デイドリーム ビリーバー
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「いつまで俺のこと苗字で呼ぶん?」 何の話の続きだったか、そう言われた。 「他人行儀すぎへん?」って。
「じゃあ、なんて呼ばれたい?」と聞いたら 「それは、宙ちゃんが決めてよ」と切り替えされた。 作戦失敗。
実は、私も考えていたことでした。
私自身、最近、彼の心を近くに感じるにつれ 苗字で呼ぶことに、違和感を感じるようになってきていて。
なのに、なぜ呼び方を変えないのかと言ったら それは私が、またもや、くだらないことにこだわっているからで。
彼女は、彼のことをなんて呼んでいたのだろうか、って。
呼び方の候補はいくつかあるけど 「じゃあ、○○!」って決めて (あ、彼女と一緒)なんて思われるのは、いやです。 (あ、彼女と違う)って思われるのも、いや。 だから、彼に決めてもらおうと思っていたのに。
「彼女は何て呼んでたの?」 って、きけないわけじゃないんです。きけます、それぐらい。 だけど、きいてしまったら 同じ呼び方でいくのか、違う呼び方でいくのか 決めなきゃいけないじゃないですか。私が。
そんなしんどいのはゴメンです。
そんな私の気持ちを、知ってか知らずか、 彼は、私の頭をぽんぽんとたたいて 「自然に変わるまで待つか。 楽しみやなぁ。なんて呼ぶんやろうなぁ」 「○○ヤロウとかじゃないの?」 「パパとかかな」 「なに?お金くれるの?」 って言ったら、彼は、あっけにとられていた。
「結婚して、子供ができるまで苗字のままかな、とか そういう含みやろ、いまのは。普通気付くやろ」 いや、普通は気付かないんじゃないかな。 つきあいだして2ヶ月やそこらでは。
「あ、そういうことね。あはは」と笑ってごまかしたら 「まったく、宙ちゃんはドライやねんから」と もう彼の口癖みたいになってることを、言われた。
「そんなことないよ」
ほんとに、そんなことないんだけど。 そう思っていたら、彼が私の顔をのぞきこんで 「うん、確かに最近、そんなことないよな。 よろしいよろしい。かわいいかわいい。」 って、嬉しそうに、また頭をぽんぽん叩く。
…なんか、最近、負けっぱなしの気がする。 何に負けてるんだろう。 わからないけど、ちょっとくやしい。
5日も前のことで恐縮ですが あいあいさんが 恐れ多くも「一緒に頑張りましょう」なんて書いてくださって
なんていいますかもう あああありがとうございます!頑張ります!
あいあいさんの日記は、いつもいつも、とにかくもう 「うらやましい」の一言で。
私も彼と一緒に住みたいです。 んで、すねてコタツ寝とかしたいです。 んで、そんな日がきたら絶対、誰がなんと言おうと絶対
お姫様だっこでふとんまで連れてってもらうんです! ねぼけたふりして、彼の首にしがみついてみちゃったり。
ふふ ふふふ…。
その日のために今からダイエットにいそしむ私。 ちなみに成果は未だあらわれず。というより増えてる。
って、まだ3日目だっつーの。 てゆーか、妄想しすぎだっつーの。
しかし、 付き合いだしてこの短期間で ヤキモチ妬きになってしまった私だけれど
彼と会っているときは その時だけ時間の流れ方が違うっていうか
仕事のいやなことも、前の彼女のことも 逼迫した社会情勢もすべて忘れて 顔の筋肉がゆるみまくってる気がします。
とにかくその場では 彼といる嬉しさの方が、気持ち的に勝っているので ヤキモチを妬かされることがあっても 「ふーん、あっそう」 って、すねたフリみたいな、生ぬるい怒りかたしかできないわけです。
なので、ヤキモチとか文句は 彼と別れて一人になって、いろいろ回想しているときに ふと思い出すというのが常。
回想と言えば、最近 ちょっと嬉しいことがありまして。 いや、たいしたことじゃないんだけど。 ていうか、他人にとっては、かなりどうでもいい話なんだけど。 そんなこと言ったら、この日記すべて、どうでもいい内容だけど。
その日、私と彼は、会う約束をしていたのに 私の方が急な用事で プライベート接待とでも言うか 上京してきた母と、その友達のお相手。
できれば、そんなもの蹴りとばして、彼と会いたかったのだけど 彼のことはまだ母に話してない上 いずれ猛反対にあうのは必至なので(これにもいろいろ事情があって) 今はいい娘を演じて、少しでも点を稼いでおこうかな、とか そういう気持ちもあるわけで。
彼は「さみしいけどしょうがないな。親孝行しといで」って 言っていたんだけど
私達がいるとある会場まで、ふらふらと来てしまった。
「ヒマやし、散歩がてら近くまで来てもた(笑)」 というメールがきて、 それから、短いメールを、母に隠れて2度ほどやりとりしたけど
「じゃあ、そろそろ帰るわ。今日寒いし、あったかくして風邪ひかんようにな」 そのメールを見たとたん、恋にとち狂った私は 思わず立ち上がって、母にトイレに言ってくると告げ 猛ダッシュで、階段をかけおりた。
再入場禁止の会場だったけど、ひどい形相だったのかも。 受け付けの方が「どうぞ」って言ってくれて 会場を飛び出したら、彼が、目をまん丸にして立っていた。
その時の私の気分ったら さながら、退屈な舞踏会を走って抜け出して 庭の茂みで待つ恋人に会いに来た、ジュリエットのような
あの話にそんなシーンはなかったかもしれないけど ていうか、またお決まりの妄想なんだけど
だけど、恋にとち狂った私達は 駆け寄って 柱の影で ぶつかるように抱きしめあって キスして
もちろんすぐ会場に戻ったんだけど。
こうして改めて書くと、恥ずかしい話。 だけどあの瞬間は なにもかにもがぶっとんで ただ 会いたくて会いたくて会いたくてしょうがなかった。
彼は、休日だからって、会場にきてうろうろしている自分を 情けない、女々しいやつだなーと思っていたらしく
だけど、それに輪をかけたように情けない、私の行動が 嬉しかったらしく
翌日、少しの時間だけ会ったカフェで 顔ゆるみまくりでした。
…でも、そのカフェで 「紅茶事件」は勃発したわけで。
ああ、今思い出しても くそいまいましい、腹の立つ
彼は、なんと、その席で 私が頼んだ紅茶に、ごく当たり前のように自然に
砂糖をいれようとしたんです!!!
きーーーーーーーーっ!
私は紅茶に、砂糖は入れへんのじゃボケーーー!
お前いっつも誰の紅茶に砂糖入れてたんじゃボケェーーー!
達観したかのようにオトナみたいなこと書いてみたけど
前言撤回。 やっぱりむかつきます。
電話で旅行について話していたのだけど だめだもう。
むかつく。
前に見せてもらった写真の あの彼の、嬉しそうな満面の笑みが
どうせね、彼はね、私と出会う前だって とってもとっても幸せだったのよ。彼女と。
何がむかつくって
二人がよく行っていた店がむかつく。 5年以上通ってるから、店の人にも顔、覚えられてんの。 だから私とは行けないの。大好きなお店だけど、行かないの。 それがね1軒や2軒じゃないわけよ。きっと。
私と手をつないで歩く道も 私じゃない人と、イチャイチャにこにこしながら 歩いたことがあるわけよ。
もうすぐバレンタインだけど バレンタインなんて、もう何度その人と過ごしたことか。 手作りだって何度ももらって、おいしいメーカーもよく知っていて 私なんて、彼がどんなチョコ好きなのかも知らないし。 彼はどうせ毎年、あの笑顔で受け取ってたんだ。 そんで、ちゅーとかするわけよ。 さいあく。
けんかもして 仲直りもして
いったん別れて またつきあうことにした時 どんな話をしたの。
初詣ではいつもどこに行っていたの。 そこで何をお願いしたの。 二人ずっと仲良くやっていけますようにとか、思ったよね。きっと。
思い出全部むかつく。 あーもう、むかつくむかつくむかつく!
