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頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■西から風が吹いてきたら(後編)
ある時、ぼくは友人AにN美のことでグチを聞いてもらった。
友人Aは言った。
「やったのか?」
「・・・あのねえ、つき合ってもないのに、何でやらんといけんの?」
「いやー、やっちゃうと大変だよ。あとが」
「だから、やってないって」
言うんじゃなかった。

しかし、結果的にはそれがよかった。
あるコンパの席で、酔っぱらった友人AがN美にそのことで絡み出した。
友人Aが何を言ったのか知らないが、N美は泣きながら「しんたなんて信じられない」と言い捨てて出て行った。

翌日、N美がぼくのところに来て、「話があるんですけど」と言った。
ぼくも言いたいことがたくさんあったので、近くの喫茶店で話し合うことにした。
N美は開口一番、「どうして別れるなら、別れるって言ってくれないの?」と言った。
「別れる? 誰からそんなこと聞いた?」
「Aさん」
「Aが?」
「そうよ。どうしてAさんなんかに相談するの?」
「相談なんかしてない」
「どうしてちゃんと私に言ってくれなかったの?」
「何を?」
「別れるってこと」
「はっきりさせておきたいんやけど、いつおれがつき合うと言った?」
「それは・・・。最初に喫茶店に行った時よ」
「そんなこと言った覚えはない!」
「口にしなかったかもしれないけど、私あの時わかったの」
「何が?」
「しんたが私のこと好きだってこと」
初めて喫茶店に行った時は、N美の相談に乗ってやったのだ。
こちらは真面目に受け答えしていたのに、どこをどう間違ってそんな勘違いをしたのだろう。
ぼくは、そんなに物欲しそうな目をしていたのだろうか。

「悪いけど、そんなことこれっぽっちも思ったことはない」
「つき合ってる時も?」
「だから、つき合ってない!」
「だって、つき合ったじゃない」
「いっしょに喫茶店に行くことがつき合うことか。それならおれは何人もの人と同時につき合ったことになる」
「えっ、何人もの人と同時につき合ったの?」
「・・・。おれは誰ともつき合ってないし、N美はおれにとって、特別な人でも何でもない」
「じゃあ、つき合ってないってこと?」
「そう」
「・・そうなの。じゃあ、別れるのね」
「つき合ってもないのに、どうして別れる別れんの話になるんか?」
「別れるならはっきり言ってほしいの」
ほとほと参った。
この会話が、そのあと30分は続く。

しびれを切らして、ぼくは言った。
「別れると言ってほしいのなら、別れよう」
「・・別れるのね。別れるのね」
そう言ってN美は泣き出した。
うんざりだ。
ぼくはもう、ここにいたくなかった。

しばらくして、N美が「腹が痛い」と言い出した。
席を立ち、トイレに駆け込んだ。
何分か後、N美は青い顔をして出てきた。
「大丈夫か」と聞くと、「吐いたの」と言う。
「困ったのう」
「もういい。帰るから」
「大丈夫なんか」
「別れたんだから、しんたには関係ないでしょ!」
そう言って、N美は席を立った。
しかし、ふらついている。
仕方なく、ぼくはN美を駅まで送ってやった。
その間もN美は泣いている。
しかし、ぼくは何も声をかけなかった。

翌日、友人たちの視線がぼくに集まった。
友人Aがぼくに駆け寄ってきた。
「しんた、どうだった?」
「ああ、あくまでもつき合ってると言うから、『じゃあ別れよう』と言った」
「で、N美は?」
「気分が悪くなったとかで、駅まで送っていった」
「そうか・・・。しんた、さっきN美の友だちから聞いたんだけどさあ」
「え?」
「N美、まだしんたのこと狙ってるみたいだよ」
「どういうこと?」
「昨日、気分が悪くなったって言っただろ」
「ああ」
「それ、どうも芝居だったらしいんだ」
「えっ!?」
「しんたのことだから、送ってくれると思ったらしいんだ」
「吐いて、ふらついて・・。それも芝居やったんか?」
「そうみたい。気をつけたほうがいいよ」

この事件は1月末に起きたのだが、それから2ヶ月の間、ぼくはN美を無視し続けた。

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03月16日(日)
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