パンドラの箱
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よく晴れた冬の朝、キンと張り詰めた空気を胸いっぱいに吸い込んで。
「おはよう。今日も一日がんばろうね」
ただそれだけの言葉に万感の想いを乗せて君を思う。
君がどんなにがんばっているか、 君がどんな想いでいるか、 僕は本当にわかっているのだろうか。
僕に出来ることは限られている。 君の問題は君自身にしか解決できない。 僕に出来るのは君を見守ることだけだ。 僕はとても無力で、 そのことがとても悔しい。
君の笑顔の裏側にどんな想いが隠されているのか、 それを知ったところで、僕には何も出来やしないけれど。
君が1分でも長く笑顔でいることができるようにと、 ただ祈ることしか出来ないけれど。
わたしは欲しい、手に入れることのできないものが なぜなら 手に入れることのできないものは欲しいものだから
手に入れることのできるものは、わたしは欲しくない なぜなら 手に入れることのできるものは欲しくないものだから
欲しいものはけっして手に入らない 手に入るものはけっして欲しくない
=R・D・レイン『結ぼれ』より引用=
ないものねだりなのだろうか。 それとも。 本当に欲しいものを取り違えているのだろうか。 本当に欲しいものが手に入っていることを気付かずにいるのだろうか。 欲しいものが手に入らないと嘆くのではなく、 自身が手にしたものをもういちど見つめなおしてみたら、 それでもまだ、欲しいものではないと、言うことができるのだろうか。
アナタのことが信じられないのではない。 アナタの想いが信じられないのだ。 時は移ろうもので、 想いは変質するものだから。 いくつもの想いが変質し、 壊れていくのを見てきたから。
「離れないで。ずっとそばにいて」
何度も、何度も繰り返すのは、 失った想いの記憶が胸を切り裂くから。
膝を抱え、 頭を打ち付け、 爪を噛み、 髪を掻き毟り、 心虚ろにした日々がまざまざと蘇ってくるから。
「大丈夫。離すもんか。安心しておやすみ」
そのひと言で私は眠りに落ちる。
貴方から贈られた言葉のひとつひとつは、 決して温かいものではなかった。 むしろ心凍るような言葉ばかりで、 私の中ではいまだにその一つ一つが戒めとして残されている。
「どうしようもないバカだ」
「結果が出せないでどうして認めろと?」
「俺との約束が守れないのは俺のことをないがしろにしているからですよ?」
「わかりました、俺が悪いんです。俺が責任を取れ、とそういうことでしょう?」
最後に贈られた言葉はとても冷静な言葉で、 そのときの私には受け止めきれず、 だからといって貴方を引き止めることも出来ず、 その言葉の重みにじっと耐えていたのだけれど。
「好きとか嫌いとかじゃない。合う、合わないの問題なんですよ」
そう、好きとか嫌いとかじゃない。 どう足掻いてみてもお互いを受け入れることが出来なかっただけなのだ。 好きとか嫌いとかじゃなく。
あなたと私は合わなかった、と。 今ならそう思う。
締めくくりのその言葉を。 そこに込めた貴方の想いを。
「お達者で」
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