長くつきあっていたんだから 真剣につきあっていたんだから 気持ち全部あげていて当然なんだけど
わかってるんだけど
どこ行ってもどこ歩いても何食べても そういうことばかり、ぐるぐるぐるぐる。
もう何なんだコレ。 疲れる。 もーいや。
同じところ行くのもいや。 違うところ行くのもいや。
似てるって思われるのもいや。 違うなって思われるのもいや。
彼は、前の彼女のことを決して悪くは言わない。 ちょっとぐらいあったっていいじゃん。 こういうところがいやだったとか。
「嫌いで別れたんじゃない」どころか 「まだ好きなのに別れた」みたいじゃない。
わかってるんだけどさ。
悪口みたいなこと言われたら、よけいにいやだって。 彼が本当に私のこと好きだってことも。
わかってるの。 贅沢なの。贅沢。 強欲なの。
わかってるんだけど、電話切った後、むしゃくしゃして 「なんで全部私のものになってくれないの!」 って そばにあったクッション、壁に向かって思いきり投げつけたら ばんって 壁に貼ってあった、大好きな写真のポスターに当たって それが、額にいれないで、ピンで留めていただけだったもんだから ばりばりばりって ウソでしょっていうぐらい、おおげさな音たてて まっぷたつに破れてしまいました。
コメディーみたいな見事な破れっぷりで その瞬間、誰かに見て欲しいぐらいだった。 誰に見せるわけにもいかないんだけどさ。 彼に報告してもしかたないし。
だから、しぶしぶ、自分で片付けたけどさ。 いいんだ。 ここに書いたら、何人かの人は見てくれるもん。
ほんとにすごかったのよ。ばりばりって。
…まあ、どうでもいいかもしれないけど。
一時期よりは、心に余裕が出てきた証拠なのかも。 だから、こんなくだらないヤキモチ、妬いているのかも。
だって、少し前までは 彼が彼女のこと思い出して苦しむのが、気になったり 思い出して欲しくなくて、言えなかったり だったんだけど なんかもう、今は、それどころじゃないのです。 自分の気持ち最優先で。
むかつくむかつくと言っていたら
「あーあ。俺は今、こんなに宙ちゃんが好きやのになぁ。 俺、宙ちゃんのこと、大切にしてない?」 と言われてしまって
大切にしてもらってるよ。 もったいないぐらいだよ。 こんな優しい人知らないよ。
彼のこころ全部で、 あたたかく私を見てくれているって、ちゃんと感じる。
はっきり言って、私がガキなだけで
しっかりしてるって、まわりからずっと言われ続けてきたけど そんな鎧や、かっこいい言葉の武器は 彼の前ではふにゃふにゃに溶けてしまって
彼の前の私は ただのくっつきたがりの ただの甘えたがりの すねまくりの、つまらない子で
なんでこんなかっこ悪い私を 彼は、にこにこして見ていられるんだろうか。
彼の好きなタイプって 松嶋なな子さんの様な、きれいなお姉さん系で 今の私より、以前の私のほうが、まだ、タイプに近かったに違いないのに (「きれいな」はさておき…) 一時的な恋に、うかれているだけじゃないんだろうか。 すぐ冷めちゃうんじゃないだろうか。
そう言ったら
「うかれてんのは、宙ちゃんの方かもよ」 「は?」 「宙ちゃん、今までいろいろ経験してきてるみたいやけど こういう、ちゃんとした両思いって初めてやろ」
くぅぅ…。 くやしい。
どうせ私は、恋愛とも言えないような 貧相な経験しかありませんよ。
彼は、初めてじゃないから さぞかし余裕がオアリなんでしょうよ。
きーーーーーーっ くやしい。
「ふーん。初めての両思いの時は、うかれたんだ」
「おっ」 彼は、嬉しそうにニヤニヤ笑う。
「ヤキモチやいてきた、やいてきた。 宙ちゃん、今めっちゃむかついてんねんでー」
なんていうかね。 最近、わざとこういうこと言ってませんか。 楽しんでませんか。
むかつくんですけど。
でも 大好きなんですけど。
どうしたらいいんですか。
「休み合わせて、どこか旅行行く?」と彼が言うので 「わーいやった!どこ行く?どこ行く?」と、うかれたら 「寒いしやっぱり温泉かな。箱根とか」
