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龍神様のささやき
by 龍
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■出世
「出世して大物になりたい」、「社長に出世する」など、成功して社会的な地位が上がる事を「出世」と言います。また、体が大きくなり成長していく段階で、その名前を変えていく魚の事を「出世魚」とも言います。
この「出世」という言葉。元々は仏教の世界において、家から出てお寺に入って修行する出家の際、俗世間から出るという意味で出世間と言われておりました。
また、その他の意味として、お釈迦様がこの世に出られる事を示す言葉でもありました。
さて、「無量寿経」という経典の中に、次のような言葉がございます。
「世に出興し給う所以は、道経を光闡(こうせん)し皆を救い、恵むに真実の利を以てせんと欲してなり」
なんだか難しい言葉ですが、簡単に言うならば、「お釈迦様がこの世に出られた訳は、教えを明らかに開いて皆を救い、真実の利を与える為である」、という意味となります。
この「真実の利」とは、地位や名誉、財産などといった事ではなく、正しく清らかな言動を心がけ、感謝と反省を忘れないという理を知り、心豊かに過ごす事を意味しています。
お釈迦様自身においても、釈迦族という王族の王子様として生まれ、この世の権力や栄華を約束されていました。
しかし、そういった身分がありながら、いつかは自分も老い、病になり、死んでいく定めにある中で、自分は何の為に生まれ生きているのかを考えられた。地位や名誉、財産を得れば、それを失う事に悩み、若く健康な時期を過ごすからこそ、自分が老いて病になり、死ぬ事に怖さを覚える。
だからこそ、そういった中に本当の幸せが無いと感じ、真の幸福とは何なのかを求め、お城を出て、出家・出世間されました。
「出世」という言葉について。今現在、私たちが認識している意味とは大きく異なり、今回ご紹介した2つ以外に、他のいわれなどもございますが、改めて、お釈迦様がこの世に出られて、私達に教えを示して下さったように、私達自身においても、なぜこの世に生まれ出て、何の為に生きているのか・・・。
普段生活している中では、あまり考える事はないかもしれませんが、この便りを通して皆様に伝わるものがあり、何かを感じて頂けたなら幸いに思います。
01月18日(日)
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