enpitu




   

 


mattow  2009年03月31日(火)
この時間の速さには抗えそうもない。とっておきの魔力で何か、現実を超えたスケールで白昼夢を見ては、のたうつ毒蛇の立てる牙にも似た反乱を思い描いてきたけれど、どうしようもない。心を失って、脳波は日増しに正常に近づく。乱れた心拍も元に戻る。すべては元の鞘に収まって、私はとてつもなくまっとうな住人になってしまう。ああ、想像もしていなかった。まっとうさ、その、強固な固定。ああ、白昼夢は相変わらず終わらないけれど、もはやそれは誰にも効果を及ぼせぬ本当の夢と化す。太陽が美しい。しらじらしく、手ごわい現実。そしてなんと安定していることか。




マンイーター  2009年03月17日(火)
今や此処を誰が訪れるというのでしょう。幾度となく閉鎖し、電子の海の底に、なかったことにして沈めてしまおうと思ったことか。まるで己の負の側面を地獄に潔く叩き落とすかのようにして。だがどうしてもできませんでした。己の顔は二つ。三つ? いつもの生きる空間で露わにする物理的な顔。ミクシィで見せる表面的な言語での顔。そしてどこまでも言葉だけで燃え上がる黒い炎としての、ここでの顔。どれも別に嘘ではない。演技というより本気だし、真実というより不実だし、どうともつかないけれど、手元をほどよく発って離れた言葉らは自由に根を張ります。私の制動も効かぬところで。

今になっていったい、誰がこんなところに訪れるでしょう。しかし私は、ここに言葉を落とすことを止められないのです。堅気で真面目な公務員が、暗い小部屋でバーナーを取り出し、禁断の一服を吸い込んで悦に陥るように。日常の世界で誰もが封じている禁じ手でもある、勝手に暴力的に根を張り侵攻する言葉を野放しにする所業。今更もう誰のものでもなく、もはや私の真実でも嘘でもない。だが私はこれの因子を落として回るときにとても幸せな気持ちになる。

人の心を食らう、恐るべき植物となり果てて、この世を席巻するがいい。私はせめてもの邪悪な意思を込めて、言葉の種を撒いては落とします。それが自分自身の足元をも絡め取って、自由を奪うかもしれないということも含めて・・・。そして今になって、まだこの場にわざわざ現われて立ち入った人類を、少しずつ、確実に、絡め取って、離さないのです。

終わりなき所業! いつまで?




リフレイン オブ ユー  2009年03月13日(金)
遠い過去を思い出す。剣をすらりと構えて、しっかりを明日を見つめて生きるあなたがいた。たゆたう、うやむやな、曖昧な自我の雲に溺れる私がいた。少しずつ瞼を開きゆく日々の中で、どこまでも世界の真ん中にはあなたがしっかりと立っていた。どうしてそうも強くなれるのだろう。どうしてあなたはそんなに太陽に似ているのだろう。私は無限に問いかけた。一言も言葉にはしなかったけれど。そしてあなたの横顔と後姿を盗み取るようになる。開き切った眼はあなたの光沢を奪い続けるためだけに動いていた。二度と会えなくなる日がいつか来るとは信じなかった。このままあなたをつかず離れずの距離で見つめ続けるだけの毎日が、ずっとそこにあると思っていた。

いつしかあなたはあなたで自我に苦しみ、他者に苦しみ、折り合いをつけて、そして太陽の光を失っていった。必然的なことだった。いつまでも一個の人間が太陽なんかでいられない。誰もが我が我がと言い出して群雄割拠。そして女の子は女性へと成り、日々の体調にだってひどいぐらつきを伴う。光だけで生きていたようなあなたはとても多くの曇り空と陰を宿すようになった。私はひたすら光の記憶を回収した。
今もそれは生きている。過去、と言えば、あなた以外にないぐらいに、とてつもなく強く鋼のように脳裏に突き刺さっている。もう二度とこの世で出会うことはない、純粋な光と熱の記憶。

目を閉じて、リフレインを刻む。あなたが今そこに蘇る。現実離れした強さと明るさに満ちた、太陽のようなあなたを刻む。あなた自身もが失ったであろう、強い光を、今度は私がインストールして使う。リフレインを刻み、今度はそれを私が使う。遠い時代のあなたを、あなたさえも失ったあなたを、今度は私が使う。

あなたは今どうしているだろう? もう二度と太陽には戻らないだろうと思う。いや、そうだと知っている。今度は私が使う。目を開き切って、この足で地上に立たねばならなくなった今、私がそれを使う。リフレインを刻み、誰よりも強く光り輝いていたあなたを、呼び覚ます。




メルトン  2009年03月10日(火)
襲い掛かってくる思い出が伸ばす手は、まるで最新式のエンジンでも搭載したかのように恐ろしく速く確実だ。私は胸を明け渡さないようひたすら前を向いて駆け抜け続ける。きっとこの体の匂いや色を覚えられてしまっているのだろう。振り切れる気がしないのだ。だが私はただひたすら駆け抜ける。もうすぐ追い越されるとしてもそれをすべて、悲しみと怒りに変えて、メルトンのシャワーのように浴びてやり過ごすつもり。絶対にこの本心は渡さない。絶対に。全身を炎に包まれてでもやり過ごす、つもり。絶対だ。きっと。




ラストワード  2009年03月03日(火)
色々あって自分の書いてたこと、書き方、身の翻し方を考えた。
その反省がまったく見当違いで勘違いだったと知ってからも、やはりそれはそれで考える価値があると思ったので、キーを打ちこむ手を止めて、考えた。

ほんとに、しょうもないことしか書けず、自分の本当に思っていることと逆のことしか書けなかったりするのだったら、いっそすべてを止めてしまえばいいのに、とも思った。

けれど発語が不十分で、口からはまったく頼りにならない、ふにゃふにゃとした不明瞭な言葉の切れ端が、おびえまじりに垂れ流されるばかり。これでは私の伝えたいことは一つも見当たらない。このままではやっぱりだめだ。このままでは結局だめだ。

胸のあたりを鉈で立ち割って、まだ動いている心臓と肺を差し出して、これが私の本当に言いたかったことだ! と伝えられるようなやり方に無我夢中で憧れた。

もしそれが達成されたら本当に死ぬしかないとは思った。その言葉の後に自分が生き続けることで、現状と表現が齟齬をいつか来してしまう時を迎えて、ただの上っ面な嘘に変わるのならば。

こうして私は際限のないトリップを繰り返して、誰の手にも落ちないところへ遊離し、一人、行き過ぎてしまうのだとも知った。

その繰り返しの日常が続く先には、今そこに居てくれている、最も傍に付き添ってくれる人が、疲れ果てて、却って孤独に苛まれるのだろうということも解りつつある。

悪魔に向かってこの心臓を差し出すつもりで、何かを一言、言うとすれば。際限なく繰り返され、深みを徐々に強めてゆく、再現できないほどのこのトリップの果てで言うべき一言を、言うとすれば。

その答えを誤ってはならない。
私はあの人を本当に愛しているのだ、ということだけは必ず言わねばならない。

必ず。
そこだけは必ず。






My追加
新サイトでアート、珍スポットのレビュー特集中!

★Link『マーでございます』★




writer*マー

★↓729参加・総合リンク↓★

☆テキスト・アート☆

零壱【01】ランキング

☆☆ダークゾーン☆☆

エンピツ