あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 2006年01月23日(月)

野火は去り
朝の光がためらいもせず
平原を照らす

ごらん、耳を塞いでいたうちに
草は息絶え、花は失われ
なのに鳥は高らかに謳っている
空高く、見えない場所で

何を私たちは守ったのだろう
仮に投げ出し、抱きしめたとして
ごらん、訪れる朝の残酷さを
ともに燃え尽きた人のかたちを
隠しもしない光の清しさを

暗闇を思い出させるだけ
夕日はいくぶんでも優しいだろう
たとえそれが次の
野火の始まりだとしても


 夜になればまた
 火は広がり
 地の草は燃えるだろう
 私達は耳を塞ぎ
 ただ夕暮れに隠れることを願うだろう



 2006年01月22日(日)

蛇を産む
まだやわらかな子蛇は
雪に散る 散り散りに散る
ながもの
雪に隠された土を
さがして這い、這い、這ってゆく

土の色は黒いだろうか
凍ってはいないだろうか
まだ腹の中に眠ってはいないだろうか
問う
けれど子蛇は応えない
むろん解ってはいる
それが蛇のさがなのだと

(いらえないもの達よ
 私の胎から生まれたものよ
 蛇よ、蛇よ、蛇よ
 丸く小さな眼を見開いて
 這うものたちよ
 隠された大地のうろを見つけて
 眠れ)

一匹残らず
去ってゆく蛇
生まれたことなど知らぬように
先のことなど知らぬように


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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe