窓のそと(Diary by 久野那美)

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2002年01月27日(日) あの場所のあの子

子供のころ。
童謡がむちゃくちゃ怖かった。
あの感覚。今でもはっきり覚えている。

みんなあたりまえに口にするけど、そんな場所実は誰も知らない。
いつも一緒に遊んでるけど、その子のこと、実は何も知らない。
そんなものばっかりで作られた世界。

そのときそこに在ること以外に何もできない世界。
どこで出会ったのかも覚えてない。
だけどみんながあたりまえのように知っている。

ああいうものは今でも怖い。
でもあこがれる。
そのときそこに在ること以外に何もできない世界。
誰が誰に勝ったって誰からも譲ってもらえない世界。
誰からも、いつもちょうどおんなじだけ遠くにある世界。

♪よいこの住んでるよい町  が いったいどこにあるのか。
♪赤い靴履いてた女の子   は なんていう名前なのか。

今でもわからない。
あのとき知らなかったことは、今でもわからない。
どこからも、いつもちょうどおんなじだけ遠くにある世界。

だけどときどき。
私もそこに居るような気がするときがある。


2002年01月22日(火) 「私たちにはことばしかないのです。」

昔、身体的ハンディキャップを抱えたひとの団体のチラシでこんなコピーを見ました。
「私たちには<ことば>しかないのです。」

<ことば>に不信感を持ち始めた頃だったので、強烈なショックを受けました。
中学時代お世話になった先生に言われた言葉と一緒によく想い出します。

「感情的で脆い人間ほど論理的に言葉にする力を身につけなければいけない。」

内側から溢れてくる混沌の大波から自分を守るために。
必要なときはフェアな方法で誰かに助けを求めることができるように。


2002年01月19日(土) 幸せについて

・・信じたいものを信じてられること。
だとつくづく思う


2002年01月17日(木) 今日はまだ春じゃない。

あったかい。
ここ数日。春みたいな空気。
でも春じゃない。早すぎる。みんなちゃんと知っている。

春は、どの季節よりも慎重にやって来る。
誰にも怪しまれないように。
誰もびっくりさせないように。
誰も困らせないように。

新年が明けると、春は早々と登場の準備にかかる。
無造作に、脈略もなくあたたかい空気を吹き込んでみたりする。
知らん顔して2、3日、ふらふらしてみたりする。
そして何事もなかったようにひきあげる。
2ヶ月間はそんなことの繰り返し。

だけど。
そのたびに本当は少しずつ、何かが変わっていく。

やがて、準備がすっかり整った頃・・
誰もが疑いようのない、「その日」がふいにやってくる。
突然のはずなのに。なぜかぴったりのタイミングで。


2002年01月02日(水) パプアニューギニア

哲学をやっている知人が言っていた。

「『哲学やってます。』って言うと、
『哲学ですか・・。いいですね。私も哲学書って読んでみたいなあと思ってるんですけど、なかなか機会がなくて。』って答えるひとの割合がかなり高いんだよ。誰にも知られてないような地味な分野だと思ってたけど、哲学の潜在的需要って意外と高いのかなあ。興味を持ってるひとがあんなにいるとは思わなかった。」

いや・・。それはちょっとどうだろう。と思った。
だって。もし誰かと話していて、
「私、パプアニューギニアの出身なんですよ。」って言われたら、きっと言うだろうと思うのだ。
「パプアニューギニア・・・。いいですね。私も一回行ってみたいです。」
だって、それがパプアニューギニアについて言えることのぜんぶなのだ。
他に言えることがあったらきっと他のことを言うだろう。

どこにあるのかも知らない。
特産物も知らない。
出身の有名人も知らない。
観光名所も知らない。
国の名前なのか、地域の名前なのか、民族の名前なのかすらわからない。
なにか質問しようにも、あまりに知識がないので質問することすら思いつかない。
あまりに無知な様子をあからさまにすることは失礼にあたるかもしれない。

でも、パプアニューギニアなこのひとには興味がある。
今、目の前ではじめて現実感を伴ったこの魅力的な単語にも興味がある。
自分が興味と敬意を持っていることを相手に示したい・・・。
乏しい知識と語彙の中から、せめてほんとうのことを伝えたい・・。
そんなとき。
「パプアニューギニア・・。わたし一度行ってみたいんですよ。」
そんな風に言うかもしれない。

だから。
<「哲学書」を一度読んでみたいと思っている<意外とたくさんのひとたち>のことも・・・、
どんなもんだろうか、と思うのだ。


2002年01月01日(火) 新年

おおみそか。
一日がとっても丁寧に消費されていく。
刻々と、たしかに変化していく「今」を日本中が固唾をのんで見守っている。
一年でいちばん、大切に使われる1440分。
大晦日の空気ってだいすき。
夜も更けてくると緊張はどんどん高まっていく。
カウントダウンがはじまると、心臓がどきどきしてくる。
59,58、57、あ・・・
45、44、43、あー。うわーっ
35,34,33、え?え?え?ほんとに?
24、23,22、いいの?そうなの?え??
なんか泣きそうな気持ちになる。

10,9、8、7 あーっ、おねがい、やめてっ、いや、ちがう、やめないで・・
わけのわからない動揺と混乱。
6,5,4,3,2,1・・・あ・・。ああっっっ・・・。
思わず目をつぶる。

・・・0。
闇の中、新年がやってくる。
<おめでとーございまーすっ。>
日本中が、沸きかえる。
さっきまで静けさはどこへ?
さっきまでの丁寧な空気はどこへ?
すべてのベクトルは未来へ向いて。
とっても希望に満ちた瞬間・・・

それはたしかにそうなんだけど、
それはそれでたしかにそうなんだけど、
なんだか、説明のつかない寂しさが、
影も形もなくしたまま宙に浮いている。
どうすんの?これ?
なんだっけ?これ・・
誰も覚えてない。
新しい年の初め。

絶対に正しく感じることのできないなにか大切なことがおこってしまったような気がする。
いや、気がすることすらできないなにかが、すでに通り過ぎてしまったような気がする。
これからさき、二度と出会うことのないなにか。もう誰にも何の関係もなくなってしまったなにか・・・。

たとえば出産したときのお母さんてこんな気分だろうか、とふと思ったりする。



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