ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■寒中タバコ
風邪を引いても止められないのがタバコである。
相変わらずぼくは外でタバコを吸っているが、最近そのことを『寒中タバコ』と呼んでいる。
別に寒い外で吸わなくても、暖かい暖房の効いた喫煙室で吸えばよさそうなものである。
しかし、心情的にぼくはそれを好まない。
寒波が襲ってきた時にも、ぼくは外でタバコを吸っていた。
雪が降りつけようとも、灰皿代わりに使っているバケツに氷が張ろうとも、ぼくは外でタバコを吸い続けた。

ところで、寒中タバコをやっていると、いろいろな生き物にお目にかかる。
いつもいるのは、犬、猫、すずめ、ハト、ヒヨドリ、カラスといったオーソドックスなものである。
しかし、たまに季節はずれの昆虫や、毛色の違った動物がやってくる。
12月だったか、バッタが飛んでいた。
思わずぼくは、携帯電話でカレンダーを見たものだった。
彼はきっと怠け者のキリギリスだったのだろう。

この間の寒波の時には、見たこともない鳥がやってきた。
小柄な鳥で、全体に茶色い羽毛で覆われているのだが、尾のところだけが赤みがかっていた。
おそらく近くの山から下りてきたのだろう。
家に帰って図鑑を調べてみたが、結局何という鳥かはわからなかった。
ぼくはその鳥を見て、「このクソ寒いのに、よくあれだけの羽毛で耐えれるなあ」と感心したものだった。

さて、今日の話である。
夕方、ぼくが例のごとく寒中タバコをやっていると、後ろの方から「パタパタ」という音がした。
何だろうと振り返ってみると、その音は黒い色とともに、ぼくの横を通り過ぎていった。
猫である。
昨日ぼくに鼻をつままれ迷惑そうな顔をした彼である。
彼は口に何かくわえている。
どうもすずめのようだ。
羽をバタバタさせている。
ぼくは小さい頃から猫が好きで、猫がいるといつも観察するのだが、魚をくわえている猫はしょっちゅう見る。
また、ネズミをくわえた猫も何度か見たことがある。
しかし、すずめをくわえている猫を見るのは初めてだ。
それだけ飛ぶものは、猫でも狩りが難しいということだろう。

猫は大慌てで草むらの中に入って行った。
よほど嬉しかったのだろう。
走っている様が、いかにも「やったぜ〜!」という感じだった。
おそらく、彼の生涯最高の獲物だったに違いない。

一方の雀は不運だった。
その猫は太り気味で、それほど俊敏とも思えない。
そんな奴に捕らえられたのだから、それこそ一生の不覚と言わざるをえない。
しかし、当のすずめは「一生の不覚」なんて考える暇もなかっただろう。
何せ、「あっ!」と思った時には、すでに命を落としていたのだから。
かわいそうではあるが、これも自然淘汰なのだろう。

その後、何度か寒中タバコをしたが、もうその猫にはお目にかからなかった。
普段は店の前に座り、優しい人間様に餌をねだっているのだが、今日はその必要がない。
すでに腹は満たされたから、きっと暖かいねぐらでも探しに行ったのだろう。
02月02日(日)
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