窓のそと(Diary by 久野那美)

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2005年11月01日(火) 何が言いたいんだか。

ときどきぱたんとドアを閉めて、
さっきまでずっとあったはずのものを見えないところにやってしまう。
風景が変わる。世界が変わる。
すっかり見慣れて馴染んだはずのあの風景はここからはもう見えない。

ときどきそういうことをする。
突然思い立ってする。
突然思い立つまでは、思ってもみなかったのに、
思い立ったら一目散にする。
最初から決められていたことであったかのように。
もちろん風景が変化する。
変わったのではなく、私が選んで変えたのだ。

変わるものが苦手で、同じことがただただ繰り返されている状態が好き。
永遠にこのままだったらいいのにといつも思う。
小さな変化もとても怖いので、風さえも吹かないですべてが静止していればいいのにと思っている。

なのに、突然思い立ってしまう。
思い立ってしまったら、数秒前のことでも遠い昔のできごとになる。

ぽんっとそれは現実から遠くなり、
けっして開けることのない扉の向こう側へ行く。

ある日突然、思いがけない方向から吹いてきたその風は、それらをぜんぶ一掃し、ドアの向こうに追いやってしまう。

未練も後悔もあるはずはなく。
あるのは幸せで満ち足りた、残酷な幸福感。正真正銘の、純度の高い幸福感。
清清しく新しく健全な、まあたらしいきもち。

たくさんのドアの向こうに、たくさんのドアの向こう側がある。
そこにはたくさんの、たくさんの、たくさんの、たくさんの、
忘れることのできない、二度とここにあることのない、
たくさんの風景がある。

かつてはここにあって、今では外側にしかないそれらの風景を、
私はたしかにそうやっていつまでも所有している。

ずるいのか馬鹿なのかものすごく利口なのか・・・
生きてる間はわからないような気がする。

ただ。最近ときどき思うのは。
ぱたんと閉まるドアは、
ぱたんと開くこともあるのかもしれないな、ということ。


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