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頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■頭を洗う その1
毎年11月から翌年の5月まで、頭を洗うのは2日に一度と決めている。
もちろん夏場は汗をかくので、毎日洗っている。
こういう習慣になるまでには、紆余曲折があった。
ぼくは中学時代、頭を洗うのが面倒で、ひどい時には1ヶ月近く洗わなかったこともある。
クラスの女子からは、「しんた君、いいかげんに頭洗い」と言われたこともある。
冬場、ストーブにかじりついていると、自分の臭いを感じたものである。
とはいえ、頭を洗うことは嫌いではなかった。
その証拠に、月一度の床屋が妙に嬉しかった。
他人に頭を洗ってもらうのは、実に気持ちいいものである。
もしかしたら、その快感をより深めるために、頭を洗わなかったのかもしれない。

しかし、高校に入ってからは、面倒だとは言っておれなくなった。
ぼくにも少しばかりのしゃれっ気が出てきたのだ。
女子が多い高校だったので、とにかく臭いを気にするようになった。
毎日体を洗うようになったし、頭も3日に一度は洗うことにした。
そして2年の時、毎日頭を洗いたくなるものに出会うことになる。
サンスターのトニックシャンプーである。
あのスースー感は衝撃だった。
「これを使うと、毎日快感を得られるわい」と思ったものだ。

そのサンスターにはトニックリンスというものもあった。
その注意書きに、『洗い流す必要はありません』と書かれていたのを鵜呑みにして、朝、頭にたっぷりリンスを振りかけて登校したことがある。
ところが、いつまでたっても頭は乾かない。
触るとリンスの原液がそのまま残り、ヌルヌルしている。
何よりも困ったのは、その臭いの強さだった。
バスに乗っていた後輩が、「先輩、今日は臭いがきついっすね」と言ってきた。
その言葉が気になって、1時間目の授業をさぼり、柔道部室の横にあるシャワー室で洗い流した。
その日は、一日頭が濡れていたような気がする。

その3日に一度の洗髪は、そのうち2日に一度に変わっていった。
バイト時間のおかげで銭湯にあまり行けなかった東京時代も、2日に一度の洗髪だけはやっていた。
夜中に下宿に戻ると、炊事場でゴシゴシとやっていた。
おそらくその音が隣の部屋に漏れていたのだろう、下宿のおばさんが「しんたさん、夜中に水を流すのはやめて下さい」と言ってきた。
「バイトで遅くなるので銭湯に行けんとです。このくらい目をつぶって下さい!」とぼくは言い、炊事場洗髪をやめなかった。
このおばさんは、それ以前にも「ギターの音はもう少し小さくならないの」とか、「東京ガスの人が『東京で一番汚い部屋を見せてもらいました』と言ってたよ。たまには掃除してね」とか言ってきたことがある。
炊事場洗髪の件で、おばさんとの折り合いはさらに悪化した。
ぼくがギターを持って、友人のアパートや下宿を泊まり歩くようになるのは、それからしばらくしてからのことである。
その友人たちは、大家から干渉されることはまったくないと言っていた。
おかげでぼくは、夜中に思いっきり頭を洗うことが出来たのだった。
02月10日(月)
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