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華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2004年03月12日(金)

午前1時の情事。 〜テールランプ〜

<前号の続き>



瑶子はまだ潤んでいる瞳を俺に向けて、こう切り出した。


 「・・・しよう?」
「何を?」

 「いいよ、車の中で・・・平良なら何されても構わない」
「・・・ちょ、ちょっと」


瑶子は再び着込んだスカートの裾を引き上げ、生の太腿も露になるのも構わず、
その場で下着に手を掛け、脱ごうとした。
そういえばパンストは破った後、ホテルへ捨てて来た。


「だ、ダメだって。何やってるの?!」
 「いいの、滅茶苦茶に求められたいの・・・私じゃダメ?ダメなの?」

「そういう問題じゃなくて・・・」
 「嫌、私・・・ダメな女になりたくない!」


止まらない瑶子の行為に、俺は車をハザードを出して路肩に寄せて停めた。

頭上には名古屋都市高速が通る、都会の大動脈の真っ只中。
街中が染まる程の綺麗な夕焼け。
黄昏時のFMから流れてきたのは、ピアノの旋律が印象的な優しいバラード。

それでも下着を下ろさんとして半ば暴れる瑶子の手を掴み、俺は強引に唇を塞いだ。
殴るか、こうでもしない限り、彼女を制止できないと感じたからだ。

舌を絡ませながら、俺は掌で瑶子の髪を何度も撫で下ろした。
きちっと化粧し直した瑶子の頬に、温もりが一筋、二筋と伝わっていく。
しっかり塗り直したルージュも、俺の唇にたっぷりと移ってしまった。


「・・・大丈夫?落ち着いた?」
 「・・・平良・・・教えて。私って、どうしてこうダメな女なのかな・・・?」

「そんなに自分を責めないでよ。
 俺は瑶子の事、大好きだよ。
 自分を悪く言ってたら、俺の趣味も悪い事になっちゃうよ」
 「平良、悪趣味なんだから・・・こんなポンコツのオバサン、好きになるんだもん」

「俺は歳、恰好だけじゃ女に惚れないよ」
 「・・・もうね、自分に自信が無いの・・・もうこれ以上ダメになりたくない・・・」


瑶子はこの後、何を言っているのか、もう俺には聞き取れなかった。


瑶子がもがき苦しむのは、今の現状だけではない。
自分が歩んできた幾つもの「過去」とも戦っている。
時折、過去の自戒や今後の不安などが一気に脳裏によぎり、
言い様の無い不安に飲み込まれる。

きっと誰にもあることだが、彼女にとっての過去が支えきれないほど
重い『荷物』となっている。

こういう過去を一緒に支えていくべきなのが、きっと旦那であり家族なのだろう。

どんな人でも、何十年も生きていれば、関わり無い他人には理解出来ない、
重たい過去を幾つも抱える事だってあるだろう。

そんな相手の過去を受け止め、荷物を共に抱えて歩く事が
人生の伴侶となる者の務めではないだろうか。
共に支え合い、共に歩調を合わせて歩む事で分かち合える『情』が生まれる。


人間が生きていく、活きていく上でに一番大切なもの。
その荷物の重みを分かち合い、『情』を感じるパートナーの存在もその一つだと思う。


しかし、瑶子の「重い荷物」を一緒に抱えるのは、少なくともきっと俺ではない。


まだ半ば自暴気味の瑶子。
まず、落ち着きを取り戻させたい。


「瑶子はダメな女じゃない。よくやってるよ・・・娘だってちゃんと
 育てているじゃないか」
 「・・・」

「瑶子・・・これからはあなたがしっかりと新しい家庭を照らしていくんだ」
 「・・・私が?」

「そう、奥さんや母親が明るくて朗らかな家庭は絶対に上手くいくよ」
 「・・・」

「今まで何人もの女と出逢った俺が言うんだから、大丈夫!」
 「・・・」

「瑶子が何もかもが不安なのは、今まで話を聞いてきたから分かるよ・・・」
 「・・・怖いよ、怖い」

「でも不安やトラウマは、自分で乗り越えないとダメなんだから」
 「・・・」

「俺で良ければ、今後身体の関係が無くなっても付き合ってやるよ」
 「・・・嘘」

「ベッドで言ったじゃん。俺の事好きだって。俺も瑶子のこと、大好きだから。
 だから・・・他人には言えない関係だけど、これからも支えたい」
 「・・・平良」

「俺なんてさ・・・もう必要が無くなれば切り捨てればいいんだから・・・」
 「・・・」


瑶子は唇を噛み、無言だった。
何か言いたそうだったが、言葉を飲み込んだようだ。
俺もそれ以上追求しなかった。


「狭いけど、まず下着を上げよう。これじゃあ恥ずかしいよ」


太腿まで降りた下着を指摘する。
瑶子の頬がふと緩んだ。


再び車を出した数分後。
瑶子の新居の近くのガソリンスタンド。
その脇で車から降ろす。


 「平良、今日は本当にありがとう」
「ああ、中身の濃い一日だったね(笑)」

 「またメールするね・・・」
「俺もね。またね!」


帰宅前、ファミレスで食事をしようと立ち寄る。
車から降りる時、ふとバックミラーを覗いた。

瑶子のルージュが俺の唇にくっきりと残っていた。
慌ててティシュで拭い取るが、なかなか上手く取れない。

瑶子がまだ俺と離れたくないのかな・・・

そんな身勝手な妄想を企て、独りで笑ってみたりする。




それ以来、瑶子からの連絡は無かった。
こちらからは何度かメールを入れたが、返事が無かった。
連絡を絶たれた意図も理解できない。

不安な要素だらけだった新生活に、何か支障があったのかと心配だった。


バレンタインデーも近くなってきた2月中旬。
こちらから様子見がてら「またお茶でも飲もうか?」とメールを入れてみた。


 『 子供が塾に行く火曜日の夜なら、一時間くらいなら大丈夫だよ 』


それは久しぶりの返事だった。



指定された火曜日の夜。
待ち合わせに指定された名古屋市郊外の黄色い看板のファミレスに着いた。

店内を見ると、少し痩せた瑶子が喫煙席に座っていた。
煙草を燻らす彼女は、俺の姿を見つけてふと微笑む。


「久しぶりだね・・・痩せたな」
 「そうね・・・」


瑶子はお迎えの時間もあるので・・・と時間を区切っていた。
俺も無駄な時間にしたくない。


「時間が無いから、今日はホテルに行けないね(笑)」
 「・・・バカ(笑)」


こういう他愛も無い会話の時間もたまには新鮮だ。
お互い、様々な話をした。

瑶子の家庭での話。
俺も仕事でトラブルがあった時で、その悩みを話した。


ふと瑶子が時計に目を遣った。
お迎えに行く時間が迫っていた。

先程から伏目がちだった瑶子が、意を決したのか、顔を上げて切り出した。


 「・・・平良、実はね・・・」
「どうしたの、改まって」

 「私ね、もう自信がないんだ・・・」
「結婚生活?」

 「・・・そうじゃないの・・・それなりに、ね」
「じゃ、何が?」

 「はっきり言えば、平良との関係・・・かな」


いつか来るものと覚悟していたが、多少なりともショックだった。


「もう、俺の事は必要ない?」
 「そんなこと無い・・・でも、私も強くならなきゃね」


俺と瑶子は遊びの関係。
責任の持てない関係。
ならば、俺はその決意に従うしかない。


「もう会う事は無いかな?」
 「分からない・・・でも絶対ってのは無いから・・・」


店先で瑶子は俺に抱きついてきた。
俺も強く抱き寄せる。
しかし、今宵はここまで。

その後、黄色い軽四で娘のお迎えに出て行った。
駐車場から見送る俺。

数え切れない程の赤い灯りに、紛れて消えて行った瑶子の車。
俺はそのテールライトを、柄にも無く見つめていた。









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次の日。
仕事が終わった後、昨夜のお礼がてら瑶子に短いメールを送った。

すぐに返信されて来た。
それは瑶子からではなく、メールサーバーからだった。


 『指定されたメールアドレスは実在しません』


俺は慌てて瑶子の携帯に電話を掛けてみる。


 『お掛けになった電話番号は、現在使われておりません』


唯一の連絡手段だった携帯電話は、もう解約されていた。

彼女の告白は単なる迷いではなく「絶対」の覚悟だと知った。


一応新居の住所も聞いていたが、こういう形で決意を見せられては、
こちらからこれ以上追いかける訳には行かない。

俺は自分の携帯のメモリから、瑶子の番号とアドレスを呼び出した。
メニューボタンから、俺は消去を選んで押す。


 『No.273を消去しますか?』


画面に表れた決定ボタン。
躊躇しつつも、思い切って右手の親指で押す。


その瞬間、俺の手元から瑶子の存在は完全に消えた。


なかなか取れなかった先日のルージュ。
いとも簡単に消え去った携帯の番号。


もう二度と会う事の無い女。
こんな唐突な終わり方も、俺はもう慣れた。


瑶子はこれから本当に強くなれるのか。
または、新たな他の男に依存するのか。


彼女への心配の種は尽きない。
しかし、それはもう俺が知る由もないこと。


会社の駐車場から出た帰り道。
掛けっ放しのFMから、あの優しいバラードが流れてきた。
ほんの10分ほどの短い時間なのに、何たる偶然か・・・
俺の携帯から消えた、あの女の思い出が次々と脳裏によぎる。


「いい女だったなぁ・・・
 こんな事なら、最後にあのまま車の中で最後までいけばよかったなぁ・・・」


誰も聞いてない車内で、そんな強がりを吐いてみた。

人の記憶とは、どうやら携帯のメモリのように便利に整理できないものらしい。
故に、過去に苦しむのかも知れない。
瑶子も、俺も。





 ☆ 毎度のご訪問ありがとうございます。
   当方の都合により、発表が随分間延びになった事をおわびします。
  
   今後とも「華のエレヂィ。」を宜しくお願いします。


2004年03月11日(木)

