ぼくたち社員はそういうわけにはいかない。
交代で、改装中の店に行かなければならない。
先日、店長から改装中のあらましを聞いたのだが、そこで意外な事実を知った。
それは、改装中は全館停電になり、しかも水も出ないということだ。
事務所にいても、薄暗い。
おそらく、店内は真っ暗だろう。
交代で店に来るのはいいのだが、その状態で何が出来るというのだろうか。
「何も出来んじゃないですか」
「うん、出来んやろうね」
「何をすればいいんですか?」
「朝来てから、すぐ帰ったらいいよ」
「えっ? じゃあ、来んほうがいいじゃないですか」
「でも、いちおうコンピュータは起動させれということやけ」
「で、いつ閉じたらいいんですか」
「すぐ閉じるのもなんやけ、1時間ほどして閉じたらいい」
「で、それから帰るんですか」
「うん」
「・・・」
実労一時間、しかもすることは時間稼ぎ。
そういう状態が、来週から1ヶ月続く。
03月17日(月)
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