おい。それはつまり。
「それは、前の彼女と去年の今ごろ、楽しーく過ごしたところよね。 そこにまた行きたい、と。そーゆーことね」 と言ったら 「うわぁ!」 びっくりしたように、彼が叫んだ。 「ごめん!そういう意味じゃなかってん! 気にする?そら、気にするよなぁ。ほら、俺あんまり温泉知らんし。 てゆーか、よく覚えてるなぁ」
クリスマスに写真見せてもらったところだもん。 目に焼きついてるっつうの。
私がうつむいたままなので、彼は困りきってる。 「ほんまごめんな。温泉イヤやったら、他のところにしよ?」 「…」 「宙ちゃーん」
もー、困れ、困れ。いつまでも優しい私だと思うなよ。
「なぁ、宙ちゃーん。こっち見て…」
おかしー。本気で困ってやがんの。 すこし間をおいて、ちらっと目だけあげて 「ねちっこい女と呼んでくれ」ってニヤッて笑ったら、 彼は一瞬ポカンとして、それから大笑いしてた。
もうね。笑うことにしました。考えてもしかたないのかもって思って。
「ほんまにどこ行こうなぁ。行きたいところある?」 「いいよ。温泉で」 「いや。こうなったら、二人で新しい場所を…」 「なに?それは、彼女との思い出の場所には 私は連れて行けないと、そーゆーことですか」 「そーくるかな!」
これはさすがにしつこすぎたかも。 ちょっと反省。さじ加減はむずかしい。
「だってどうせ、今までだって、 どこ行っても、彼女と来たことある場所ばかりだったでしょ」 「うーん。あ、ミレナリオ、行ったことないで?」 「ルミナリエ(神戸)はあるくせに」 「…」
行ったことあるのか(今知った)。かまかけただけだったのに。 くそー。神戸って言ったら、泊りじゃないか。 しかも彼の生まれ育った町を、二人で。
「ディズニーシーも、どうせ行ったんでしょ」 「え?行ってないよ?」 「え!」
だって、オープンしてから私達が付き合うまで 2〜3ヶ月の期間があったから、絶対行ったと思っていた。 彼、テーマパーク好きみたいだし。
「なんや?気にしてたんか?じゃ今度二人で行こうな。初ディズニーシーな」
うれしすぎ。 「初めての場所」ってほとんど残ってないと思っていたし。
彼は、にやにや笑っている。 「ちなみにUSJも行ってないで〜?」 「ええー!」
USJなんて、期待全然してなくて 言い出すのもいやなぐらいだったのに。
「でも、宙ちゃんはUSJ行ったんちゃうん?仕事で」 確かに以前、ツアーでUSJに行く機会があったけど、 なにしろ私はその日、39度の熱があり。 さすがに限界がきて、お客さんを中に案内してすぐ 病院に点滴をうちにいっていました。 本当はだめなんだけど、万が一の時は ドライバーさんとガイドさんがフォローするっていってくれたし (優しい人達でよかった)。
まぁ、結局、体調管理できなかった私が悪かったってこと。 この事件以来、体調管理能力だけは上がったと思う。
あーあ。でも一度やってみたいなぁ。 風邪ひいて寝込んでいたら彼が、桃缶とかプリンもって、突然家に来るの。 で、下手ながらもおかゆとか作ってくれちゃったりして ふーふーとかもしてくれて
「えー恥ずかしいよー」 「ええやん、病人はおとなしく言うことききなさい」 とか何とか言われて、あーんとかされてさ。 キスされそうになって 「だめだよーうつるよー」 「うつってもいいよ」とかさ。
……。
…いいじゃん別に。妄想ぐらい。
転換期みたいな時は、今までいくつかあったけど 一番大きかったのは、やっぱり 大切な人が、自らの命を断ち切った時。
その時、私は、ショックを受けると同時に 「やっぱり」って思った自分に、愕然とした。
私は、その人が死ぬってこと、なんとなくだけど知ってた。
知っていたのに、何もしなかった。 自分のことだけで精一杯だった。
彼の親に責められて、 後で 「混乱していた、ごめんなさい」って謝られたけど、 責任の一端は、確かに私にもあったと思った。