午前1時の情事。 〜怖かった〜


<前号の続き>


俺は瑶子の腕を掴み、ベッドへ強く押し倒す。
スーツの上から乳房を揉みしだきながら、俺はパンストを掴む。
瑶子は思わず上ずった声を漏らす。

そして俺は力一杯、薄い化繊の布を引きちぎった。
派手な音を立てて引きちぎれる極細の繊維。


 「あうっ」


俺の腕力に驚いた瑶子は悲鳴を上げた。
その中から現れた黒い下着を弄り、強引に指を圧し当てる。

下着の上からだったが、指先は温く濡れていた。


 「ああん、いやぁ・・・」
「瑶子、もしかして犯されて感じるのか?」

 「された事無いから・・・平良にだけなのぉ、犯されたいって思うのは」
「嘘付け、他に男がいるだろう?」

 「もう会ってないぃ・・・本当なのぉ・・・!」
「信じられないね。ようし今日は思い切り辱めてやるから」

 「あああっダメ!」
「ダメじゃない!覚悟してもらうよ!」

 「嫌ぁ・・・」
「男を本気にさせたら・・・どうなるか思い知るんだな」


俺は乱暴なSexは嫌いだ。

しかしそれが相手を悦ばせるのなら、俺は鬼にでもなれる。


瑶子の事が好きだった。
だから誰よりも大事に抱いていたいと思っていた。
しかし、瑶子から見た俺は単なるSex Friend。
肉体の快楽追究が一番の目的である。

そんな俺に、旦那にも求められない性の衝動や欲求を求めてくれる。
ならば答えてやりたいではないか。



どれくらいの時間が経ったのだろう。


直前まで響き渡っていた喘ぎ声が止み、静まり返った空間。
独特の甘い匂いがうっすらと漂う、薄暗い部屋。

蹴飛ばして、下に落ちたベッドの掛け布団。
汗や愛液が染み、皺だらけになったシーツ。

燃え尽き、抜け殻になってうつ伏せに倒れこむ瑶子。
その隣りで仰向けになって深呼吸を繰り返す俺。


グッタリとした裸体を起こし、フラフラと冷蔵庫に向かう瑶子。
ドアを開け、冷たい飲み物をあさる。
そこから出したスポーツドリンクを喉を鳴らして飲み干した。
再び俺の左隣りに座ると、肩に頭を乗せてふと漏らした。


 「今日の平良、すごく、怖かった・・・」


俺は身体を起こして瑶子に尋ねた。


「・・・嫌だったか?」
 「ううん、嫌じゃないの。でもね、すごく怖かった」

「どう怖かったの?」


瑶子は何も答えずに、ベッドに腰掛ける。
そして俺の懐に倒れ込むように、身を寄せた。

裸の瑶子を抱き寄せて、体温を分かち合った。

そしてしばらくした後で、俺と瑶子はまた一つになった。
普段見せない瑶子の動揺を思い遣り、一転して優しく抱いた。


瑶子は安心したかのように、いつも以上に甘えてきた。
普段口にしないほどの言葉で、俺に語り掛けてくる。


 「平良、大好きよ・・・まだ離れないでね・・・まだ離れないで・・・」
「大丈夫、このままずっと繋がっていたい位だよ・・・」

 「好きよ・・・この大きい身体も、このオチンチンも、優しい声も・・・」
「ああ、俺も好きだよ・・・寂しくなったら、いつでも抱きとめてやる」

 「・・・嬉しい・・・ダメ、また泣けちゃう・・・」
「泣け、泣きたいだけ泣け・・・思い切り声を上げて泣いてよ・・・」


瑶子は俺にしがみ付いて、聞き取れない言葉を繰り返して泣き続けた。
俺も正常位で繋がったまま、腰を止めて身体を密着させて抱き締めた。

俺と瑶子のスーツがソファにだらしなく捨てられている。
強引に脱がせたまま、放ってあった。

無邪気に泣き続ける瑶子の髪を撫でながら、
俺は横目でぼんやりとその服を見つめていた。



ホテルを出た頃には帰宅の予定時刻を過ぎ、すっかりと日が落ちていた。

夕方の県道空港線を南へ下っていた。
広い車線に、帰宅を急ぐ車列が渋滞を繰り返し、行く手を阻み続ける。

助手席に座る瑶子の顔をふと見る。
表情も柔和になり、肌つやも随分と良くなった。
今まで溜めてきたものを一気に吐き出し、スッキリしたのだろう。


 「平良、ゴメンね・・・最後イケなかったでしょ?」
「あ?ああ、構わないよ、それまでにイケたから」

 「・・・大丈夫?」
「もしまだ不満だったら、今度はこの車の中で求めようかな(笑)」

 「・・・じゃ、車を人目につかないところへ寄せて」
「・・・なぜ?」



<以下次号>








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2004年03月10日(水)

午前1時の情事。 〜黒いパンスト〜



<前号の続き>



瑶子の背負う現実を知る俺はただ黙って、その涙が枯れるまで
その細い身体を抱き締めることしか出来なかった。

瑶子は今の生活を、俺にどうにかして欲しい訳ではない。
ただ今の状況から来るフラストレーションを、
ただ一時でいいから解き放って欲しい、癒して欲しい・・・

俺はそう瑶子の欲求を理解していた。


ホテルの部屋から出る時、瑶子が言った。


 「あのね・・・私さ、平良に抱かれて凄く楽になった・・・」
「俺って、癒し系かな?」

 「私にとって、激しいけど癒されるの」
「よく分からないなぁ〜(笑)」

 「私にも、よく分かんないんだけどね(笑)」


瑶子は待ち合わせ場所と同じ所へ送って欲しいと言った。
俺はそこへ送り届け、互いに次回の再会を約束する。

瑶子は車から降りる際、俺にお礼代わりの軽いkissを残して、立ち去った。


しかし家庭の事を考えると、あまり夜に家を空けることは出来ないだろう。

公団住宅の時は、同じ屋根の下。
ある意味まだ気楽だった。

これからは何かあった時に困る。
必然的に会う機会が減っていくのは、明らかだった。




当時の俺の仕事は、平日の昼間に休みが入ることがあった。
それを調整して利用するしか、もう気兼ねなく瑶子と会う機会は生まれない。

俺はその旨をメールで送った。


 『私もパートをPTAの関係で休む時があるから、
  その時に時間があえば構わないよ』


平日に瑶子がパートの休む時は、月一回のPTA役員会の時。
その役員会は大抵午前中に終わり、午後からはフリーになるという。

その日に、俺は仕事を調整して午後から休みを入れた。



冬休み前最後の役員会となる、11月の終わり頃。
小春日和の、うららかな午後1時。
俺は再会する瑶子にあるリクエストをしていた。


「一度、スーツを着ておいでよ」
 「え、スーツ?最近着てないなぁ」

「いいから、リクエストね!」
 「そりゃ構わないけど・・・」


彼女の都合で、引越しした家の近くまで迎えに行く事にした。
名古屋市緑区のとある公民館前で待ち合わせる。

そこにスーツを着込んだ瑶子が立っていた。
着こなし方といい、メークといい、気合が入っている。
どこから見ても、一流の会社の女部長といった雰囲気だった。


「お久しぶり。今日は凄く格好良いね」
 「だって、近所の人から見たら変だもの・・・主婦がスーツだなんて」

「そんな事無いよ、すごく決まってる」
 「うふふ・・・ありがとう」


俺はホテルに行く前に、喫茶店に立ち寄った。
そこでも、聞き慣れた家庭での愚痴や娘の話になる。
彼女の気持ちを解きほぐすためにも、こういう話を聞いてあげたい。

着慣れないスーツに、どこか照れ臭そうな瑶子は、
よそよそしくカフェオレをすする。

俺はそんな麗しい瑶子に見とれながら、熱いコーヒーに口付ける。



その後、ホテルの部屋に入った。
瑶子は伸び上がって俺に抱きつき、先ほどのコーヒーの香りが残る
俺の唇を奪ってきた。

彼女はこの時を待っていたのだろうか。

しかし今日はスーツ姿。
これを堪能しない手は無い。

俺は瑶子のスーツの上から、掌で身体を撫でまわした。


「綺麗だな、よく似合ってる・・・」
 「ありがとう。主人でも言ってくれないよ、そんな事」

「主人、か(笑)。なら、余計に俺が言ってやる」
 「嬉しいよ、平良・・・」


どちらとも無く、唇で唇を塞ぎあう。
柔らかい粘膜の感触を、じっくりと時間を掛けて感じあう。

腰に回した俺の腕が、自然に瑶子をさらに強く抱き寄せる。
背中に回した瑶子の腕が、自然に俺にさらに強く抱きついてくる。

そして舌を割りいれ、ねっとりと絡ませあう。

瑶子は俺の腕に何の抵抗も無く抱かれ、熱くなった身体を押し付けてくる。


至福の時だ。


 「ねぇ、平良・・・私のスカートをまくってみて・・・」
「何?」

 「こういうの、好きじゃないかなぁ、って思ってね」


言われるがまま、俺は瑶子のスカートをまくってみる。
表れたのは、黒いパンスト。

瑶子は近くのソファに腰掛ける。
俺を誘うかのように、だらしなく足を開いて股間を俺に向ける。


 「平良・・・破って」
「・・・破ったら、どうなるかな?」

 「された事無いの・・・して」



<以下次号>








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2004年03月09日(火)

