あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 2007年09月23日(日)

忘れてなどいない

空のあおさのこと、あの日の
ススキの波が
どこまでも遠く、銀色であったこと

石段を登ることを拒んだからと
あなたは一歩、私から遠ざかった
夏の日は確かに薄れているが
わたしの肌はまだ熱を持ったままだ
せめて思い出しておきなさい、と
大きな手のひらが招く
わたしは一歩、後ずさる

いつでも空が晴れ渡っていますようにと
祈り続けて私の指はすりきれてしまった
あなたの頭上にある空
あなたの隣にいる人にそそぐ光
私から繋がれる線の上に連なる人々が
青空のもとにありますように
何万篇も繰り返した言葉を
今ここで告げてどうなるだろう

こすりあわされた白い骨は
足りなかった雲のようだ
僅かでも日陰があったのなら
あなたと語り合うこともできただろう
あの日の、空の青さについて
私が登らない、その先の木陰について

祈るのは晴れた空でも
欲しいのは遮るものだと
縫いとめられたあなたを置いて
坂道を下る
迷った足音はついに追いつかないだろう
雨といえばよかっただろうか


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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe