以前のフランソワーズの眼には光があふれ、周囲がどれほど暗かろうと、それを明るく照らす力を宿していた。
だが、今となってはそれも昔、力なく片目を閉じ、希望の火を灯す力もすっかり弱まってしまった。周囲は暗闇に包まれ、あの希望に満ち満ちた日々が嘘のようだった。一体、彼女に何があったのか。
要は、愛車のプジョー306(通称フランソワーズ)の片方のライトが点かなくなってしまったのだが、ただでさえ照度の低いプジョーのライトなのに、片方が点かなくなってしまってはある意味致命的だ。フォグランプでフォローするものの、中途半端な光量不足と格好悪さは否めない。そもそも道交法違反だったような気がする。
どうにかせねばと思っていたのだが、交換すら出来ずにかれこれ2週間が経過してしまった。まずいまずいと思っているさなか、本日W林部長を乗せた時のこと。
私「いやぁ、右のライトが点かなくなっちゃって」
W「交換してやろうか?でもこんなの殴れば直ったりするもんだよ」
私「(漫画じゃあるまいし)そんな簡単に直るものなんですか?」
W「1割ぐらいの確率で直る」
私「本当ですかー?ひと昔前のテレビとかじゃないんだから」
W「じゃあ一度停めて殴ってみようか」
言われるがまま停車、車を降り、右フロントライトに回り込むW林部長。
バコッ
殴った!
ピカッ
点いた!
フランス車、思った以上に奥深いようである。機械にはまだまだ人の手の介在する余地は多く、そして私はまだまだ修行が足りないようだ。
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