午前1時の情事。 〜ラブホテル〜



<前号より続く>



次の情事の時、瑶子が俺にこう話した。

 「最近、娘が気付いているみたいなの」
「何を?」

 「平良とのこと」
「へぇ〜」

 「お母さん、『昨夜はあのおじさん来てたの?』って聞くの」
「おじさん・・・俺の事?」

 「違うよ、婚約者の方(笑)」
「で、どう答えるの?」

 「ええ、昨日はこそっと来てたよって」
「いいの?嘘吐いて(笑)」

 「だって、平良の事説明できないでしょ?」
「・・・まあね」

 「今ね、実は・・・他に付き合っている人がいるの」
「・・・え?」


俺は思わず聞き返した。

 「その人とする時は、平良との時みたいに声は出さないからなぁ・・・」
「そうなんだ」


瑶子は俺を含めて3人の男と同時に肉体関係を持っていることになる。
さすがの俺も驚いた。
かといって、俺も彼女に何も言える立場ではないのだが。


「瑶子・・・」
 「なあに?平良」

「・・・結婚、やっぱり不安なの?」
 「・・・・・・うん」


瑶子はしばらく考えてから俯いて、そう本音を漏らした。

二度に渡る結婚の失敗。
自分にも落ち度はあるとは言え、男という性に悩む日々を繰り返してしまうのか。

新郎となる男が抱える、前婦への慰謝料や借金。
仕事の出来る男ゆえ、収入もあるが借金もある。

そして娘との不仲。
新しい父親となる男に抵抗を覚える娘に、男は平気で手を上げるという。



ある日、瑶子の話の中で出た、ある会話を思い出した。

 「お母さん、『昨夜はあのおじさん来てたの?』って聞くの」

あのおじさん・・・

娘が抱く大人の男への反感と嫌悪感は理解できる。

瑶子が娘とその男の確執に悩んでいる事を幾度となく漏らしていた。
それでも娘のためにと、自分の意識に反して結婚を急ぐ瑶子。


それらの不安を一時でも忘れるために他の男との情事にふけり、
一時の快楽におぼれてみせる。

その偽りの愛の相手は俺であり、もう一人の男もある。


瑶子が様々な軋轢に押しつぶされそうになっているのが読み取れた。

彼女と娘を救い上げられるほど、俺は強くない。

ただ俺と身体を合わせる一時が瑶子の救いになるのなら、
俺はそんな関係でも構わない。



「瑶子はどうしたい?」
 「私?平良とはこれからも会いたいな。でも・・・」

「でも?」
 「もうすぐ引き渡しだし、もう家で会わない方が良いかもね」

「そうだね」
 「だから、ここで会うのは最後にして、今度からは外だね」

「よし、じゃ思い出作りに一緒にお風呂に入るかっ」
 「それって、いつもと一緒でしょ(笑)」



その後、メールはあるものの、しばらく会う機会が無かった。
その期間に、瑶子に様々な変化があった。


予定より早い、婚約者との入籍。
公団住宅から名古屋市内への引越し。
それに伴う娘の転校。
新しいパート先への就職。

彼女にとっては、充実した日々を過ごしていたのだろう。


次に会ったのは、数ヶ月経った秋。



彼女の実家の近くだという、名古屋市中川区の複合遊戯施設。
待ち合わせ時間は午後7時。
その映画館の入り口前に俺は向かった。

待ち合わせ時間より5分ほど早く到着した。
瑶子はすでに待っていた。

俺は軽くクラクションを鳴らすと、こちらに気付いた。


瑶子は、見た目少し痩せていた。


「久しぶりだね、元気だったかい?」
 「うん、おかげ様で・・・ね」

その微妙な間合いが、どことなく意味深だった。


「食事に行くか」
 「うん、私は・・・すぐにでも良いよ」

「何が?」
 「意地悪(笑)」


俺は腹が減っていた事もあり、食事に向かった。
それにいきなりラブホテル、という選択肢は好きではない。
例え肉体だけの関係でも、だ。


軽く食事を済ませて、俺はその近辺のホテルに入る。


 「初めてだねぇ、私たちホテルに入るのは」
「俺、人生で初めてですよー」

 「どうせ嘘吐くなら、もっとまともな嘘を吐いてよ(笑)」


俺はバスタブに湯を張る。
その間、俺は部屋のカラオケで歌を歌い、瑶子の歌を聴いた。
ひと昔前に流行った、失恋がテーマのバラード。
上手だった故に、少し感傷的になる。

やがて蛇口の音が止む。
俺は瑶子と共に風呂に入った。


 「明るいのって、恥ずかしいね」
「今まで暗闇の中で入っていたからね」


公団住宅の風呂は狭い。
湯船も一人しか入れないかった。

それでも、俺は瑶子と過ごした時間が大好きだった。
あの密着感が忘れられない。


ラブホテルの風呂は広いから快適だ。
しかし、公団のような密着感がない。
俺と瑶子に、どこか微妙な隙間が空いている・・・そんな気になった。

それは、きっと気のせいだけではなかった、と今になって思う。

長く湯に浸かったからか、のぼせ気味の俺はバスタオルを腰に巻いたまま、
ホテルのベランダに出た。


遠くに長島温泉脇の遊園地の夜景が見える。
幾つもの大きなジェットコースターの軌道が照明に照らされて闇夜に浮かぶ。
その向こうは海だ。
強い潮風が吹いてくる。


 「あ、ナガシマだぁ」
「ここから見えるんだね・・・そんなに近かったっけ?」

 「でもよく行ったなぁ・・・娘がね、好きなの」


瑶子が俺に傍らに寄り添う。
俺は彼女の細い肩を抱いて、しばらく夜景を眺めていた。


身体が冷えてきたので、部屋の中に入る。

俺は広いベッドで瑶子の身体を強く抱いた。
瑶子も俺の唇を乱暴に求めて来る。


「今までさ、あの住宅では、声って我慢していた?」
 「当然じゃない・・・だって聞こえちゃう」

「今日は我慢しなくて良いね」
 「・・・えっ、また意地悪な事言うのね」

「意地悪じゃないって、聞かせてよ・・・本気の喘ぎ声を」
 「バカ、恥ずかしいから出せないっ」


俺は久しぶりだった事もあり、瑶子の身体を求めるがままに攻めた。
瑶子は今まで出せなかった、腹からの喘ぎ声を出して答えた。


 「声出せるっていい、凄く感じるぅぅぅっ・・・!」


シーツまで垂れようとする程、汗と愛液で濡れていた瑶子。
何度目か達する直前のこの言葉が、全てを表していた。


瑶子が最後に達した後。
俺にしっかりとしがみ付いたまま、初めて抱いた後のように、
涙を幾筋も流した。



<以下次号>








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2004年03月08日(月)

午前1時の情事。 〜意気地無し〜


<前号の続き>



「いいの?怒るかと思ってた」
 「女はね、好きな男と繋がっていると思うと嬉しいの」

「ありがとう、俺、嬉しいな」
 「平良・・・好きよ、私」

「じゃ、中に出してもいい?」
 「・・・いいよ」

「じゃ、俺の子どもが出来ちゃうね」
 「・・・じゃ私を奪って・・・ね」

「じゃ、奪うのは私と娘の二人かなぁ」
 「もう、現実に戻っちゃうからダメェ(笑)」


たっぷりと言葉でじゃれあった後、俺はゆっくりと深く、
大きく瑶子自身の中を突く。

蜜に満ちた瑶子自身の奥のスポットにあたる度に、
ふぅっと瑶子の意識が遠ざかるのが伝わる。

瑶子の感触と反応に、本当に愛してしまいそうなほど俺も感じる。


今度は瑶子が好きな騎乗位に移る。

瑶子が仰け反りながら前後に動く中、
俺はローターのスイッチを入れ、瑶子の茂みの中に押し込んだ。
途端に瑶子の動きが止まり、前に枝垂れてくる。


 「平良ぁ、ダメェ、動けないぃっ・・・」
「そう?じゃ俺から動くか」


俺も足腰の強さには自身がある。
ローターを仕込ませたまま、小柄な瑶子を下から突き上げる。
 

 「ダメェ・・・!」
「ほら、イッちゃえ!」


電光石火の到達。
俺の肉体の上で、瑶子は激しく息を切らせていた。

今度は瑶子をバックから突く。
腰を引き上げ、俺のペースで突き動かした。

瑶子も声にならない喘ぎ声で鳴く。


「俺、イクよ!」
 「出して、中で出して!」


イク瞬間、俺は瑶子自身から抜き出して背中に全てをぶちまけた。
背筋から肩甲骨辺りまで飛び散る俺の精子。
湯気を立てんばかりの俺と瑶子の身体。

汗が引き、息が整う暫くの間、俺と瑶子は身体を横たえて休んだ。


「本気で中で出ちゃいそうだったよ」
 「・・・なんで中で出さなかったの?」

「・・・なんでだろうね」
 「案外、意気地無しなんだぁ・・・」


そう言って、どことなく不満そうな瑶子。
こういう時の女の真意や意識が男には理解出来ない。
俺は瑶子の肌に指を滑らせながら、やり過ごした。


 「何か飲み物入れるね」


落ち着いた瑶子はやおら立ち上がり、台所の冷蔵庫に向かった。
裸にエプロンをつけ、グラスに麦茶を入れて持ってきた。


 「男の人って好きでしょ?こういうの」
「瑶子はスタイルが良いからね・・・日本一こういうのが似合う40歳だな」

 「それって、喜んでいいの?(笑)」
「いいんだよ(笑)」

 
瑶子がグラスを片付ける時、俺はそっと彼女に付いて行った。
キッチンに立つ瑶子の背後に立ち、俺はそっと手を乳房へ回した。

驚きでキュッと身を縮めたが、俺がエプロン越しの乳房に力を加えると
違う反応を示した。


「瑶子も色々と考えているなぁ・・・裸にエプロンとは」
 「平良の事、もっとドキドキさせてやろうって思ったの」

「ふぅん、俺は瑶子の感じ方にいつもドキドキしてるのに・・・」
 「本当?」

「だからこんなにいきり立ってるんだよ」


俺自身は、まだ瑶子を求めていた。
尻の割れ目に押し付けると、瑶子の身体はまだ火照り出した。


「ねぇ、まだ欲しいの?」
 「瑶子はどうなの?」

「・・・平良が良いのなら、良いよ」
 「良いかどうかじゃなくて、欲しいかどうか」

「・・・きっと、欲しくなる・・・」
 「じゃ、ここでしようか?」

「えっ?、やだぁ・・・娘が起きちゃうよ・・・」
 「じゃ、見せ付けてやるか」


俺はエプロン越しに刺激していた乳房にさらに力を入れる。
そして乳首を爪で引っかく。
背後から耳元を舌で舐める。


「やっぱりやだ、ここじゃ集中できないよぉ」
 「でも俺はここでしたいな・・・思い出にもなるよ」


流し台の上だけに灯る小さい蛍光灯。
俺は瑶子を流しにもたれさせ、左足を大きく上げさせた。

じっとりと濡れている瑶子自身の茂みに顔を埋める。
愛液の匂いが俺の鼻孔をくすぐる。


 「ううん、変な・・・感じだよ・・・」


俺は丹念に瑶子の突起を舐め上げ、流し台に手をつかせた。
立ったままのバックで瑶子と一体になった。

冷たい金属の流し台。
徐々に力の抜けていく身体を必死に支えようと、瑶子は踏ん張る。

不意に動かした右手が、流し台に置いてあったビンを下に落とした。
割れなかったものの、大きな音を立てたビンにハッと我に返る瑶子。

拾おうとするが、俺は腰を引き付けて抜かなかった。


「ダメ、娘が起きちゃうよぉ・・・」
 「じゃ、そろそろ奥へ行くか」


その後、俺達は静かに、そして深く何度も達した。



全てが終わった後、瑶子が言った言葉がある。

 「私ね、Hなんて一日に一回でいいと思ってたの。
  平良と出会って、抱かれてからビックリした・・・
  だって、平良も私も、何度も求め合っちゃうでしょ?
  私って、本当は凄く淫乱な女なんだ、って思っちゃった・・・」


俺はこう答えた。

「それが気持ちの相性って奴じゃないのかな?
 俺も瑶子に、何度も求めちゃうでしょ。
 無理してる訳じゃないのに、次々とアイディアが浮かぶんだ」


瑶子は遠くを見つめて、漏らした。

 「心にも身体にも、相性って本当にあるんだね・・・」




帰り。
コンビニの駐車場に送ってもらう時、瑶子は呟いた。

 「私がもう10歳若かったらな・・・平良と釣り合うのに」


一呼吸置いて、俺は返事した。

「今だから出逢えたんだよ。今だから素直に求め合えるんだって。
 だから俺は、今、出逢えて良かったと思う」


瑶子は静かに何度も頷いた。





1週間後。
瑶子からメールが届く。


 『ごめんなさい。今週は女の子なので会えません。』


俺は返事した。

 『瑶子だったら、別に会うだけでも構わないよ。
  もし都合良ければまた返事ください。』


暫くして、瑶子から返事が来た。

 『だって、会ったらしたくなっちゃう。
  だから来週にして欲しいな。ゴメンね』


男にとって、女から求められるのは至福の瞬間だと思う。
この一言だけで満足した俺は、余裕をもって一週間を過ごした。

本当に単純な男だと、当時を振り返る今でも自分で思う。




満を持しての1週間後。
事件が起こった。



いつものように瑶子と風呂を浴び、濃厚な時間を過ごした後。
物音に気付いたのか、娘の部屋から物音が聞こえた。

まったりと横たわっていた瑶子は一瞬にして立ち上がり、
全裸の上からスウェットを着込んで娘の部屋に向かう。


独りになった俺は、何も出来ない。
暫く横になって待っていたが、意識が途切れた。


気づいた時は、サッシから陽光が漏れていた。
朝になっていたのだ。
瑶子が帰ってきた様子はない。

俺は時間を確認する。
朝6時前。
仕事の疲れと昨夜の疲れで、俺は寝込んでしまった。


俺はすぐに服を着た。
そしてすぐに部屋を出る。
しかし瑶子を呼ぶ事は出来ない。
彼女の携帯も布団脇にある。

この物騒な時期に、鍵を掛けないで部屋を女と子供だけにする。
俺は迷ったが、そのまま部屋を出た。

何より怖いのは、娘に俺の存在を知られることだった。

深い事情など知る由もない小学3〜4年生の娘が、
何かの拍子に、娘が父親となる男に俺の事を話してしまわないか、だ。

俺は15分ほど掛けて歩いてコンビニの駐車場へと向かい、
車に乗り込んでから瑶子の携帯にメールを打つ。


 『黙って部屋を出てゴメン。
  またメールを送ります。』


その日の夕方、瑶子からメールが来た。

 『娘の部屋で一緒に寝ちゃってました。
  気が付いたら朝7時過ぎでした。
  本当にごめんなさい。怒ってない?』


俺は怒ってないから安心して、という旨の返事を送って、携帯を閉じた。





<以下次号>








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2004年03月07日(日)

午前1時の情事。 〜skinless〜



<前号の続き>




俺は振動するローターをさらにぬかるむ奥へと滑らせた。


 「ああっ、はぁぁん、んんあぁぁ・・・」


瑶子の突起に触れた途端、あられもない声を上げ、シーツをきつく掴む。


「どう?」
 「いい、いい、気持ちいいのぉ・・・」

「声、聞こえるよ?」
 「ダメ、言わないで・・・我慢、でき、ないの・・・」


瑶子のバスタオルの端を口に押し込む。
瑶子も噛み付き、必死に声を殺す。
しかし殺し切れない、あられもない声がどうしても漏れる。


俺はしばらくその場を刺激し続ける。
瑶子は開いた両腿や腰に力が入り、足の指先までも凄まじい力が入っている。
すでに瑶子の深奥から溢れ出ている、半白濁の愛液。
粘りの少ない液体は、もう俺の受け入れを待ちきれないサインだ。

俺はローターを止め、瑶子の股間に顔を埋めて、溢れ出る愛液を舐め取った。
今度は無機質なプラスチックと違い、同じ肉質の刺激。

瑶子自身の表面を右往左往する俺の舌先。
突起を舐め上げ、愛液を吸い、わざと音を立てる。

快楽に身をよじる瑶子はまさしく溶け落ちる寸前で、半ば錯乱状態になっていた。

男ではここまで快楽を味わう事が出来ない。
我を忘れそうになり快楽に身を委ねられる女の性が羨ましく思えた。

小さい痙攣。
瑶子は間もなく、静かに達した。


「もう満足した?」
 「・・・」


俺は耳元で囁くと、瑶子はくすぐったそうに首をすくめ、横に振った。


「まだ足りないの?」
 「だって・・・」

「だって?」
 「・・・女に言わせないで・・・」

「言わないと分からないよ」


言葉での愛撫。
こんな意地悪もまた、味付けの一つである。

瑶子はいつの間にか俺自身を手にとって擦っている。


「これが、足りないんだ?」
 「・・・うん」

「欲しい?」
 「・・・うん」

「何が?」 
 「・・・これ」

「だから言って」
 「・・・言わないとダメ?」

「ダメ」
 「・・・言わないとくれないの?」

「あげない」
 「・・・じゃ、どうするの?」

「・・・こうしちゃおうかな」


俺は再びローターのスイッチを入れた。

シーツの上でピンクの玉が躍る。
低めのモーター音が響く。

瑶子の脳裏で強烈な快感がフラッシュバックしたのか、
このモーター音を聞いただけで吐息を漏らし、身をよじった。


「これでまたイカせちゃう」
 「ダメ・・・」

「だからいつまでもあげない。俺、隣りでオナニーしてるよ」
 「・・・やだぁ」

「だからぁ、何を、どうして欲しい?」
 「平良の・・・おチンチンを・・・」

「どうして欲しい?」
 「入れて・・・入れて、欲しいのぉ」

「誰の中に?」
 「私・・・瑶子、瑶子の中ぁ・・・」


何とか言えたものの、恥ずかしさから瑶子は目を合わせなかった。


「よし、今度は、俺の目を見て言って」
 「・・・もう許して」

「言えないと、萎えちゃうよ」


瑶子はこの焦らしに耐え、ついに俺の目を見ながらすべてを口にした。

ご褒美に、頬へkissをする。
そして瑶子の両腿を開き、俺自身を瑶子自身に差し入れた。


 「ああ、奥なのぉ、奥まで入れてぇぇっ・・・」
「瑶子、気持ちいい?」

 「うん、うん・・・」
「実はね、今、付けてないんだ」

 「・・・本当?」
「中では出さないから、安心しな」

 「平良と私が、本当に繋がっているんだね」
「・・・うん」

 「・・・嬉しい!」


俺の言葉に、瑶子はさも嬉しそうに俺にしがみ付いて来た。

どんな反応を見せるか楽しみだったが、意外な行動に俺の方が驚いた。



<以下次号>








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2004年03月06日(土)

午前1時の情事。 〜小さい箱〜


<前号の続き>


次の水曜日。深夜11時過ぎ。
やはり湿気がじっとり纏わりつく、熱帯夜の夜。

先週と同じコンビニの駐車場で、見覚えのある軽自動車にもたれた
瑶子が待っていた。

車から降り、ドアを締める音で俺に気付いた。


「おまたせ」
 「平良・・・嬉しい!」


瑶子は駆け寄り、俺の首筋に抱きついてきた。
俺も細い身体を抱き締め返す。


公団住宅までの短いドライブの後、瑶子が提案してきた。


 「ね、ちょっと散歩しない?」
「おお・・・いいよ・・・」


瑶子は狭い駐車場に器用に車を入れた後、
俺の腕を取って、公団住宅周りの遊歩道に連れ出した。
公団周辺はちょっとした遊歩道があり、その通り道に
ここの集会場や幼稚園、小学校が点在する。

