un capodoglio d'avorio
2001年11月17日(土) |
自転車キンクリートSTORE 「第17捕虜収容所」 |
新宿紀伊国屋サザンシアターにて観劇。 あんまし好きになられへん劇場やなあ、ここは。 何でやろ?
ジテキンは以前に同じくプロデュース公演で佐々木蔵之介主演の「マクベス」を観て以来二度目。 基本的にはウェルメイドな仕上がりだが後味はそれほどすっきりしたものにはしたくない。 と、言うのがドカのジテキン演出・鈴木裕美に対して抱いているイメージ。
ストーリー。 この話って、実は昔、映画になっているらしい。 ドカは映画には疎いのでよく知らないのだけれど、いわゆる名作とのこと、ふうん。 第二次世界大戦中、ドイツのアメリカ人捕虜収容所が舞台。 同室になった彼等は厳しい収容所生活を続けていく中でも、 ささやかな幸せをお互い大切にしていた。 しかし、完璧だったはずの脱走計画が元から漏れていたとしか考えられない結果に終わるなど、 次々と納得の行かない事件が起こり、どうも同室の捕虜の中にドイツ人のスパイがいる! ということになり、段々空気が殺気だっていく。 そのうち一人が皆から嫌疑をかけられて・・・という話。
私が今回、この芝居を観にいくと決めたポイントはいくつかあった。
1 ジテキンへの何となくな信頼/ 2 プロットが何となくミステリーぽくて興味そそられる/ 3 役者!
ということなんだけど、1については、ウェルメイドに分かりやすい仕上がりはさすがだなあと感心 (後味はさすがに引っ掛かりを残すのだが・後述)。 2についてはそれほどミステリー仕立てでは無く、じっくり役者芝居を見せる脚本になっていた。 そして3の役者にかける期待・・・ 第三舞台の京晋佑に(元)つか組の山本亨、それに「飛龍伝」で山本とコンビを組んだ樋渡真司。 この三人が出るだけでもう、観にいかなくちゃな興奮るつぼドカだった。 結果から言うと、少しパワーダウンかな? みんなそれぞれホームグラウンドの鴻上演出やつか演出では、 圧倒的なテンションとスピードを見せてくれる人たちなのだが、 やはり「一応まとめとくか」的ベクトルを持つ鈴木演出だと、 彼等の激しさはバーストするレベルには達しないのな。 もちろん演出はそこのレベルをピンポイントで狙っているのだろうし、 つかや鴻上がいま、決してシーンにて華々しく君臨しているわけでは無いことを鑑みると、 むしろジテキンが正解なのかも、と言う気にもなる(実際普通に楽しめたし)。
でもな、悪く言えば中途半端なんよな、これって。 例えば「まとめ系」の極北には平田オリザという秀才がいて、 「テンション系」の極北にはつかこうへいという異才がいて、 ジテキンと鈴木さんてばまん中辺りで振動しているジャイロというか、 ぶっちゃけもっと三人をカッコ良く使ってほしいというか。
けれども、実は、この芝居で僕が予想だにしない唸らされるラストが鈴木の演出によってあった。 結局、捕虜達は真の裏切り者を発見しそいつを見張りに射殺させている間に脱走を企てるのだが、 その部屋の捕虜のリーダーが「彼も自分の仕事をただこなしていただけなのだ」 と、土壇場で裏切り者を切るのに躊躇を見せる。 しかし彼を見張りに射殺させなければ、その隙を信じて脱走を始めた仲間が見つかって殺される。 結局裏切り者を殺す決断をするその引き裂かれたリーダー役の最後の川原和久の表情は忘れがたい。
ジテキンは「後味がひっかかる」。 実に象徴的なラストシーン、ここは積極的に拍手を送りたい。
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