(SleepWalking)



あしあと
 
砂に埋もれて消えてしまった
ちいさなつま先の色が
隠れてもまだ思い出されて眠れない
ひかりに漬けたら透けて輝くかしら
わたしのみどりいろのあしは
溶けるようにあおいその血も

囁くことはかんたんで
かんたんなほどに近すぎて
いつか失うことなんて
すこしも思い浮かべずにいた

ぜんぶぜんぶ忘れてしまうよ
このまま逢えずにいつまでも
記憶は抜け落ちていくばかりで
いろも、かたちも、手触りも
温度も、おとも、においさえ
ぜんぶぜんぶ忘れてしまって
なかったことにしてしまうなんて
くやしくてできない

月が浮かぶたびに語りかけては
ひとりごとに泣いてしまう
そんなおひめさまみたいなこと
呆れてしまって
またすこしだけ信じてみる
ゆめの続きが起き上がるのを

2008年09月12日(金)


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通り過ぎたように聞こえて 振り返って溜息
何もないところには ほんとうになにもないのだ
風さえ動かぬわたしの体
流れる意味は なんですか

差し伸べても触れられぬ 叫んでも響かない
ただ落ちる影に すべて消えた
土と戯れて最後 その身を隠すまで
泥濘に埋れて鳴くがいい
背中を暖めて産まれた 奇怪な鳥
腹子の羽根がなくなるまで

2008年07月31日(木)


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たいおん
 
気が付くのが遅かった、
と気が付くのが遅かった
思い出したとたんに蘇る
右手に残る感触
ほてった首筋に弱く
冬の風が吹いたこと
星を目指すには軽すぎる
午前1時の確認メール
全部思い出せるのに
その声だけ覚えていない
耳に掛かる息の温度も

2008年04月23日(水)


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冷たい手
 
眠ったままのあなたを撫でる
やわらかい髪がすきよ
あなたは気に入っていなかったけど
頭のさきから尻尾まで
足のさきから手首まで
知らないものなんてなかった
そんな気がしてた
気がしてただけ


見えない場所があることに
どうして気がつかなかったのか
こいはもうもく
よく言ったもので
背中に嘘を隠していたこと
知らなかったの
時には繋いだ指先にさえ
滲ませていたのに


冷えていく体にふわりとくちづけた
今日であなたが終わってしまえばいい
偽りはシーツの下に
隠してしまえばいい
知らない振りをして生きていくわ
ほかの死に場所があることに

2007年11月19日(月)


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白昼夢
 
そう願ったのは
他でもない私です
なのに


どうしてこうも我儘なのだろうか
忘れたいと思うあなたのことを
忘れたことに気付くなんて


奥底で眠る何かを
まだ期待している
桜は散るのを知りながら

2007年04月10日(火)


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はるのあしおと
 
隅田川の両岸に
ソメイヨシノが咲くでしょう
酔った頭であなたが零した
お花見の企画を思い出す

うちにおいでよ、なんて耳打ち
覚えているのはわたしだけ?
どうしてそうやってあなたは
何時も無責任なのかしら

はやくしないとほら
盛りを忘れてしまうの
忘れているなら今から
押し掛けたってやろうか

淡くざわつくひかりが
きらきらと揺れる
そこかしこに響く
花とわたしに春の足音

2007年04月01日(日)


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さよならをつげる
 
いつもそこにいた
あなた
わたしのあこがれる
その姿
ドアを開けてもそこには
もう影すら、ないのですね。


そういえばお祭りが終わったら
実家に帰るって言ってた気がする
そうか
また雪が激しく
降っているのでしょう?


あと7日しかありません
あなたがいなければ
声を交わさなければ
わたしがどうにかなってしまいそうで
こわい


けれどきっと
またその姿を見つけても
きっと話すことなど
出来ないと思うのです
春のかなしみが咲く陽だまりにて

2007年03月12日(月)


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