途中の自販機で、俺は缶コーヒーを所望する。
瑶子は缶の紅茶を同様に買い、二人で飲む。

冷たいブラックコーヒーで喉を冷やしながら歩く。
嬉々としてはしゃぐ瑶子の姿が可愛い。

きっと、こんな簡単な時間も過ごせなかったのだろう。
彼女にとって、単なる散歩でも新鮮なデートだったようだ。


先週と同様に部屋に忍び込み、今度は当たり前のように風呂へ向かう。
瑶子はたっぷりとボディソープを泡立てて、俺の身体を流してくれる。

瑶子はふざけて自分の胸にソープをつけて、俺の背中に当てて擦る。
凝り固まった乳首の感触がくすぐったい。


「どこで覚えたの?もしかしてそういうお店で働いてた?」
 「えへへぇ、内緒!」
 

ただその業のぎこちなさから、彼女は職業にしていないのが分かる。

今度は俺が瑶子の身体を洗わせてもらう。

これも彼女の性感帯を探し出す愛撫術。
時折、さらにくすぐったそうに身体をくねらせる瑶子。
そのポイントは、後でじっくり攻める個所となる。


風呂から上がり、また布団を敷き、二人で抱き合う。

汗ばんだ肌から、かすかに甘い香りを嗅ぎ取る。
ボディソープの人工的な香りではない、匂い立つ女のフェロモン。


俺はジーンズのポケットから小さい箱を取り出した。


 「どうしたの?」
「瑶子にプレゼントを持ってきたんだ(笑)」

 「え?」
「開けてみてよ」


瑶子が訝しげに箱を開けた。
現れたのは白いコード、ちゃちなコントローラー、ピンクの楕円の玉。


 「これって、おもちゃ?」
「そう。瑶子ならきっと喜んでくれると思ってね」


今日のために、俺が買ってきたピンクローター。
瑶子が不安そうな表情を浮かべる。


 「でも使ったことないし・・・」
「へぇ、だから俺と使うんだって」


俺は瑶子にコントローラーのスイッチを入れさせた。
ヴィーン・・・とモーターが作動する。
その先のピンクの玉を、さらけ出ていた瑶子の乳首に押し付けた。


 「キャッ」
「どう?」

 「くすぐったい」
「これが瑶子自身に触れたら、どうなるかな?」

 「え?・・・」


想像したのか、照れて俯いてしまった瑶子。
俺はそっと瑶子の方を抱いて、口付けをして寝かせた。

唇から耳、首筋、顎先・・・舌先や唇を滑らせて、瑶子の腿の奥に指を這わせた。
薄めの茂みの奥は、すでに潤っている。


「もう濡れてる・・・いつからこうなってた?」
 「・・・わかんないっ」

「さっきの、想像してからだろ?」
 「・・・意地悪ねっ」

「あ、図星だ?」
 「・・・イヤッ」


俺はピンクローターを手にとり、スイッチを入れて瑶子の茂みに押し付けた。


「どう?」
 「・・・」


戸惑っているのか、無言だった。
実はわざと瑶子の突起から外している。




<以下次号>








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2004年03月05日(金)

午前1時の情事。 〜私の番〜


<前号より続く>



俺は瑶子をうつ伏せに寝かせて、俺はグラスの氷を咥えた。

そして咥えた氷を瑶子の腰から尻に掛けて滑らせる。


 「はあぁぁぁん・・・あ、ああ・・・」
「冷たい?」

 「冷たい!けど・・・変な感じ」
「変な感じ?止めようかな?」

 「もっと、して・・・」


『ナインハーフ』という古い映画があった。


男が氷を相手の身体に滑らせる愛撫のシーンがあまりに有名で、
過激な性設定や性描写から、その当時も問題作として扱われた。

それゆえ今でも名前が残るほどの作品だ。


あの筋書きは、あの愛撫シーンは、あながちデタラメではなかったようだ。
瑶子は丸い尻を浮かせ左右にくねらせて、氷の愛撫に答えている。

そしてその滑らせた氷の跡に残る解けた水を舐め、吸い取るように
俺の舌を這わせる。

瑶子の性感帯を探し出すように、擽るように。


冷たい氷と、温い舌先。


瑶子は無意識だろうか、うつ伏せで腿を開き気味にして
より深く快楽を受け入れようとしている。

氷を再び口に含み、乳首を吸い、転がす。

敏感な部分だけに、その冷ややかな刺激だけでも
シーツを鷲掴みにして、喘ぎ声を殺して興奮している。


 「こんなの、初めてぇ・・・いいのぉ」


瑶子だけじゃない。俺だってこんな愛撫は初めてだ。


Sexに大切なのは、直接のいわゆるテクニックだけでない。
応用力や探究心、そして創造性が大切だ。

そしてこの発想を導き出すのが、『相性』なのだろう。

単に女の身体で男自らの肉欲を満たす行為がSexではないのだ。
相手の心身を思いやり、相手にさらに深く快楽に酔うよう導くのが、
きっと人間のSexというものだと思う。


 「平良、今度はあなたが仰向けになって」


完全に上気した瑶子は俺にそう促す。
俺は言われる通りに仰向けに寝た。


 「今度は私の番なんだから・・・」


瑶子は俺の腰の上に跨り、自ら俺自身を手にとって、腰を沈める。
いわゆる騎乗位だ。

俺自身が彼女の深奥を突く。
瑶子はうめきながらゆっくり背を反らせた。
軽くウェーブの掛った髪がふわっと背中に流れる。


 「私が上だとね、男の人が喜ぶの・・・」
「凄く気持ち良いよ・・・瑶子は?」

 「ああん、聞かないで・・・」
「やだ、言ってくれなきゃ萎えちゃうよ」

 「イヤ・・・」


瑶子は身体を前に倒し、俺の耳元で囁いた


 「凄く気持ちいい・・・よ」

 
俺は瑶子の腰を両手で掴んで、俺自身を下から二度三度と突き上げた。


 「ふぅ、イヤぁ!」
「嫌?」

 「・・・嫌じゃないけど、イヤ・・・」


冷静さを欠く瑶子の姿が可愛い。
瑶子は再び騎乗位で背筋を伸ばしたものの、また枝垂れかかる。


 「もう・・・ダメ、力入んない」


俺は繋がったまま体勢を入れ替えて、俺が上になった。
瑶子の両腿を大きく持ち上げ、屈曲位になる。

快楽の度合いに合わせて、瑶子の鳴き声が一段と強くなった。 
俺も瑶子に突き入れる俺自身が無意識に速くなるのが分かる。


 「ダメェ、また、またイッちゃう・・・」
「何度でもイッちゃえ、俺なら幾らでもイカせてやるから」

 「平良、一緒に来てぇ・・・私に出してぇぇぇっ・・・!」


瑶子は俺と一緒に達したがっていた。
俺は一段と深く、早く律動した。
スキン越しに、俺自身の亀頭のくびれが瑶子自身の粘膜を、
潤沢な粘液を、柔らかい肉を擦り上げる感覚が分かる。


 「ダメ、もう我慢できないぃ・・・!」
「まだ駄目だよ、俺はまだイケないから」

 「我慢できないよ、我慢できないよ!」
「我慢して、まだ絶対イッちゃダメ!」

 「・・・・ぁぁあ、もう、もうイッちゃうぅぅ!」


静かな部屋の中。
そう瑶子は一際高い声で絶叫した。
その声に感じた俺は、思わず暴発してしまう。

一緒に絶頂に達した。

俺の下で、数秒間の痙攣。

一時の静寂の後。
しばらく繋がったままじっと抱き合っていた腕の中で、
瑶子は再び声を殺して泣いていた。

どんな思いで瑶子は涙をこぼしたのか、
まだ薄弱で軟弱な生き方しかしていない俺には思いもつかない。

彼女の深く濃い人生の思いが詰まった雫が幾筋も目尻からシーツへ伝う。

俺は黙って抱く腕を強めた。

 「ゴメンね・・・」

瑶子はそう言ったきり、静かに涙をこぼし続けた。




 「大丈夫?帰れる?」
「子どものお使いじゃないんだから(笑)」

 「だって、遠いから心配なんだもん」
「大丈夫、遠いうちには入らないって言ったでしょ?」


瑶子の部屋からの帰り。
俺は再びコンビニまで送ってもらった。

約3分間の車中、そんな会話を繰り返す。 

そして俺は駐車場で車から降りた。


 「ねぇ、また・・・会ってくれる?」
「・・・そんな、こちらからお願いしたいよ」


瑶子の懇願に、俺はそう答えた。


「携帯の番号も分かったし、メールも送れるし。また連絡する」
 「いつくれる?」

「じゃ、帰宅したら『ただいまメール』送るよ(笑)」
 「それなら安心だね、待ってる(笑)」


濃厚な一夜だった。
午前4時半を過ぎた高速道路。
すでに明るくなっている界隈は、必要最小限の街灯だけが残り、
普段見慣れた街並みとは違って見える。

しかしたった4時間後には、今日の仕事が待っている。
心地良い疲れと、文字通りの罪悪感。


俺は帰宅してから約束通りメールを瑶子に送り、小一時間ほど仮眠する。
その日の仕事は、辛かった。


睡魔と格闘していた昼過ぎ。
瑶子からメールが届いていた。


 『無事帰ったんだね。お仕事お疲れさま。
  今日は昼まで寝ていました。
  今も平良との余韻に酔っています。
  また会いたいな・・・』


眠気が少し覚めた俺は、返事を打つ。


 『メールありがとう。
  ぜひまた一緒に楽しい時間を過ごしましょう。
  今度はいつ都合が良いのか、教えてね』


間もなく、再びメールが届く。


 『来週の水曜日。また遅くなるけど良い?
  私はその方が都合いいんだけど、平良が辛いよね?』


俺はこう返事を打って、携帯を閉じた。
 

 『じゃ、来週の水曜日の深夜に決定!』



<以下次号>








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2004年03月04日(木)

午前1時の情事。 〜醍醐味〜

<前号の続き>



そう言い終わらないうちに、傍らの瑶子がふと俺の口を塞いだ。
彼女自身の、柔らかい唇で。

俺の膝に向き合って乗り、俺をソファに押し込む。
俺は瑶子の細い腰に、腕を回した。

念入りなDeep kissは最も苦手だ。
俺も感じてしまい、相手を求めて俺自身が勃ってしまう。
恥ずかしいほど、俺のジーンズの中は瑶子を求めて硬直している。

それを感じ取ったのか、瑶子はソフトパンツ越しに
彼女自身の恥骨あたりを押し付けてくる。
瑶子自身に挿入するかのように、腰を前後に蠢かせる。

どれだけの時間、深く深く舌を絡め合っただろう。


瑶子は唇を離し、俺の左肩に顔を乗せる。
何度も何度も深く呼吸していた。
クーラーが音を立てて稼動しているのに、うっすらと汗ばむ俺と瑶子。


 「それ以上言わないで・・・また涙が出ちゃうから・・・」


俺と瑶子は、そのまま黙って抱き合い続けた。


 「ね、お風呂入る?」


落ち着いた頃、瑶子は唐突にそんな提案をして来た。


「え?いいの?」
 「私ね、男の人の大きな身体を洗うの好きなんだ・・・」

「い、一緒に入るの?」
 「嫌?」

「・・・俺は大好きだけど、瑶子の事が我慢できなくなるよ」
 「私だって平良だったら・・・どうなってもいいよ」


瑶子は俺から離れて、足音を殺して風呂場へ向かう。
そしてバスタオルを出し、俺に手招きをした。

いきなり一緒に風呂に入るとは、さすがの俺も予想していない展開だった。



風呂場は一切の灯りが落とされ、ほぼ真っ暗である。
曇りガラスの窓から、かろうじて街灯の明かりが差し込む程度である。

洗面台で、手探りで脱衣を済ませる。
脱いだ服を洗濯機の上に置き、ドアを開ける。

すでに全裸になった瑶子が、風呂を準備する。
うっすらと浮かび上がる、細い腰に丸い尻。
本当に四十路の子持ちかと見違うほどだ。
こんな女性が妻なら、きっと夫は自慢できるはず。