あの人は、自分よりずっと強い人だろうから 大丈夫だって思っていた。
強い人だって弱る。 そんな簡単なことが、わかってなかった。
「強い人」「弱い人」「いい人」「悪い人」 人間って、そんなに簡単に分類できない。
強い人でも弱気になるなら。
高校生だった私は思った。
弱くてもいいから、強気で行こうって。
あの日、長かった子供時代が終わったような気がした。 今振り返っても、あの日が、子供時代の終わりだったような気がする。
あの日から、いろんなことに挑戦した。
決して打たれ強いわけではないけれど 打たれたら、とことん考えてみる。
「なんであんなことを私に言うんだろう」 じゃなくて 「ああ言われて、なんで私は傷ついてるんだろう」
それはきっと、自分を知る契機になる。 そう考えたら、傷つくのがこわくなくなった。 あの人の最期を思ったら、こわいものなんてなにもなかった。
いや、こわいけど 少なくとも、その傷を 真正面から受け止めようと、思うようになった。
傷つくことが、ある意味、快楽に近いような時もあった。 裁きを受けているようで。 普通の幸せなんて、そんなに欲しいとは思わなかった。 それよりも私は強くなって。もっともっと傷ついて、強くなって もっと知りたかった。 生きていることの意味とか、そういうことを。
だけど、 このところの私は、恋というものをしたせいで 心がいつになく不安定になっていた。
感じることすべてを、心の全部でつかもうと思ったら もうそれだけで 持っている力全部つかっても足りない。
いつだったか、何かに 「人に恋するというのは その人の心に、自分の居場所を見出すということで、 人を愛するというのは 自分の心に、その人の居場所を作ること」
と書いてあって それを読んだときは ふーんそういうものかなぁ、ぐらいにしか思わなかったんだけど。
今まで私が、怖いもの知らずで、強気に来られたのは 大切なものが、なかったからなのかもしれない。 私の心が、私だけのものだったからなのかもしれない。
彼は厳しい。 優しいふりして、すごく厳しい。 私が心を明け渡してないこと、気付いてる。見抜いてる。 そういうのやめろって、それとなく言われる。
一人の異性とちゃんと向き合って 心を明け渡した経験のある人は、これだからやっかい。
私はもしかしたら 心の中に、彼の居場所を作ろうとしていて
その覚悟が、全然足りてなかった。
心の中に誰かの居場所をつくったりしたら そこに彼がいないときは その穴にびゅうびゅう冷たい風が吹いたりもする。
いつかくるそんな日を、想像するだけで 心が引きちぎれそう。
だけど、私は今日、もう一段階強くなろう。
もしもそういう時がいつかくるなら 私は、布団を頭からかぶって、わんわん泣いてやる。 バカみたいに何日でも、泣いて泣いて泣きまくってやる。
復讐とか、あてつけとか そういうことはできるだけ考えずに、 ただ悲しさだけを胸に わんわん泣くんだ。
彼に出会えたこの奇跡が また私を変えるなら 私はそういういい女になりたい。
年末の話だけど 同居人(女)のサヤに、素敵なプレゼントをもらった。
カウントダウンの話になって 「彼と、どこに行こうかと話してるんだけど…」 って言ったら 「うちでくつろげばいいじゃん。私いないし」って。
私とサヤには、同居するにあたっての約束事が結構ある。
その中の最重要事項に 「この家においては、二人の(つまり私とサヤとの)ことを一番に考える」 ってのがあって
端的に言うと 「他人はつれこまない」ってことだったりもするんだけど。 特に「男」。
お互い家では、くつろぎたいわけで。 平穏な毎日ばかりではないから 辛い思いで帰ってくる日もある。 他人と暮らすってだけでも、どこかで気をつかうものなのに 更に他人に来られたら、たまらない日もあるだろうってことで
一緒に暮らす相手のことを大事にできないなら 一人暮らしにもどればいいだけの話だからって 同居を決めた日に、二人で話し合った。
