ジョージ・エルスの日記...ジョージ・エルス

 

 

アイル - 2002年07月29日(月)

この国は日本と同様水資源が豊富だ。

亜熱帯の気候であるゆえ 水(現地語で アイル
という)に困ることはない。近年の世界的異常気象
の影響で水不足に陥った地域も一部あったが 3日
ほど取水制限があっただけで すぐに元に戻った。

隣のシンガポールに水を輸出したりもしている。輸
出価格や供給量を調整しながら隣国を牽制している。
この国にとって、水は強力な武器となり得るのだ。

しかし水の質は決してよいものとは言い難い。水道
水はまず飲めない。各家庭には必ず浄水器が据付け
られている。

飲料としての水はもっぱらミネラルウォーター。

日本では健康志向的な意味合いが強いが この国では
生活を営む上での最重要事項だ。

需要も大きいので価格も低く抑えられている。
レストランでなら500ml入り ペットボトルで
33円ほど。安いものなら 大手スーパーで1.5
リッター入りを同価格で買うことができる。



帰宅して手を洗おうと蛇口をひねった。水が一滴も
でない。断水だ。

この国は水道設備管理が日本ほど行き届いていないの
でこういうことは年に1〜2度はある。

家族は日本に一時帰国してる。もちろん帰宅してはじ
めてこの事態を知った。ついてない。

下の管理室に問い合わせると今晩10時には水道工事
屋がくるから何も心配しなくていい、と言う。

こういう場合 この国の人は半日ぐらい平気でサバを
よむ。おそらく水が出るのは朝だろう。

仕方なくストックしてたペットボトルのミネラルウォ
ーターを、手を洗うのと歯をみがくのに使った。トイ
レも1回分の水はタンクにたまっており なんとかなり
そうだ。

就寝時間の12時になっても もちろん水はでてこない。

そして 朝になっても水はでない。髪だけは洗いたかっ
たのでもう1本の1.5リッター入りペットボトルを
あけた。

ハリウッド女優・二コール・キッドマンはフランス産
ミネラルウォーターのエビアンで髪を洗ってるらしい。

そんな話を思い出すと 今朝は確かについてないが、
少し贅沢をしているようで いくらか愉快な気分では
あった。





...

TAG - 2002年07月26日(金)

この国の高速道路料金は日本と比べて非常に安い。

一区間およそ33円から55円。長距離になれば
安さの恩恵をさらに受けることが出来る。

首都クアラルンプールから第二の都市ペナン間 
距離にして約350km。約1300円。
日本だと東京〜名古屋がほぼ同距離。

だからといってアメリカのように料金ダダで路面
が悪いといったことはない。日本の高速道路以上
に綺麗な路面だ。


料金所では 現金を料金所で支払うシステム以外に
TAG(タッチ・アンド・ゴー)という料金徴収
システムが用いられている。

料金所に入り適切な位置にまず車を止める。窓をあけ
ほぼ頭の位置にあるタッチ板に クレジットカードによ
く似た TAGカードを触れさせる。

「ピピッ」という音が鳴るのと同時に それまで車の進行
ををさえぎっていたバーが踏み切りのように開く。
人による料金徴収に比べ格段にスムーズだ。

このカードは補充式で カラになれば料金所横のカード
販売所で補充すればいい。1回2000円前後補充し
ておけば通勤で使用しても1ヶ月ぐらいはもつ。

カードにどれだけ残があるかも「ピピッ」となった時に
表示が出ているので一目瞭然。非常に便利だ。




いつものようにTAG専用レーンに入って停車した。

しまった、カード残 ゼロでバーが開かない。

バックミラーで後ろを見た。他の車は後ろについてない。

ギアをバックに入れ アクセルを踏む。ギアを戻し
車が連なる 隣の現金レーンへの進入を試みる。

手をあげて「スイマセン」と礼をしながら車をゆっくり
進める。黒い肌のインド人夫婦が 愛想よく前を開けてく
れた。車の列に入り込む。


日本にいたらこんなことは決してしない。バーが開かれ
るまで料金所従業員を待っているはずだ。


駐在して1年。心やさしい人がたくさんいるこの国を
もっと好きになりそうだ。








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マカン - 2002年07月24日(水)

