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頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■頭を洗う その2
販売業の道に入ってからは、身だしなみというものをきつく言われるようになった。
他人から指摘されるのが嫌なので、自ら進んで身だしなみを整えるようにした。
その身だしなみの中でも特に気にかけたのが、「臭い」である。
中学の頃の記憶がよみがえる。
女子に言われるぐらいだから、かなり頭が臭かったのだろう。
そう思うと、2日に一度の洗髪では足りないと思うようになった。
そこから毎日の洗髪生活が始まった。
しかし、そのことが後に大きな問題に発展する。

毎日頭を洗うということは、実に爽快だった。
頭を洗った後につける、柑橘系のヘアトニックの香りが、風呂上がりの気分を快いものにした。
ある時、頭を5針縫う大怪我をしたことがある。
その時医者から「1週間ばかり頭を洗わないようにして下さい」と言われた。
秋とはいえ、残暑厳しい折、既に毎日頭を洗う習慣になっているぼくにとって、これは苦痛だった。
怪我をしたその日から頭が痒い。
まあ、その日は痛みも伴っていたから、何とか我慢が出来た。
しかし、翌日から地獄が待っていた。
かゆい、カユイ、痒いっ!!
触ってはいけないのはわかっていたが、つい手が頭に行く。
3日目、気が狂いそうになった。
4日目、軽くではあるが、頭を掻いた。
5日目、とうとう頭を洗う決意をする。
患部から離れた箇所に、少しずつシャンプーを振りかけ、濡れたタオルで、そこを拭いていく。
少しはかゆみは治まったものの、力一杯頭を掻けないことにいらだちを感じた。
6日目、またしても前日と同じことをした。
今度は患部により近いところを攻めた。
おかげで患部に貼ってあるガーゼが少し濡れてしまった。
7日目、ついに抜糸。
医者から「お待たせしました。今日から思いっきり頭を洗って下さい」と言われた。
その後で彼は「痒かったんでしょ?」と言い、ニヤッと笑った。
おそらく、ぼくが頭を洗ったことに気づいていたのだろう。
その日、ぼくは家に帰るなり風呂に直行し、医者の言葉通り、思いっきり頭を洗った。
中学の時、1ヶ月近く頭を洗わずに床屋に行って以来の快感だった。

それから何年かが経った。
世間では『朝シャン』という言葉が流行っていた。
その言葉につられて、ぼくは調子に乗って頭を洗い続けた。
夏場には夜に洗って、朝また洗うこともあった。
そうやって数年過ぎたある日のこと、前髪の一部に白い固まりがあるのに気がついた。
「何じゃ、これは!?」である。
20歳頃から白髪はあったのだが、それほど目立つものではなかった。
それがついに目立つ場所に進出してきたのだ。
白い固まりは、時間を追うごとに広がっていった。
それに併せたように、枝毛も増えていった。
髪も以前に比べ細くなっているように感じる。

「これは何とかしないと」と思い、髪に関する本を読むようになった。
ある時、「シャンプーは健康を害する」という内容の本に出会った。
そこには、「シャンプーで頭を洗った後、よく洗い落とさないでいると、毛穴からシャンプーが浸透し、ついには肝臓を害してしまう」と言うようなことが書かれていた。
また、「ハゲや白髪といった髪のトラブルも、シャンプーが原因になっていることが多い」とも書いてあった。
そういえば、ぼくは髪を洗った後、あまりすすぐことをしなかった。
「ということは、この白髪はシャンプーのせいだったのか。これはいかん!」
そう思ったぼくは、ついにシャンプー断ちを決意した。
02月11日(火)
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