古い公団住宅の狭い風呂場で、俺を椅子に座らせて、
瑶子は俺の背中からスポンジで洗い出した。


 「気持ちいい?痒い所無い?」


俺の耳元で、瑶子が囁く。
俺は二度頷く。


髪をアップにまとめ上げた瑶子。
俺の背中から首筋、胸、足の指先から腿にかけて時間を掛けて、
丁寧に、それも楽しそうにくまなく磨いてくれる。

これが彼女流の愛情表現なのだろう、と思った。
俺の正面に回った瑶子は、今度は直接ボディシャンプーを手に取る。

背中から胸板、腰から足、手の指先まで一通り石鹸で洗い、
今度は照れ臭そうに俺の股間に手を伸ばし、俺自身を丁寧に洗い出した。
慈しむように、優しい指遣い。

くすぐったさと気持ちよさで、腰を引いて声を漏らした。
俺自身が再び反応を起こす。


 「もう、若いから元気良いねー」
「その台詞、ベテランの風俗嬢みたい」


二人でクスクスと笑う。
風呂場で声を出せば、寝ている娘を起こすかもしれない。
腹から湧き上がる声を殺すのに、苦労した。


風呂から上がり、俺は再びソファに座る。
壁掛け時計は、早くも午前1時を指そうとしていた。

汗が引く間、瑶子は押入れから布団を取り出し、シーツを敷く。
そして、グラスに入ったキャンドルを持ち出した。


「SM?」
 「違うよ。こういうの嫌い?」


天井の蛍光灯を消して、マッチでキャンドルに火を点ける。
小さい炎に瑶子の胸や腰のくびれが陰影となって浮かび上がった。

人間の肌の色を最も引き立てる照明は「炎の灯り」だという。

グラス越しの小さなキャンドルの炎がチラチラと揺らぎながら瞬き、
優しく照らし出す。


「でも、何だか手馴れているなぁ」
 「うふふっ、どう思う?」

「モテない女性じゃないだろうからね」
 「でも、今は平良だけだよ・・・」


その言葉の続きは、今度は俺の唇で塞ぎこんだ。

俺は全裸で横たわる瑶子を抱き締めた。
風呂上りの温かい身体。

とても40歳とは思えない肌の瑞々しさときめの細かさ。
俺の肌にしっとりと吸い付く。

俺は指先を瑶子の首筋から尻の割れ目へと、身体の上下に這わせる。

瑶子は眉を潜めて息を飲み込む。
感度は良好だ。


背中の肩甲骨のあたりに軽く指先を立て、背筋の方へ流す。
ピクッ・・・・俺の指先の動きに瑶子の全身が徐々に、また敏感に反応する。

二つの小さめの乳房を、俺の二つの掌で脇から揉みあわせる。
あうっ・・・と小さく喘ぎ声をあげる。


「痛い?」
 「・・・」


俯く瑶子は、恥ずかしそうに首を横に降った。

見た目の若さは瑶子の持つ、絶対的な武器だ。
そのまま指先で乳首を摘み、もみ転がす。

大きく息を吐き、顔を背けて、そして背を反らせて反応する。
予想を越える大きい反応に、俺自身はさらにいきり立つ。

乳首をもてあそんだ後、俺は瑶子をうつ伏せにさせた。
すらっと伸びた瑶子の背筋に沿って、舌先を這わせた。

自ら敷いたシーツを掴み、顔を押し付ける。
声を殺して耐えている。

そして腰から尻の辺りを爪を軽く立ててみた。


 「はぁん・・・」


とうとう堪えきれずに漏れる声。
俺は慌てて瑶子の口を塞いだ。
顔を見ると、なぜか涙目になっている彼女。


 「何だか、何をされても電気が走るの・・・凄いのぉ」
「今までもこうだったんだ?」

 「ううん・・・信じられない・・・もう我慢できないよぉ」
「何が?」


瑶子は恥ずかしそうに、無言で俺の右腕を自分の股間へ導く。
ぬるい粘液が瑶子自身からたっぷりと溢れ出している。
すでに尻の肉にも糸を引く雫が垂れ落ちていた。


「もう、こんなになってるのかぁ」
 「声もね、いつもなら出さなくても平気なのに・・・」

「彼と?」
 「・・・・だけじゃないけど・・・でも違うの」


瑶子の男性関係は、やはり地味では無さそうだ。
そんな俺も彼女の文句は言えないが。


俺は右手の中指を瑶子の茂みに差し入れる。
濃い目の茂みと僅かな肉にうずもれた突起を探し出し、触れる。

大きく息を吐き、漏れる声を僅かに残った理性で殺す。

指を細かく動かし、突起を集中攻撃をする俺。
瑶子は浮き上がった腰を上下にひくつかせ、必死に耐える。

快感に耐える女の横顔ほどエロティックなものはない。


 「ね、平良の・・・食べたいな」


耐え切れなくなったのだろう。
今度は瑶子から俺を仰向けに寝かせ、俺自身に喰らいついてきた。

柔らかな舌と唇で俺自身の亀頭を、裏筋を丁寧に攻める。
素直に心地良い。


 「また元気になったね・・・まだダメ?」
「何が?」

 「・・・欲しいの、入れて欲しい」
「もし入れちゃったら、どうなるかな?」

 「・・・分からない、狂っちゃうかな?」
「狂っちゃうんだぁ・・・淫乱なんだね・・・」

 「だって・・・だって・・・もう嫌ぁ・・・」
「いいよ、狂っちゃえ」


こんな言葉攻めに身悶えするほど激しく反応する。
性感に、性欲に素直な熟女の醍醐味。
若いだけの女では、味わえない甘味である。


俺はスキンをつけて、焦らしながら正常位で瑶子と繋がった。

瑶子の深奥へと、ゆっくりと突き入れる。

その動きに合わせて、瑶子は大きく息を吐きながら全身を反らせた。


俺自身と、瑶子自身がピッタリと重なり合う錯覚を覚える。
俺も恥ずかしながら、気持ち良さに思わず声を漏らしてしまった。

俺自身にピッタリと吸い付き、奥から愛液が溢れてくるようだった。
突き入れるごとに瑶子自身が淫靡な音を立て出した。

瑶子は無意識に近くにあったタオルを口にくわえた。
思い切りタオルを噛み、必死に迫り来る未知の津波に耐えている。


次に瑶子をバックにし、後ろから挿入する。
今後は少々乱暴な腰遣いに、瑶子が喘ぎ声が許されない場所を
忘れそうになっていた。


「はぅぅぅっ・・・・ダメ、イク、イク・・・!」
 「声出すと聞こえるぞ・・・タオル咥えて・・・」


瑶子はタオルを自らの口に押し込む。
声にならないうめきを残して、間もなく瑶子は崩れ落ちた。

俺はまだ果てていない。

力任せに瑶子の腰を掴んで引き起こし、今度は俺のペースで突き上げる。
強引に、だ。

瑶子は再びうめくような喘ぎ声を上げていた。
それから間もなく、俺も果てた。




汗ばむ俺達。
瑶子から離れた俺は、添い寝する。


瑶子の顔を覗き込む。

泣いていた。
小さい子どもがむずがる様に、タオルを目元に圧し当てて泣いていた。


「大丈夫?強引だった?痛かった?」
 「・・・」


瑶子は俺の胸元に顔を埋めて、ただ声を殺して泣いていた。


暫く休んでいた俺達。
ふと顔を挙げ、落ち着いた様子の瑶子がポツリと漏らした。


 「初めて・・・初めてなのぉ」
「何が?」

 「こんなの、こんな激しいの・・・」
「やっぱり痛かった?」

 「ううん、凄く、凄く良かった・・・」


自分が前戯やオナニーでなく、男とのSexで絶頂を感じた事。

自分がイッた後も、引き起こされて突き続けられ、
我を忘れておかしくなりそうだった事。

もう自分で自信の持てない身体で男に満足してもらえた事。

その他にも、幾つもある。


Sexで不安に感じていた、その全てが瑶子の脳裏によぎり、
何かが弾けて、感極まって涙になって表れたのだ。

俺は瑶子の流した涙の後に、下唇を這わせてみた。

ごく微かな塩味。
瑶子の愛液とよく似た味だった。
同じ女から流れ出た液体なのだから、当然なのかも知れないが。


暫く休んでいると、瑶子は疲れた身体を起こしてグラスにコーラを注いで
持ってきた。

渇いた喉に、強烈な炭酸が染み込む。
心地良い。

グラスに残った氷を見て、俺は次の手を思いついた。



<以下次号>







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2004年03月03日(水)

午前1時の情事。 〜醍醐味〜
<前号の続き>


錦を舞う夜の蝶から、家庭に尽くす主婦の鑑へ。


華麗な世界からの見事な変身。


その幸せは、突然崩れ落ちる。
その努力は、突然裏切られた。

旦那の浮気が発覚したのだ。
相手は20歳そこそこのホステス。
深い関係になり、相手が妊娠した事から瑶子にも発覚した。

それも過去に自分が勤めていた仕事の女ではないか。

旦那に全てを話していた。
彼は瑶子の、仕事としての過去は理解していたはずだった。

 
 「私ね、絶対に客とは寝ないって決めてたの・・・
  お酒を注いでも、同伴はしても、私は身体だけは別だと思ってた。
  旦那にも、その女にも何故?って気持ちで冷静でいられなかった」


瑶子は激しく動揺し、悩んだ。
問い詰めても語りかけても、旦那はのらりくらりと追及をかわし、
自分の都合が悪くなると居酒屋やパチンコへと逃げた。


自分が幸せな未来の青写真が、未来設計が揺らぐ。


家庭に尽くすために抑えていた自分の欲求。
家庭に尽くすために犠牲にした自分自身。
それは、一体何だったのか?