レストランに入ると まず店員に「マカン?」と
声をかけられる。マカンとは現地語で「食べる」
の意味。「お食事ですか?」ときいてるのだ。

通常この国の人達は 中華料理や日本料理の時は
箸を使うが マレー料理やインド料理の場合は
スプーンとフォークを使う。

右手にスプーン、左手にフォーク がこの国流だ。

僕は幼い頃日本で育ったのでいまだに西欧式の
フォーク&ナイフは使いづらい。快適には程遠い。

対して スプーン&フォークは非常に扱いやすい。

スプーンだけでは掬(すく)えないものを 左手に
持ったフォークでスプーンの上にのせてやる。

スプーンと同じ持ち方をすれば左手でのフォークの
扱いも簡単だ。音をたてずにご飯粒ひとつ残らずき
れいに食べることが出来る。

使いやすさを追求した非常に合理的な方法だ。


しかしもっとすごい光景に出くわすことがある。

素手で食べてるのだ。

邪道でもなんでもない。この国の正式な食べ方だ。


この国のレストランにはトイレとは別に手洗い場が
ちゃんとある。食べる前に手を念入りに洗う。食後
もここできれいに洗えばそれでいい。

僕も最初の頃このスタイルに挑戦したがこれがなか
なか難しい。

親指と人差指だけ(時々中指も)使うのならピーナッツ
を食べる要領で簡単だ。

しかしライスをつまむ となるとうまくいかない。少量
しか口にもっていく事ができず イライラしてしまう。

指全部を使ってつままなければいけないのだ。これが
難しい。こっちの人は皆 器用に口に持っていく。

道具を使わない 究極の合理性だ。



結婚式に呼ばれた。マレー式食事会。頼めばスプーン
を持ってきてくれたんだろうけど 素手で挑戦してみた。

あいかわらず 食べ物をうまく口にまでもっていけない。

前に座った少年が 僕が格闘している様子を見てニタニタ
笑ってる。

けっこう年配の日本人で 箸の使い方が不器用な人をみると
思わず笑みがこぼれることがある。年配にもかかわらず
子供みたいじゃないか と。

この少年もそんな印象で僕を見てたんだろう。


この国では 僕もまだまだ 一人前ではないという事だ。

















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オラン・チナ - 2002年07月18日(木)

この国には先住民であるマレー人(60%)
の他に中国人(30%)およびインド人
(10%)の3民族が暮らしている。

いわゆる多民族国家だ。

政府は マレー人優遇政策をとっている。
家の購入、大学入学試験などマレー人が優遇
されている。先住民族の特権ということだ。

この政策をとらざるを得ない背景として 商才
に長け 勤勉な中国人=オラン・チナへの牽制
が伺える。

現地語で オランは 人、チナ は中国の意味だ。

この国の首相はマレー人なのだが 「(この国の)
中国人をみならえ!」と言って 勤勉さが足りな
いといわれるマレー人を 叱咤激励する。

特に経済活動において彼らの活躍は肌で感じる。

僕の会社の得意先やサプライヤーをみる限り、
営業職はほとんど全てが中国人。社長職も中国人
がほとんどだ。

理路整然としながらも強引。早口でまくしたてる。
商売にむいた民族なのだろう。


3歳になる息子とふたりであるレストランで中華
料理を食べていた。しかしどうも落ち着かない。

後ろの席の中国人が 顧客相手なのか熱弁をふるっ
てる。他の席からすれば明らかに騒がしい。
しかし同席の他の人たちは熱心に聴き入っている。

息子は耐え切れず「うーさーい!」と騒ぎだした。

日本語だったからよかったものの冷や汗ものだ。

たった3歳の息子をも惑わせるパワー。


今 日本では中国脅威論が盛んだが こんなにアグレッ
シブな人達にまくしたてられたら 確かに ひとたまり
もないかもしれない。









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ペトロ・ステーション - 2002年07月15日(月)

