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2004年05月30日(日) 雲からのお土産

日に照らされた葉が緑色をして揺れていた。
見上げると太陽が葉と葉の間から顔を覗き、
照れ隠しなのか見上げた僕の目を痛めつける。

太陽を手で隠してもう一度空を見上げる。
青色のペンキで塗られた空の所々に白い船がゆっくり進んでいる。
その姿は優雅にのんびりと一秒一秒少しずつ進む。

世界一周してまたここに来たときには飛び切りのお土産、待っています。



2004年05月24日(月) あと30秒・・・。

女はあと5分だけいてくれたら許すのに、と思っていた。
でも男は4分30秒で出ていった。
あと30秒だったのに。

女は願った、時計の針を5分30秒戻してほしいと。
1分なら、私が間を持たせるから、あなたは4分30秒待ってくれてればいーから。

そうしたなら何が起こっただろう?
ラブストーリー?
バッドストーリー?
神は女の5年後を見に行った。



2004年05月23日(日) ボート

待ち合わせは吉祥寺の公園口を出たところで。

午後一時を回った。土曜日ということもあって、ホームから降りてきた人達が改札を出るのに列をなして、一気に解放されたように切符を通すと思い思いの場所に散っていく。まるで夏の日の蟻を見ているかのように、巣から冬に向け餌を探しに行くそれに似ていた。働き蟻だとは・・・思えないけど。

5分過ぎて現れたのが、一人の女だった。
この場合女と言うべきか、元彼女と言うべきかは定かではないけど言うならば、別れてから3ヶ月も経っているのにグダグダ関係が続いて彼氏もいなくて暇している女、そう呼べば落ち着くのかも知れない。
すごく細い線で繋がれていて簡単に切れてしまいそうなくらい細いのに、何故かいつまでも切れずにお互いこうしてたまに会って食事したり、躰の接触を交わしたりしている関係に僕たちは慣れすぎてしまった。細い糸は決して太くはならないのに。そして互いに彼氏や彼女が出来たとしてもこの関係は続いて、特にお互いその事は全く気にしないのでは、まで思っている。
−友達のようで、違う。でも恋人でもない−
互いのテリトリーを汚さずに、互いが楽しめれば良いとある種の淋しさを感じながらこんな関係は3ヶ月も続いている。

「昼何か食べた?・・・どこかいこうよ!」
と、聞いたと思ったら自分で答えてしまった女、答える時間も与えずに。その後を付いていく僕・・・。こんな関係は3が月も続いている。
「どうせなら、外で食べようよ。公園行ってさ」
「でもな、今にも雨が降りだしそうな空だよ?」
「気にしない!大丈夫」

白とも灰とも言えないペンキが空一面に塗りたくてられて、太陽を隠し雲の上に溜まった涙達を流そうとしているのか、悪気もなさそうにペンキはじっくりと黒に染められていく。雲の流れは速くなっている。

ファーストフード店で持ち帰りしたハンバーガーを持って、公園に向かう。入るとギター1本抱えて歌っている人、その周りでその音を聞いている人、綺麗に響く6本の弦で奏でられる和音と、どっかで聞いたことのあるような、でもないような歌は雨が降り出しそうな空に響いて消えてしまう。
−恵みの雨か、憂いの雨か−
終わると見ていた何人かが拍手、パチパチと音がするのは川とぶつかる雨の音と重なった。

「ほら、やっぱり降ってきた、どうしようか?」
「あっち側にベンチあるでしょ?そこで雨宿りしながら食べよう」
急いで向こう側に移動するために早足で歩く。短い橋を渡る最中に川を覗くとコイがこっちを向いて何かくれ!と言わんばかりに口をパクパクさせながら、せがんでいる。それを無視してベンチを目指す。

「ここでいっか、座ろうよ」
ありがたいのか、どうなのか大きな木に守られて雨には濡れないベンチに座れることが出来た。大きな傘に守られて食事をする。ゆっくりと雨は落ちる。ボートに乗る人もいる位の弱い雨、それくらいの雨。

「彼女できた?」
「出来るわけないだろ」
「残念ね」
「私、いい人見つけちゃった」
「ふーん」
「ビックリした?」
「しないよ」
「先越しちゃうかもよ」
「お先にどうぞ、僕はゆっくり探すから」

この女が何を言いたいのかが全く分からずにただ、ハンバーガーを貪った。無邪気にはしゃいでいる子供は幸せそうで何より。僕もあんな風だった時代に戻りたいと思っては虚しいだけで、ただ水面に静かにぶつかる雨が優しく奏でるアルペジオのように僕のことを慰めてくれた。

「あれ、乗ってみない?」
「ボート?」
「そう!」
「そんな年じゃないだろ!」
「いいから!行こうよ」

小雨の降る中急いでボート乗り場まで急いだ。
何だか幼い恋愛小説にできそうな場面だ、恥ずかしさが先に出てしまって何だか上手く歩けなかった。早く!と手招きする女の後を追ってボートに乗り込んだ。

「ねえ、あの橋から、木々の間から、この公園にいる全ての人が私達の事をみたらカップルだと誰しも思うよね、しかもあのカップルは別れるぞ!って付き合って間もないカップル達の話題に出てきたりしちゃうんだろうね。私達は別れたカップルなのにね、別れてから乗ってるのにね」

