窓のそと(Diary by 久野那美)
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遠くへ行きたいと思った。 遠くというのがどこなのか、なぜ、そこへ行きたいのかははっきりしていた。 にもかかわらず。「遠く」というその場所は、とても悲しい目的地だった。
目的地な訳だから、そこを<目指し>てどんどん<進ん>だ。 そうすると、そこは目的地な訳だから、やがてはたどり着いてしまった。 あんなにはっきりと知っていたはずの「遠く」という場所は、その瞬間、どこよりも不案内な「此処」という場所に化けてしまった。 行きたかった場所はそんな場所ではないので、仕方がないので、やりなおした。 「此処」というよそよそしい場所から、 あらためて、「遠く」を目指して出発した。 そして・・・・。
そうやって、いったいどれだけの「此処」を<出発して>きたのだろう。 気がつくと。とんでもなく長い距離を旅していた。 気が遠くなるほどたくさんの場所から出発し、 気が遠くなるほどたくさんの場所を目指して出発し・・・・・。
この旅はどこから始まったんだろう? 覚えていない。
わかっているのは、ここがいつも「その場所」ではなく、 そこから一番遠いところにある、どこよりもよそよそしい、 不案内な場所だということ。 だからいつも進んでいなければいけないのだということ。 どこからでも、何回でも<出発>し直さなければいけないのだということ。
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