「一度は来てほしいんじゃないの?」 「だって、サヤだってそういうことしてないのに…」 「私は、一回家に入れたことあるし」
でもあれは、サヤ達が付き合い始めるずっと前に 何人かでホームパーティーもどきをしたときの話で 私だってその場にいた。二人きりじゃなかった。
「お互い、生活って見せあいたいものじゃない?」
たしかに、この間、彼の部屋をはじめて見た時、 生活している部屋を見せてくれるのって 心を開いてくれるみたいだなあって、嬉しかった。
「次は宙ちゃんの家行きたいな」って言われて 「それはちょっと難しいかも」 って、この間話したところで。
「何も、何度も来ていいって言ってるわけじゃないのよ。 とりあえず、一回は異例ってことで。 まあ、ちょっと遅いけどクリスマスプレゼント?」
あーもうサヤってばほんとにイイ女だよー 私が男だったら即効プロポーズだよー
って抱きついたら、キモイからやめろって言われた。 ああ、なんてカッコいいんだ、クールビューティー・サヤ。
しかも一言付け加えられた。
「どうせ数時間のことなんでしょ」 「うう…」 「だって宙、正月に家にいたためしないもんね」
私も彼も、仕事柄、盆暮れ正月に働く人です。 大晦日の夜ゆっくりすごして 正月の朝をふたりで迎えるなんて、どだい無理な話。
でも今年は私、大晦日は休みだもん!…元旦からは仕事だけど。 ちなみに彼は元旦が休み。大晦日は仕事。
でも、いいんだ。少しの間でも一緒に過ごせるなら。
ほんとは、過ごせなくたって、きっといいんだ。 大事なことは、きっともっと別のところにあって。
二十一世紀の幕開けを、彼は別の人と祝い、 私はもう決して 世紀の幕開けを一緒に過ごすことは出来ないけど
二十一世紀最初の年越しなら、一緒に過ごすことが出来る。
そしてもしかしたら、これから何十年も続く未来を 共有できるかもしれない。
私は 彼が愛した最初の人ではないけれど
彼女を、ほんとうに好きだったと そう言う彼の言葉が本当なら
そして私を好きだという、 彼の気持ちが本当なら
彼女と同じように愛されるのもいいのかもと 最近思い始めている。
自虐的な気持ちじゃなくて。
彼女がほんとうに愛されていたのなら なにも、 「違うように」にこだわらなくてもいいのかもって。
だってこの世の中には、六十億もの人間がいて。 その二人目になれるのなら、それだけでもう、結構すごいこと。
最近まで私は 私にとっての「たったひとりの人」は 実はもうこの世にはいないのかも、とまで考えていた。
今は、あたたかい腕がすぐそこにあって その腕にふれることができる。 言葉を交わして 笑いあって キスをして 抱きしめあって
もちろん、こんな心の整理ぐらいで 複雑な気持ちは消えやしないけど
嫉妬を かわいいヤキモチぐらいに変えたいなと。
私は、何だかんだいって やっぱり彼女のこと考えるのが怖くて
一人で考え出すと、どうしようもなくなってしまうので こうやって日記に向かっている。
書きながらだと 少しは建設的に物事を考えられたりもするので
何度かやめようかと思ったこの日記も 今ではいわば私のセラピーにちかい存在になっていたり。
それでもやっぱり こわいものはこわくて
彼に、完全に心を開けないでいた。 開いて自分が傷つくのが怖かった。
年越しを、私の部屋で二人きりで祝って 彼は 「心が安らぐってこういうことをいうんかなぁ」って言って。
私は テレビを見ている彼の肩に、はじめて頭をもたれさせてみた。
年越しのその瞬間には どちらからともなくキスをして 指輪を交換して
私は、それから 「くっつき虫〜!」とかなんとか言って ずっと彼にくっつきっぱなしでした。
はたからみたら、単なるバカップルだけど 私にとっては、この日が新しい一歩です。 きっと。
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