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頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■頭を洗う その3
さて、シャンプーは断とうとは思ったものの、そこから何で頭を洗うかが問題になった。
たまたま読んだ『安心』だったか『爽快』だったかに、「天然塩で頭を洗うといい」というようなことが書いてあった。
天然塩に含まれているミネラルが、髪や地肌にいいということだった。
なるほどワカメや昆布といった海の植物は、そのミネラルの中で育っている。
俗にワカメや昆布を食べると髪にいいと言われるが、ミネラルをたっぷり含んでいるからいいのだろう、とぼくなりに解釈した。
実際にこの方法で頭を洗った人の報告も載っており、そこには「今まで白かったところに黒い髪が生えてきた」と書いてあった。
「よし、これだ!」と思ったぼくは、さっそくスーパーに行って『赤穂の天塩』を買ってきた。

塩を頭肌に擦り込むようにしてマッサージしていく。
その後、何分か放置してから洗い流す。
シャンプーのような爽快感はないが、何か髪が健康になっていくような感じがする。
翌日、髪を触ってみると、つるつるしている。
生まれてからそれまで、初めて味わった感触である。
「これはいい」と思ったぼくは、髪に悩みを持つ人に薦めて回った。
しかし、みな半信半疑である。
「あんたの白髪が治ったらやってみる」という声がほとんどだった。
「じゃあ、治してやる」とぼくは断言した。
ところが、この塩による洗髪は長続きしなかった。
ちょっとずつ塩をつまんで地肌に擦り込むため、頭全体をマッサージするのにはかなりの時間を要する。
また完全に洗い流さないと、塩が頭に残ってしまう。
生まれつき面倒くさがり屋のぼくには、これが苦痛になってきた。

そのうち、塩を少量のお湯で溶き、それを頭にかけて洗うようになった。
しかし、この方法では洗った気がしない。
塩はもうやめようと思ったが、今さらシャンプーには戻れない。
そういう時に、知り合いの整体の先生からいい話を聞いた。
この方は、ぼくより4つ年上なのだが、頭は黒々している。
ぼくが「先生、頭真っ黒ですねえ。何か秘訣があるんですか?」と聞くと、先生は「別に秘訣とかないけど。ああ、そういえば若い頃に知り合いの医者から『頭は石鹸で洗ったほうがいい』と教えられてね。それからずっと石鹸で頭を洗いよるだけやけどね」と言った。
「石鹸? 石鹸で頭を洗うと、髪がギシギシするでしょうが」
「最初はね。でも慣れてくると、それほどでもないよ。昔はシャンプーとかなかったけ、みんな石鹸で洗いよったやろ」
「そう言われれば、そうですね」

なるほど石鹸か。
そこでぼくは、石鹸に関する資料を求め本屋に走った。
しかし、石鹸の本などどこにもない。
「困ったなあ」と思っている時だった。
全くジャンルの違うところで、『自然流「せっけん」読本』というタイトルの本を見つけた。
それは、ぼくの家の近くに本社を構える『シャボン玉石けん』の社長が書いた本だった。
それを読むと、無添加石鹸の良さが綿々と綴られており、石鹸なんかみんな同じだという、ぼくの常識は完全に覆された。
そこには、シャンプーと髪の因果関係から正しい頭の洗い方まで、髪についても詳しく書かれていた。

「こうなったらシャボン玉石けんしかない」と思ったぼくは、シャボン玉石けんを買い、さっそく髪を洗った。
やはりギシギシする。
それが1週間ほど続いた後、ようやく石鹸に髪が慣れたのだろう、あまりギシギシしなくなった。
先の読本に「ドライヤーを使うな」と書いてあったので、それも実践した。
乾いた髪を触ってみると、塩でやった時と同じようなつるつる感だった。
ようやくぼくは落ち着くところに落ち着いたのである。

石鹸で頭を洗い始めてから、かなりの年月が過ぎた。
頭は真っ白になったものの、髪の状態は良好だ。
シャンプー時代の悩みの種だった枝毛もなくなり、真っ白な髪は輝いてさえいる。
つやのある髪などシャンプー時代には考えられなかった。
これも石鹸のおかげである。

今日は頭を洗ってから日記を書き始めた。
今、午前1時40分だから、かれこれ2時間が経つ。
ところが、まだ頭は乾いていない。

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02月12日(水)
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