散々悩み、ストレスで髪が抜ける。
今まで張り切っていた母親業も手がつかなくなる。
心成らず、娘にも当たる機会が増えた。
理不尽な母の振る舞いに、動揺した娘が泣き出す。

どうにも見当たらない暗闇からの抜け道。

心身共に疲れ果てた瑶子は、彼の全てを許す代わりに離婚届を作成した。


 「それで、今の住宅に移り住んだの・・・」


昼夜に渡って仕事していたあの頃は、まだ未曾有の大不況の入り口だった。
それまでの勢いのままで、まだまだ街に元気があった頃だ。


今では40を過ぎた女に、小学生の子どもが養える程の収入がある働き口が
そう簡単に見つかる訳が無い。

昼は桃花台のショッピング街でパートの仕事を見つけた。
そして娘が寝静まった夜に、このテレコミのバイトを始めたのだ。


 「だから決めたの。もう一度結婚しようって。娘のために・・・」


結婚相談所に登録し、それなりの相手を紹介してもらう。
しかし現実は、思いのほか冷たかった。


 「バツが二つ付くと、よっぽどフシダラだと思われるのかな・・・」


紹介を受けるのは、残念ながら「それなりの男性」ばかりだったという。

部屋に遊びにきたこの日、俺は彼女にその紹介状を何通か見せてもらった。

顔写真、年齢、経歴、趣味、理想の結婚生活・・・
残念ながら、男の俺から見てもそれなりの相手ばかりであった。


 「『休日の過ごし方』で、ゴロゴロしてるとしか書かない男性に、
  私は娘とこの先、何を望めばいいのかな・・・って思う。
  そんな人と家庭を持っても、明るい未来が見えないの。
  でも私だって、きっとそういう人の一人なんだよね(笑)」


紹介状を覗く俺の傍らで、瑶子はそう言って、寂しく笑っていた。
電話で聞いていた声よりも、心なしか落ち込んでいる。


つい先日の事、瑶子との初めてのテレフォンSexの後。
擦れ気味の声で、瑶子はこう俺に切り出した。


 「私ね・・・平良に逢いたいな」
「俺に?いいよ、小牧でもどこでも出かけていくよ(笑)」

 「本当?でも遠いじゃない・・・」
「片道1時間程度なら、俺のお散歩コースだって(笑)」

 「でね、娘が寝てからだから、夜遅くなっちゃうよ」
「俺は24時間営業だから、仕事の時間以外なら動けるよ(笑)」

 「もう、調子良いんだからっ」
「瑶子だって昔は昼も夜も働いてたんでしょ?一緒だって(笑)」


俺は瑶子に会ってみたかった。
どういう立場でも、心を許して自分の真実を話してくれた女性だ。

おまけに、彼女は今まだ独身だ。
彼女と堂々と会うなら、今しかない・・・

指定された日・・・つまり今日。
俺は仕事を切り上げて、準備を整えて桃花台に向かったのだ。



ソファに深く腰掛けた俺の脇に、ちょこんと座る瑶子。
引越し直前の生活感の薄い部屋は、間取りより大きく見える。


「で、何故逢えるのが今日なの?」
 「彼が毎週木曜日に出張なの。だからその準備で水曜日の夜は絶対に来ない」


そう言うと、瑶子は俺に身を委ねてきた。


 「平良、私の事、ひどい女だと思うでしょ?」
「・・・ああ」

 「嫌いになった?」
「いや・・・全然」

 「なんで?」


少し間を置いて、俺は瑶子への思いを思い切って口にした。


「瑶子が本当は生真面目すぎるほどの人だって、話を聞いてて思った。
 ただ、今はこういう形でしか自分を取り戻せない人なのかなって」


気取って、分かったような口を利いてみた。

瑶子が若い頃から昼夜問わず働いていたのは、実家を支援していたから。
彼女自身も父親が捨てた母親に育てられたのだ。

苦しいはずなのに、辛いはずなのに、娘には一切感じさせなかった母親。
そんな母の苦しみを、母に気付かれないように理解していた瑶子。

男手に悩まされてきた、母子の複雑な双曲線。
それはそのまま今の瑶子の生き様に現れていた。

身勝手なだけの我が侭でフシダラなオバサンとは違う。


「だから、俺は頑張ろうとしている人を嫌いにならないよ。
 その代わり、早く生活が軌道に乗ると良いね・・・」




<以下次号>








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2004年03月02日(火)

午前1時の情事。 〜昼と夜〜
<前号より続く>



 「嫌ってもいいよ。だから今から私の話を聞いて欲しいの」
「何を改まって・・・いいよ、話してごらん」

 「私ね、28って言ったでしょ?嘘なの」
「そんな事なんとも思わないよ。俺、年上の女性好きだもん」

 「そんな年上なんていうレベルじゃないの」
「・・・30歳半ばくらい?」

 「もっと上。大台に乗ってる」
「・・・40歳?」

 「うん。ビックリしたでしょ?・・・騙すつもりは、無かったんだ・・・」


会社から一回り年齢をサバ読みさせられたいた。

そう言ったきり、瑶子は受話器の向こうで黙している。


人間、一番年齢を取らないのは『声』だという。
長年放映している人気アニメの声優など、揃って還暦を過ぎているではないか。
それまで俺も瑶子の年齢に、全く疑問を感じてなかった。


瑶子が不安を募らせていたのは、それだけではなかった。

過去の経歴も、今の生活の現状も、覚悟を決めた彼女は時間をかけて、
洗いざらい話しきった。


 「・・・もう私を嫌いになったでしょ?」
「なぜ?」

 「こんなオバサン、平良にはもう相手にしてもらえないから・・・」
「そんなこと無いよ、俺は全然大丈夫だって!」


もう俺もこんな遊びにも慣れている。

俺にとって若作りなど、もう嘘という枠にも入らない。
それも自らの意思や悪意で吐いた嘘ではないのだから。


ただ、瑶子の言いたい事はそれだけではなかった。
 

すでに年上の婚約者がいる事。
その彼との結婚が年末に決まっている事。

さすがに俺も驚きを隠せなかった。


「・・・じゃ、聞いてもいい?」

俺は瑶子に尋ねた。


「婚約者がいるのに、なぜ他の男と遊ぼうって思うの?」
 「・・・不安だから、なのかな」

「不安なの?」


たった一言で表したが、瑶子は悩みつつも言葉を選んで、
さらにたっぷりと時間を掛けて様々な思いを口にした。


彼女を悩ませ、不安にさせる大きな問題があった。

その一つは、彼女自身が二度結婚に失敗している事だった。


一度目の離婚は、言わば若気の至り。
恋愛の延長線で籍を入れたのだが、夫婦とも遊びたい盛りの年齢だった。
彼から受けた理不尽な束縛に耐えられなかった瑶子は、早々に離婚する。


二度目は尽くしてきた旦那の裏切り。
順風満帆だった結婚生活と、突然の浮気発覚。
妻として、女として自信を失った瑶子は、まだ幼い愛娘と共に
温もりを失った愛の巣を出た。



もう一つは、15歳ほど年上の婚約者の彼が瑶子を抱かない事だった。
彼は若い頃からの不摂生がたたり、早くから男性機能が弱くなっている。

併せて女体への興味関心も薄く、ごくたまに気が向いたときにしか瑶子に
触れてこない。

対して瑶子は、今が「女」として最も不安が募る年齢になった。
自らの肌の状態も、体形も自信が持てなくなりつつある。

このまま衰えを待つだけなのか・・・
もう女として誰からも相手にされなくなるのか・・・

それも相手は夫婦になる男。
濃厚なSexでなくてもいいから、ただその腕に抱かれていたい。
居場所が欲しいのだ。


 「もうこんな私になんて、気が向くことも無さそうだもんな・・・」

瑶子はそう声にならない程の呟きで寂しく嘲笑していたのを思い出す。


そんな心境を吐露した瑶子の言葉を、俺は笑い飛ばしてやった。


「そんなの、この世界じゃ嘘にもなってないよ」
 「なぜ?男の人って女の年齢や経歴って重要じゃない?」


嫌われてもいいから本当の自分を分かってもらいたい・・・
そんな心境で告白してきた瑶子だったが、俺の笑い声に泣き出した。


真剣だった彼女を、怒らせたかも・・・
さすがの俺も一瞬焦った。


「・・・怒った?ゴメンよ」
 「・・・笑われちゃったね、でも良かった・・・」


怒って相手が電話を叩き切られるんじゃないか・・・
瑶子が抱いていた最悪の予想は、呆気なく外れたのだ。
それが彼女の安堵の涙を誘い出したらしい。


「もう泣かないで・・・女の涙は嫌いなんだ(笑)」
 「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」


謝れば謝るほど、止め処なく流れる幾筋もの温もり。
漏れ出す嗚咽。
決して自分の男には見せない涙を流す瑶子に、
俺は女心の一つを学んだ気がした。


瑶子が年齢に対して不安を抱いていた理由がもうひとつあった。
若かりし頃の自分の活躍ぶりと現状とのギャップ。


昼は保険会社の渉外として、売り上げトップの営業員だった瑶子。

その月の売り上げを示す棒グラフ。
朝から会社を空ける男性でも、彼女を越えるものは現れなかったという。

細やかな気配り。朗らかな人柄。卓越した営業センス。

「彼女から商品を買いたい」と何人もの顧客に恵まれていた。


また休日の夜は錦のクラブでもトップクラスのホステスだったという。
高い酒と美しい衣装に身を包んだ彼女の会話が、男の虚栄心を擽る。

細やかな気配り。朗らかな人柄。男の下心を巧みに受け流す会話術。

様々な立場の男が、彼女を連れ出そうと誘いを掛けてきた。
そんな男の気持ちを傷付けないように、また焦らすように店に通わせる。


気力も体力も充実していた、若かりし頃。


 「その頃はもうバツイチだったのに・・・だからかな、みんな優しかったな」


そんな多忙さも落ち着いた30歳に、二度目の結婚。
その旦那との間に、間もなく愛娘も生まれた。

今度は家庭人として家族を内側から支えた。
昼夜に渡った過去の栄光を一切切り捨てたかのように、生活を変えた。
安いスーパーで服や食材を探し出し、毎朝毎夕愛娘を送り迎えし、
保育園などでもPTA役員を勤めた。


「クラブでの私を知っているお客さんは、きっと私だと分からなっただろうな」



<以下次号>








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2004年03月01日(月)

午前1時の情事。 〜熱帯夜〜
あなたにとって、一番大切なものは何ですか?
それは、本当に大切なものですか?
その大切なものを、あなたは本当に大切にしていますか?



