ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■西から風が吹いてきたら(前編)
  西から風が吹いてきたら

 西から風が吹いてきたら
 朝一番の汽車に乗って
 懐かしいふるさとに帰るんだ
 向かい風をたどってね

 雨が降ったってかまわないよ
 傘の一本もいらないよ
 だってぼくのふるさとは
 いつだって晴れているんだから

  小さな思い出をたどっても
  ぼくは懐かしいとは思わないよ
  だって東京の風はいつだって
  雨を誘うんだから

 何も告げずに行くよ
 恋人よ、ぼくのことは忘れとくれ
 会おうとも思わないでおくれ
 本当に、もう二度とね…

  小さな思い出をたどっても
  ぼくは懐かしいとは思わないよ
  だって東京の風はいつだって
  雨を誘うんだから

 西から風が吹いてきたら
 朝一番の汽車に乗って
 懐かしいふるさとに帰るんだ
 向かい風をたどってね


コンテンツ「歌のおにいさん」に収録している、『西から風が吹いてきたら』の歌詞である。
今年もまた、この歌を思い起こす季節がやってきた。

今考えてみると、東京にいた頃に一番楽しかったのは、上京2年目の春から夏にかけてだった。
前にも書いたが、その頃、浅草橋の運送会社でアルバイトをしていた。
夕方浅草橋の本社に集合して、豊洲埠頭の倉庫に移動する。
そこで荷物の積み下ろしをするのだ。
けっこうハードな仕事だったが、それなりに充実した日々を送っていた。
最後は、作業中の飲酒をチクられて辞める羽目になってしまったのだが、それでも懐かしい思い出がたくさん詰まっている。
生まれて初めて飛行機に乗ったのもその時期だったし、一日に二度も富士山にドライブに行ったのもその時期だった。
バイト時間の都合で銭湯に行けず、毎日下宿の炊事場で頭を洗っていたのもその時期だった。

まあ、そういう楽しい思い出もあれば、辛い思い出もある。
それが、その年の秋から冬にかけてだった。
胃けいれんを起こし、せっかく始めた新しいアルバイトはクビになるし、置き引きにはあうし、あげくにスリにもあってしまった。
まあ、それも懐かしい思い出といえば、いえなくもないが、どうしても思い出したくないことというものは誰にでもある。
ぼくの場合、この歌詞に出てくる『恋人』である。
実はこの『恋人』は恋人ではない。
歌詞の便宜上そう書いただけなのだ。
N美という女の子だった。
背が高く、美人系だった。
10月にN美と二人で喫茶店に行ったのが、ことの起こりだった。
ぼくは東京にいた頃、よく女の子と二人で喫茶店に行っていた。
しかし、それは恋愛感情とか下心とかいうものではなく、ただ単に友だちとして、もしくは相談に乗ってあげる先輩として行っていたに過ぎない。
相手もそのことはわかっていて、ぼくに対してそういう感情は示さなかった。
ところがこのN美は違った。
「いっしょに喫茶店」、即ち「大恋愛!」と思ってしまったのだ。
翌日からN美の態度は変わった。
突然、「しんた!」と呼び捨てである。
何でN美から呼び捨てにされなければならないのかわからなかったが、とりあえず気にしないでおいた。

日がたつにつれ、N美の態度は大きくなる一方だった。
どこかに連れて行けだの、送って帰れだの、わがままばかり言うようになった。
ぼくも甘かった。
最初は何度かN美のわがままを聞いてやったりしていた。
それが彼女の勘違いを助長していったのだろう。
03月15日(土)
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