半年前の国家予算発表。首相からの発表があらゆ
るTVやラジオで生中継される。

所得税減税など生活に密着した内容も多く含まれ
従業員達も勤務中にもかかわらず ラジオをつけ
首相から直接発せられるメッセージに聴きいった。

その中で興味深かったのがガソリン価格につい
ての発表。

この国は どの会社のペトロ・ステーション(ガソ
リンスタンド)で給油しても同じ価格。会社間の
価格差がないのが特徴だ。

発表ではガソリン価格を7%程 値上げする と
いう。しかも政府発表は今日だというのに明日か
ら即 実施 というのだ。

驚いた。日本ではまず考えられない。

しかしローカル従業員は慣れたものだ。値上げに
はもちろん不満だが 実施前日に発表される事に
ついては特に驚いていない。これがこの国やり方
だというのだ。

今日中に給油しようとペトロ・ステーションを訪
れたが 長蛇の車の列。翌日遠出をしたのでその
日に再度給油し レシートを確認したが ちゃんと
値上がってる。

国民の対応も早いのだ。



今朝 あるレストランにディナーの予約をしようと
電話をかけた。電話番号が代わったというアナウ
ンスが流れる。

よく聴くと店の移転などで電話番号が代わったの
ではなく それまでの7桁番号が8桁になるという。
その周辺地区の電話番号が代わったということらし
い。

事前に新聞発表などあったのだろうか。たとえあっ
たとしても実施前日の新聞でだろう。

別に実害はない。8桁の番号をかけなおせばそれで
いい。


どこまでも おおらかな国なのである。





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バス・キラン - 2002年07月11日(木)

朝7時。工業団地周辺は自動車で出勤ラッシュに
なる。

いつものように 僕の車の横をぼろぼろの大きな
青いバスが大きな音をたて猛スピードで追い越し
ていく。 同じ色のバスが何台もだ。

バス・キランと呼ばれる工場・従業員 通勤用の専
用バスだ。

工場現場作業員は車を持たない貧しい人が多い。
工場ごとにバス会社と契約しており 彼ら彼女らを
それぞれの地域でピックアップして工場との間を
往復する。この周辺の工場は皆そうしている。

国の政策により、バス・キランは必ず 青 で塗装さ
れていなければならない。

側面には "バス・キラン" と黒文字で書かれてある。
"キラン" とは現地語で "工場" の意味だ。

新車でない限り ほとんどすべてのバスは古い型式
のもので、ぼろぼろで、ほこりだらけで、運転が荒
い。 

その見た目とスピードのせいか、いつ見てもバスジ
ャックにあって暴走しているようかの様にみえる。


僕の勤める工場にも ぼろぼろでほこりだらけの
バス・キランが入ってきた。

5時30分夕刻。終了のサイレンとともに従業員達が
壊れて開け放しになってるバスのドアから乗り込
む。仕事から解放されほっとしてるのか皆 楽しそ
うだ。

そんな様子を2階からみてた僕に 皆気づいたよう
だ。大きく手を振ってくれる。

管理部門の責任者である僕にとって従業員との貴重
な触れ合いの時だ。

バスが動き出した。皆、再び 手を振ってくれる。


素朴で愛想のいい人達。


僕もバスが見えなくなるまで手を振り続けた。











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スリムダ - 2002年07月09日(火)

まさに”東南アジア”というべき町が勤務地の
近くにある。

町の名前はスリムダ。この土地に昔から住んで
いるマレー人のほか、中国人、インド人達がそ
れぞれのスタイルで店を構える。

月に一度、電気や電話料金の支払いをするのに
この町の銀行を訪れる。

車道を覆うように枝が足れ下がってる背の高い木々。
灼熱の太陽によってひびが入ったアスファルト。
談笑しながらブランチをとる茶色い肌のマレー人。
店先で客に説明をまくしたててる早口の中国人。
CDショップから流れてくるボリュームいっぱい
のインド音楽。

昨日はたまたまリアカー付きの自転車に乗ったベ
トナム人らしき人もいた。いろんな人種の人達が
混在する。雑踏というよりそれぞれが騒然として
いる。異国情緒たっぷりだ。