過度の湿度が睡眠を妨げる、文字通りの熱帯夜。
七月の上旬、梅雨も終盤を迎えた頃だった。

フロントパネルの時計は、午後11時半を過ぎていた。

いつも利用するテレコミで話が盛り上がったバツイチ主婦・瑶子と逢う事になった俺は、
彼女が住んでいる小牧市の新興住宅地・桃花台へと車を走らせていた。


連日の激務で確かに俺の肉体は疲れていた。
それでも自らの基礎体力を信じて、突き動かされるように行動する。

それだけの価値がある女だと、信じていたからだ。
これからの、瑶子との逢瀬に胸をときめかせていた。



車のクーラーを強めにして、深夜の高速道路をひた走る。
両脇に一軒ずつあるラブホテルを眺めながら、東名高速・春日井ICを降りて
北側へ走ること20分ほど。

時折停まっては地図で位置を確かめながら、交差点の名前を確認しながら、
初見で不慣れな夜の道を突き進む。

目印になるピーチライナーの高架線を見つけ、それに沿って桃花台の中心部へ
向かっていった。



待ち合わせ場所に指定してきた街の中心部にあるコンビニの駐車場には、
もう深夜12時過ぎという遅い時間にも関わらず、何台もの車がある。

停まっている車種といい改造具合といい、入り口や窓脇にたむろする客層といい、
あまり健全な雰囲気とは言い難い。


 「あたしね、黄色い軽にもたれて待ってるから」


そんな瑶子の口約束を何度も何度も脳裏にリフレインしながら、
俺は駐車場に車を入れてハンドブレーキを引き、辺りを見回す。

駐車場脇の水銀灯に下に停まっていた、背の高いツーボックスのワゴン。
黄色い軽自動車である。

その大きいバックドアに可愛いキャラクターのシールが貼ってある。
一目で子供のいる家庭の車だとわかる。
その横にもたれて、一人の細身の女性が待っていた。


卵型の顔に目鼻立ちがくっきりとした、相当の美人だった。
軽いウェーブのかかった茶髪。
小柄だが、細いジーンズを履きこなす無駄のないスタイル。
一気にアドレナリンが駆け巡る。


蒸し暑いこの時期に不似合いなデニム地のオーバージャンパーを羽織る。
まるで得体の知れない男と初めて逢う、その不安から身を守る鎧のようだ。
どこか落ち着かない様子でたたずむ彼女。


俺は彼女に向かって二度三度とパッシングする。
気付いた彼女に、俺は右手を差し上げて微笑んだ。

俺に向かって安堵したような微笑みを浮かべて近づいてくる。


「待たせたね」
 「平良、やっと逢えたね・・・」


車から降りた俺。
ドアを閉めたと同時に、瑶子は人目をはばからず、いきなり抱きついてきた。
いくら何度も電話で話したとはいえ、初対面の俺にだ。

瑶子から漂う、芳醇なシャンプーの甘い香りを胸一杯に吸い込む。
思わず細い身体を抱く腕に力を込めてしまう。


 「ゴメンね・・・遠かったでしょ?」
「いいや、これから慣れれば、何の問題も無いよ(笑)」


俺の自宅から、瑶子の住むこの街まで、高速道路を利用して約1時間。
営業車で走り回る俺としては、これしきの距離など遠いうちには入らない。


 「じゃ、車をここに停めて、私の車に乗ってくれる?」
「・・・えっ?」


瑶子の全く予想外の言葉に、俺は思わず聞きなおしてしまう。

彼女が住む古い公団住宅では、近年の住人の増加で駐車場の余裕が無いそうだ。
よって、住人以外の車は路上駐車になる。
それに加え、最近駐車禁止の取り締まりも厳しくなったそうだ。

そのためにも、車をここに置いて行くのがベストだという。

俺もこのコンビニの下品な客層もあって、その決断に多少迷ったものの、
ここで車を停める事にした。

俺は車からカバンだけ取り出し、しっかりとロックを確認する。
エンジンを掛けて待っていた瑶子の車に乗り込む。
車内は幼い娘のものらしきぬいぐるみやアクセサリーが点在する。


 「ゴメンね、とっ散らかってて」


そう気を遣う瑶子。
俺は笑って受け流す。
子供のいる家庭の車なのだ。仕方ない。

キーを差して回し、シフトレンジをバックに入れ、静かに車を出す。
信号待ちの時間も含めて、約2〜3分間のドライブ。

ふと右に顔を向けると、流れるオレンジの街灯に次々と照らされる瑶子の顔がある。


 「何?顔に何かついてる?」
「いや、こんな顔した女だったんだなぁって思ってね」

 「恥ずかしいじゃない・・・」


照れて笑う瑶子の表情が印象的だった。


 「うちね、ここよ」


俺は顔を上げて景色を見た。
暗闇の中でほのかに光る、必要最小限の街灯。

ここがその公団住宅のようだ。
器用に狭い駐車場へ乗り入れ、俺と瑶子は車を降りた。

熱帯夜の、粘り気すら感じる湿気を帯びた熱気が一気に俺達を包む。
瑶子は俺の腕を取り、組みつく。
その肌には、ジンワリと滲んだ湿り気を感じた。


素人目に見て分かる、古い作りの4階建ての公団住宅。
その4階に瑶子の自宅がある。
ローマ字で彫ってある表札が掛っていた。

瑶子はそっと俺を制し、ここで待つように囁いた。

静かに鍵を差し込んで右に回し、音を立てないように鍵を開ける。
先に瑶子がこっそりと部屋に入り、娘が起きていないか部屋中の気配を察した後、
俺を招き入れる。

俺も音を立てないよう、細心の注意を払って靴を脱ぎ、お邪魔した。


真っ暗な部屋。
瑶子が足音を立てずに居間に立ち入り、壁のスイッチを入れる。
天井の蛍光灯がちらついて点灯し、部屋の様子が明らかになった。

襖を取り払った和室に絨毯を引いた空間。居間だった。
俺は脇にあるソファに座った。


瑶子は戸棚からグラスを二つ出し、冷蔵庫から麦茶を入れてくれた。


 「今ね、少しずつ引越しの準備をしているの。ここも散らかってるね」


小声でそんな事をいいながら、今の状況を説明してくれる。
実は、瑶子は再婚に向けての準備の最中だった。

俺は、実はこの時点で瑶子の真意が解からずにいた。
彼女や娘にとって大切な時期に、テレコミで出逢った俺なんぞを部屋に招き入れる。

本来ならば、再び訪れる幸せに直向きになっても良いはずなのに。
この後の展開は、男と女である限り、互いに語らずとも理解しているのに。

俺は不思議な謎解きを始めてしまった。

そんな部屋を一通り見回したあと、俺は瑶子に尋ねてみた。


「もう新居は決まっているの?」
 「うん、でもいきなり一度に運ばすに、少しずつね」

「でも娘さんの学校だってあるでしょ?」
 「もうすぐ夏休みだから・・・その間で必要なものは移してしまうつもり」

「そうか・・・じゃ俺がここにくるのも、あと僅かなんだね(笑)」
 「でもね、ここは暫く置いておくつもりなんだ」

「そうなの?じゃ今後は、もしかして浮気用?」
 「・・・平良のために取っておこうかな?(笑)」

「嘘つきだなぁ(笑)」



ほんの数日前。
俺とテレコミを通じて知り合い、随分打ち解けた後のことである。


瑶子は受話器の向こうで、夜中なのに声をあげて泣いていた。
俺はただ黙って、瑶子が泣き止むのを待つしかなかった。



会社に雇われた『テレコミレディ』という職業上、彼女達は会社から与えられた
プロフィールで客と話を進めていくのが前提となる。


若い主婦を望んでいる客には「今回は25歳の子持ち主婦で通して下さい」、
この老人は未亡人希望なので、「38歳の未亡人でやってください」
・・・などという具合だ。

話が上手くて機転が利く瑶子は、客からの多様多彩な要望を叶える為に
会社から相当無理な条件を与えられたらしい。
会社の人材不足を補う、小手先の工夫だ。


『第二の自分』といえば聞こえも良いだろうが、それは「嘘の自分」である。
職業上、無粋な客も多い中でその嘘は女性を保護する砦でもあるが。

ただその嘘も、大きく偽れば偽るほど精神的な負担も重くなる。


瑶子は電話で話すうちに、俺の事を相当気に入ってくれたそうだ。
しかし、俺への「条件」が「嘘の自分」となって彼女の首を絞め続けた。


瑶子が泣いた、その夜。
偽りを貫き通す事に、もう疲れていたと呟いた。
その他様々な不満が溢れ出て、彼女の自制心を超えて止まらなかったのだ。


俺に対しての瑶子は「28歳、子どもなしのバツイチ主婦」ということになっていた。
仲良く話をしていく間に、彼女の好意と反比例して嘘への不安が募っていく。

俺も瑶子の事が気に入っていた。
しかし彼女からすれば、俺は「嘘の彼女」を気に入っていることになる。


本当の自分と、嘘の自分は違う存在ではないか?
嘘の自分を気に入った、という事は・・・本当の自分は受け入れられないのか?

彼女が抱き続けていた不安。

ふとそんな言葉を口にした彼女に、俺は答えを出した。


「嘘じゃなくて、ただそういう設定であるだけなんだし、気にしないで。
 本当の自分を勇気を出して告白してくれたことが嬉しいよね。
 例えどんなあなたでも、俺はそんな瑶子の事が好きだよ」


そんな偽りで塗り固めていた自分の事を受け入れてくれた、
という不安からの解放から、強く張り詰めていた心の糸が音を立てて切れた。


 「ねぇ、じゃあ本当の事を全部話すね。
  だから、私の事、嫌になってもいいよ・・・」


これだけ仲良くなったら、是非逢いたいね・・・という話を切り出した頃。
覚悟の告白が始まった。



<以下次号>








↑エンピツ投票ボタンです。今回は12話構成でお送りします。



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