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march forward.
りりかの独り言。

2001年12月26日(水) 痛みと痛み

観覧車から、もう2週間が過ぎた。相変わらず、夜になるとメールをあいつとするのは日課になっていた。
気がついたら、クリスマスも終わっていた。
イブのころからあたしは、右肺の痛みを覚えていた。仕事にカマ掛けて、病院など、行く気も無かった。
それでも、日に日にまして来る痛みは、限界に達していた。

あたしの異変に最初に気がついたのは、あいつだった。
「おかしくないですか?痛むんですか?」
「大丈夫だよ、すぐ治るよ、筋肉痛みたいなものかね?」
そんな会話を3日ほど前にしていた。

昼時の一番混む時間帯に、とうとう耐え切れなくなり、その場にうずくまってしまった。
そのまま病院へ。
後仕事が7時間残っているのに・・・あたしは痛みで朦朧となる頭の中でも仕事の事を考えていた。
売り上げの計算が残っているのに・・・今日は代行者が私しかいないのに・・・
痛みは、菌が肋骨に回ってしまったための炎症から来るものだった。
「仕事?もちろん、休まなきゃだめですよ」
ドクターストップがかかったにもかかわらず、仕事場に戻った。

店に戻ると、あいつが休みのはずなのに来ていた。「どうしたの?」
「どうしたじゃないですよ。売り上げ計算の出来る人間と、あなたの変わりになる人を探しました。少しづつみんなが出てくれるそうです。帰って寝てください!!」
「い、いいよ、大丈夫、痛み止めも飲んだから。」
「いい加減に強がるのはやめてください、好きな人が辛い時に頼られないようじゃ、俺も終わりですよ!」

何も言い返せなかった。必死になってあたしを守ろうとしているあいつが苦しいくらいに切なかった。
変わってくれた人たちにお礼を言って、帰ることにした。

夜中、メールが届いていた。
「あなたは、いつも強がっている。男なんかに負けない。負けたくない。私は女だけど、男以上の仕事をしてやる。そんな風な面を表にいつも出しているけど、中身は弱い、すぐに折れちゃうような人なんですよ、本当は。でも誰にも寄りかかりたくないと思っても、俺には甘えていいですよ、受け止めますから」

返事は、しなかった。出来なかった。
肺の痛みと、心の痛みが重なって。
彼の心の痛みは、どれくらいなんだろうかと、考えながら寝た。



2001年12月15日(土) 携帯メール

携帯でのメールが復旧して、もう何年か経つけど。


この携帯メールが無かったら。


あたしと、彼は。




こんな風に仲良しにはなっていなかったと思う。





こんな風にあいつがあたしを好きになる事は無かったと思う。







最初。


アドレスを聞いたのはあたしから。



飲み会の打ち合わせとかのために必要だったから。






事務処理感覚で、普通に聞いた。






そのうち、いろいろメールで会話するようになって。

ある日。


「夜中って何時くらいまでメールして大丈夫ですか?」


って、来た。


「夜中は音を切っているから、何時でも平気だよ。返さない可能性も大だけど」




そして。


そのうち。


毎晩毎晩。


メールをするようになった。



メールの中で。



「普段気の強い人が、ふと見せる弱さみたいなの。そう言うのがある人が俺のタイプなんですよね」


とか、


「友達で好きな女が出来た子がいるんですけど。何でか気になっちゃう、何でだか、考えちゃう。その人の事。って。そのうち、好きなんだなって気づいたらしくて。なんか、今の俺の気持ちに似ているんですよねー。」




あたしは。


鈍感だけど。


こいつが、あたしを好きになっている、と気づいてた。


それくらいはいくらなんでも分かった。



でも。



必死で気づかない振り。


怖いから。







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文明の利器がもたらした。


あたしたちの。


関係。



2001年12月10日(月) お台場

不思議な、不思議な、一日だった。
単なるバイトの大学生と、単なるパートの主婦が、クリスマスシーズンのこの時期にお台場の観覧車に乗りに行く。
しかも、主婦より大学生は5歳も下だ。
このシチュエーション、どうみたって、若い燕をはべらかせている、悪い主婦だろう。

ことの始まりは、あいつが、あたしに「ボーリングで俺が一番だったら観覧車に一緒に乗りに行ってくれませんか?」と言うものだった。
あたしもあたしで、単なる賭けって事で、軽くOKしたのが、運命なのかも知れない。

やつは、自分から言い出すだけあって、1番になった。笑顔で、「観覧車、お願いしますね」と言って来た。
簡単にOKするんじゃ無かったかな、まぁ、バイト仲間と一緒に遊びに来た感覚でいいのかな、なんて、考えながら、観覧車に乗り込んだ。

観覧車の中で、あいつはクリスマスプレゼントですと、包みを渡してきた。お礼を言ってあけると、中身はダイヤのネックレス。
「もらえるわけないじゃん、まずいよ」
「返されても、どうしろって言うんですか?」そりゃ、そうだ。
とにかく、この重い空気から抜け出したい一身で、再度お礼を言って閉まった。

観覧車に乗った後は、パレットタウンの中をあるいて、食事して、帰って来た。あたしは、帰りの車の中でも、ずっと構えているような、堅くなっているような、とにかく、会話をあまり出来なかった。
いったい自分は何をしているんだろう。だんなと子供がいる自分が、5つもしたの大学生と観覧車?もう30も近いおばさんの癖に。からかわれているのかしら?それとも、この子、たんじゅんに観覧車に乗りたかったのかしら?最終的には、「来るんじゃなかったな」そんな事を延々と考えながら、岐路についた。

帰宅後、あいつから携帯にメール。「凄く楽しかったです。なんか、夢みたいな一日でした。前よりも、ずっとずっと、あなたが好きになりました。」
呆然とした。


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