この町にあるレストランのインドカレーが最高だ。
確かに辛いが後味がいい。使う材料が違うのか
胃がもたれない。チキン、野菜、ミネラルウォー
ターをつけて約160円。美味いうえに安い。

暑い中での辛い料理。入り口に扉がないので店内
は暑い。汗が吹き出る。店内の天井扇の風だけが頼
りだ。


会社へ戻らなければならない。車の中はサウナ状
態。短時間の駐車でも灼熱の太陽は容赦しない。

交差点での事故で渋滞だ。それでも別に急がない。
道路沿いの木々が微風に揺れる様をみたり、車道
を横切る人達をみたり。

既にエアコンで冷えた車内から外を見ると、同じ
場所にいるはずなのに 別世界の風景のようにみえ
る。











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テナガ・ナショナル - 2002年07月05日(金)

過去、イギリス統治が長かったためこの国の
街並みは美しい。

電信柱がないのだ。

日本に住んでいるとそれがないことが、街の
景観をどれだけ美しくするか気づかない。

東京ディズニーランドの美しさはこのためだ。

僕の2歳になる息子がここをディズニーランド
と勘違いし 「ミッキー(マウス)はどこ?
どこ?」と真剣に捜してたぐらいだ。


電気供給はテナガ・ナショナルという政府管轄
の電力会社が行っているが管理の方はなかなか
おおらかだ。

一番近所の信号はこの1年ほど青が点かない。
そんな信号が勤務途中に2箇所はある。

通常赤から青にかわって「進め」だがその信号
は赤が消えて何も点灯しなくなると「進め」だ。

何も知らないで先頭で青になるのを待ってると
後ろからクラクションが鳴る。必ずだ。

僕もそういった信号の先頭になれば左右を目視
確認して ゆっくりアクセルを踏む。 緊張はない。

すっかりこの国に慣れてきた様だ。









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ペルダナ - 2002年07月04日(木)

この国の夜明けは遅い。6時50分。
ピンクの空が雲間から覗く。
僕はいつものように愛車ペルダナを走らせる。

角張らない。といって球形からはほど遠い。

速い。速力がある。2000CC V6エンジン。

ゆっくり運転するよりも少し急ぎ気味な方が
この車には似合う。


前の車のブレーキランプがつき始めた。渋滞だ。

最初のラッシュ時、しかもハイウェイだというの
にトラックが置き忘れたタイヤがど真ん中に転が
ってる。こんなことは日常茶飯事だ。

それを避けようと、隣の車がウインカーもつけず
に割り込んでくる。

気前よく車間をあけてやる。この国ではこれがト
ラブルに巻き込まれない最善の方法だ。

バス停を抜ければあとは車もまばら。いつものよ
うに時速140km で前にいる車を蹴散らす。 至福
の時。

今日も灼熱の太陽の下 一日が始まる。







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サッカー - 2002年07月03日(水)

ワールドカップ直前、ブラジルチームは最終
調整をこの国で行った。

親善試合も開かれた。この国からは23歳以下
の若い選手がナショナルチームとして組まれ
た。

ゲームはブラジルの圧勝。4対0。

ロナウドだけでなくもう一人のFW デニウソ
ンの得点もみることが出来た。

この頃からブラジルは調子をあげていった。
良いイメージを持ってワールドカップ本戦に
望んだ様だ。


当地のサッカーファンは4対0でも大喜びだ。

ワールドカップ本戦での中国戦が同スコアー
だったからだ。

「中国と同じなんだから次回ワールドカップ
 に出場できる!」

世界ランキング100位にも入らないこの国
が、だ。 底抜けにおおらかな人達である。



























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プロファイル - 2002年07月02日(火)

名 前: ジョージ・エルス(日本人)

性 別: 男

年 齢: 32歳

住 所: マレーシア クアラルンプール(KL)

勤務地:KL郊外

家 族: 妻、息子(3歳)
     第2子、来年2月誕生予定

昨日 読んでた本:
  How I play golf/Tiger Woods
    
今 車に積んでるCD:
Gaucho/Steely Dan
Ridin' High/Robert Palmer
Blue Light Til Dawn/Cassandra Wilson












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