ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■しつこい電話
2週間ほど前から、休みの日になると、決まってクレジット会社から電話がかかってくる。
別に「金を払え」と言ってくるわけではない。
交通傷害保険に入ってくれと言うのだ。

最初は女性からだった。
「こちら○○信販ですけど、しろげしんたさんのお宅ですか?」
「はい」
「しろげしんたさんでいらっしゃいますか?」
「ぼくですが」
「この間、ダイレクトメールでお知らせした交通傷害保険の件でお電話差し上げました。お時間を取らせてもらってよろしいでしょうか?」
「別にかまいませんよ」
彼女は、マニュアルどおり保険の説明を始め、最後に「契約はお電話でもかまいませんが」と言う。
その時ぼくは「考えさせて下さい」と言った。
「では、後日また電話させてもらいますので、ご検討下さいませ」と言って彼女は切った。

次もその女性からだった。
前回と同じ内容だった。
ぼくが「友人が保険の代理店をしているので、その手の保険はそちらから入るようにしているので」と言うと、彼女は「そうですか。しかしこちらのほうもいい保険ですので、ぜひご検討下さいませ」と言う。
ぼくは面倒になって、「はい、考えときます」と言って電話を切った。

次の休み、また電話が入った。
例の女性からだった。
「あのう、この間電話させてもらったのですが、ご検討していただけたでしょうか」
ぼくはすっかりそのことを忘れていた。
というより、もうかかってこないと思っていたのだ。
ずいぶん熱心である。
というより、しつこい。
「いいえ、まだ検討中です」
「ダイレクトメールにもあるとおり、月々1350円と保険料も安く、保証も2千万円まで出る大変いい保険ですから、ぜひご検討下さい。電話で契約を受け付けますから」
「あのですねえ。何回もその件で電話をもらってますが、ぼくはそのダイレクトメールとやらを見てないんです。そういうたぐいのものは見ないで捨てますから」
「そうなんですか」
「ぜひ検討してくれと言うなら、資料を送ってもらえませんか」
「資料ですか?」
「そう。電話で簡単に契約出来る保険なんか信用できんでしょ?」
「わかりました。では、こちらのほうから資料を送らせていただきますから、よろしくお願いします」
そう言って、彼女は電話を切った。

さて、それから3日後、11日のことだった。
午後9時頃に電話が入った。
「もしかしたら」という予感がして、ぼくは電話を取らなかった。
家の者が出た。
「しろげしんたさんのお宅でしょうか?」
「はい、そうですけど」
「しろげしんたさんいらっしゃいますか?」
(しんた、電話よ)
(誰?)
(何とか信販と言いよるけど)
(またかぁ)
「はい、替わりました」
「あ、しろげしんたさんでいらっしゃいますか?」
自信ありげな男性の声である。
ぼくは、こういう自信ありげな声を聞くとからかってみたくなる。
「『しろげしんたさんでいらっしゃいますか』って変ですねえ。あんたが『しろげしんた』と言ったから、ぼくが出たんでしょ? わざわざ確認する必要ないじゃないですか。ぼくが信じられないんですか」
「い、いえ、すみません。あ、あのう、前回DMをお送りした保険の件ですが、ご検討いただけましたでしょうか?」
「検討も何も、まだ、資料が送ってきてないですよ」
「え?」
「前に電話で『資料送ってくれ」と言ったでしょうが。連絡行ってないんですか?」
男は焦った。
「あ…。し、しばらくお待ち下さい」
しばらく待った。
「お待たせいたしました。すぐ資料のほうを送らせていただきますので」
「えーっ!? まだ送ってなかったんですか? せっかく待ってたのに」
「す、すみません」
男はしどろもどろになっていた。
あまりからかうのもかわいそうなので、「じゃあ、早く送って下さい」と言って、ぼくは電話を切った。

さて、明日は休みである。
きっとまた電話がかかってくるだろう。
今度は何と言おうか。
「しろげしんたさんですか?」
「そうとも言います」
とでも言っておこうか。
だんだん、楽しくなってきた。
02月13日(木)
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