(SleepWalking)



焼き芋
 
手をつないでいた事を思い出す

べつに必要なかったのにね

私の右手は温かかったから

ふたり並んで川沿いの道

雪は降らぬがあたりは白い

湯気と呼気の湿った香り

いまもふたりで居たかった

2006年01月05日(木)


にほんブログ村 散文詩

 
 
 
 



かわいい
 
雨が突然降ってきた

私は傘を持っていない

飴はcos30°

投げつけられて肌に溶ける

小さなあなたに振り返る

右を向いて指差し確認

左は知ったこっちゃ無い

ちいさなあなたのおおきなせなか

思い出してはほくそ笑み

繋がっていた小指の糸で

ひとりでさみしく指切りを

2005年09月04日(日)


にほんブログ村 散文詩

 
 
 
 



夕立
 
今よりも更に世間知らずだった時のことを
雨に思い出す
冷たく揺れた髪は今でも
風にそよぐだろうか
世界にはわたししかいない
車のライトに照らされて
浮き彫りになったのはただ
傘も差さずにぽつりぽつりと
歩き続ける哀しいこども
その姿
きっと今夕立が来ても
わたしは許すことが出来ないから
蝉が焼け死んで落ちるほどの
強い日差しが欲しい
湿った世界ではおそらく
悲しみをぬぐえないから

2005年08月10日(水)


にほんブログ村 散文詩

 
 
 
 



うしろゆび
 
笑い声を背中で受け止めることが
実はどんなに気持ちいいかということを
知らないのを愚民という

愚かな虫は考えた
例え如何程に蔑まれようとも
この快感には変えられぬ
ささと動くその足に
いつか恐怖するのはお前らだ
笑い声が降りかかる
冷たい殻で身を守る
いつかこの身はこんなにも
硬い艶を持っていた
笑い声は怖くない
恐れているのは
ただ存在するだけの存在になること
笑われもしないことなのだから

2005年08月03日(水)


にほんブログ村 散文詩

 
 
 
 



せみ
 
あまりの暑さに耐えかねて

あのひとに会いに行くことすら

億劫になって

仕方が無いので暇つぶしに

髪を切ることにした

油蝉が鳴いている

重たい雲の合間に向けて

ぎりぎりの強さで走り抜けた

飛行機雲に向けて

風が吹かない昼下がり

夕立をまとうか

雨宿りを求めて

2005年08月02日(火)


にほんブログ村 散文詩

 
 
 
 



ぱらぱら
 
夕立になるって言ってたのに
少し地面がぬれただけよ
重たい雲が
空を塞いでいるだけ
花火大会が流れちゃえば
私も裏切り者じゃなくなるのに
繋いだ人差し指に
雨粒が降りかかる
身動きなんか出来ないのに
今あなたに会いたい

2005年07月30日(土)


にほんブログ村 散文詩

 
 
 
 



ターコイズ
 
気がついたら日焼けた足先

似合わないブルー

赤くなった肌には

映えないサンダル

手を伸ばしても届かない

昨日の視線は奇跡だ

何も言わずに見詰めて

溜息を吐くばかり

時間だけが過ぎている

この間隔は変わらないのに

2005年07月23日(土)


にほんブログ村 散文詩

 
 
 
 

back  next  chronological  latest  index

芳   Mail  My Favoite