「じゃあ・・・ここから初めてみる?新しく」

「だめよ、ここが始まりならもう既に終わってるのよ。ここでそんな約束した瞬間に終わってしまうわ。噂通りにこれに乗ったカップルは別れてしまうのだから。終わったままでいいのよ、お互いそれで幸せなのよ」

ボートはあてもなくひどく狭い川の上を漂った。浮かぶ落ち葉がボートの行き先を教えて、静かにオールが水面とぶつかる音が響く。
その音は始まりなのか、終わりなのか・・・どっちでも僕には不吉な音にしか聞こえなかった。

優しい雨は水面にまだリズムを刻んでいる。




2004年05月20日(木) 雨の日の想い出

たまにはエッセイを書こうと思う。Sayto〜じゃ書ききれそうにないから。
それと、雨の作品が多いようにも思えるNOTの作者の日常を知っていただく機会にもなるしね。

いつだったか忘れてしまったけど、その日は酒を飲んでいたのか終電の一本前の電車を待っていた、しかも20分程。でも寒かったという記憶はないからきっと冬ではなかった様に思う。
午後11時30分のホームには、いちゃついているカップル、足元の覚束ないサラリーマン、これから遊びに行くのか出勤なのか派手な格好をした女、様々な人生模様が映し出され乗るべき電車をそれぞれの時間を過ごしながら待っている。

そんな中僕はCDの音に揺れていた。ホームという大きな傘の中で雨から逃れ、暗がりの中ただ降り付ける雨粒を見ていた。それはとても柔らかく優しく僕を包んでくれる気がした、そんな雨だった。
自分の中で雨が優しさという感情で降っている気がしてすごく許せた。いつもは嫌いで憂鬱になってしまう雨が、その日に限ってはホームから見る雨の一つ一つが絵になっていて、優しくて、何故か笑顔になれた。

次の瞬間、自然と涙が出てきた。特に何か有った訳でもない、特別な日でもない、至って普通の日常と変わらなかった、でも僕は雨を見ながら泣いていた。それはとても自然でむしろ、逆らう事は不必要だった。

感情は自然だった、逆らえなかった。
日常の中で気に食わない場面なんていくつもあって、それを諦め半分で何食わぬ顔してやり過ごす自分がとても嫌で雨で全て洗い流したいって…雨が嫌いなんかじゃなくて、つまんなそうに生きている自分がとても嫌いで、雨に諭されて気がしたらもう、止まらなかった涙は。
卑下でも何でもなくて自分の生きている意味とか重みが無いって言うのが情けなくて悲しかった。

すべてに「ごめん」って謝った。

電車に乗ってからも涙は止まらなくて、さすがに恥ずかしかったから下を向いていたけど…。

許せた雨と
許せなかった自分。

雨の話を書くときは、こんな事があったと思い少し微笑んではあれから少しは大人になっているのかなって握っているペンを置いて一息入れる。

あの日以来、雨の日だからって嫌だとは思わない、むしろ自分を見つめ返す事の出来る神様からのプレゼントデイだと思って雨に感謝して笑顔で過ごす。
自分の嫌いな所ってたくさんあるけど、自分で理解して、自分のこと好きになってあげたいなって思う。自分の事好きじゃなかったら誰も自分の事好きになってくれないって思うから。

優しさと嫌悪の中で雨はゆっくり僕の事を冷静にさせてくれた。
雨と一緒に涙は止まった。



2004年05月12日(水) 星がキレイ。

久しぶりに口にした言葉が
「今日は星がキレイ」
だったから僕は
「そうだね」
言うしかない。

星空の下、少し風がぬるくて、背中が汗ばんでしまうような季節、
とぼとぼコンビニまで歩く。
それで僕はタバコを吸いながら、
歩いた。
でも、
本当は吸っていたのかもしれないし、
ふかしていたのかもしれない。
本当の所はどっちだっていいんだ。
「星がキレイ」
その言葉があれば。

返した言葉は
「そうだね」
煙を吐くと同時に言ったので
聞こえてないのかもしれない。
だから僕は、
言ったんだ。

「今日は星がキレイ」

すると、
お互い顔を見て
笑顔になったんだ。
僕らは笑った。

それだけで、
笑顔になった。



2004年05月06日(木) こたつの上で…。

こたつの上にはいくつかのみかんが置いてある。
丁寧に皮をむいて、それからまた丁寧に筋も取り除く彼女と、
大雑把に皮をむいて二口で食べてしまう僕。
彼女がようやく1つ食べ終わる頃には、僕が食べた皮だけの実のないみかんが3つ程、無造作に置いてあって僕は寝転んでTVを見ている。

「お腹すいたね」
と1時間程してから彼女はTVの方を見ながら僕に言った。そして、
「何食べたい?」
と聞いてきた。こう言うとき、手のかかるモノを注文したら何時間後に出てくるか分からない。僕は、
「簡単なもの」
と注文する事にしている。
きっとこうでも言わないと、料理がこたつに出てくる前に全てのみかんを食べ尽くして食事どころではなくなってしまうだろう。


こたつの暖かさと心地よさについ油断して寝てしまった僕を起こす彼女、
こたつの上には夕食が置かれていた。
「いただきます」
ゆっくり、食べよう。
ゆっくり、話そう。
食べ終わったら、またみかん食べよう。



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