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今になっていったい、誰がこんなところに訪れるでしょう。しかし私は、ここに言葉を落とすことを止められないのです。堅気で真面目な公務員が、暗い小部屋でバーナーを取り出し、禁断の一服を吸い込んで悦に陥るように。日常の世界で誰もが封じている禁じ手でもある、勝手に暴力的に根を張り侵攻する言葉を野放しにする所業。今更もう誰のものでもなく、もはや私の真実でも嘘でもない。だが私はこれの因子を落として回るときにとても幸せな気持ちになる。 人の心を食らう、恐るべき植物となり果てて、この世を席巻するがいい。私はせめてもの邪悪な意思を込めて、言葉の種を撒いては落とします。それが自分自身の足元をも絡め取って、自由を奪うかもしれないということも含めて・・・。そして今になって、まだこの場にわざわざ現われて立ち入った人類を、少しずつ、確実に、絡め取って、離さないのです。 終わりなき所業! いつまで? |
いつしかあなたはあなたで自我に苦しみ、他者に苦しみ、折り合いをつけて、そして太陽の光を失っていった。必然的なことだった。いつまでも一個の人間が太陽なんかでいられない。誰もが我が我がと言い出して群雄割拠。そして女の子は女性へと成り、日々の体調にだってひどいぐらつきを伴う。光だけで生きていたようなあなたはとても多くの曇り空と陰を宿すようになった。私はひたすら光の記憶を回収した。 今もそれは生きている。過去、と言えば、あなた以外にないぐらいに、とてつもなく強く鋼のように脳裏に突き刺さっている。もう二度とこの世で出会うことはない、純粋な光と熱の記憶。 目を閉じて、リフレインを刻む。あなたが今そこに蘇る。現実離れした強さと明るさに満ちた、太陽のようなあなたを刻む。あなた自身もが失ったであろう、強い光を、今度は私がインストールして使う。リフレインを刻み、今度はそれを私が使う。遠い時代のあなたを、あなたさえも失ったあなたを、今度は私が使う。 あなたは今どうしているだろう? もう二度と太陽には戻らないだろうと思う。いや、そうだと知っている。今度は私が使う。目を開き切って、この足で地上に立たねばならなくなった今、私がそれを使う。リフレインを刻み、誰よりも強く光り輝いていたあなたを、呼び覚ます。 |
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その反省がまったく見当違いで勘違いだったと知ってからも、やはりそれはそれで考える価値があると思ったので、キーを打ちこむ手を止めて、考えた。 ほんとに、しょうもないことしか書けず、自分の本当に思っていることと逆のことしか書けなかったりするのだったら、いっそすべてを止めてしまえばいいのに、とも思った。 けれど発語が不十分で、口からはまったく頼りにならない、ふにゃふにゃとした不明瞭な言葉の切れ端が、おびえまじりに垂れ流されるばかり。これでは私の伝えたいことは一つも見当たらない。このままではやっぱりだめだ。このままでは結局だめだ。 胸のあたりを鉈で立ち割って、まだ動いている心臓と肺を差し出して、これが私の本当に言いたかったことだ! と伝えられるようなやり方に無我夢中で憧れた。 もしそれが達成されたら本当に死ぬしかないとは思った。その言葉の後に自分が生き続けることで、現状と表現が齟齬をいつか来してしまう時を迎えて、ただの上っ面な嘘に変わるのならば。 こうして私は際限のないトリップを繰り返して、誰の手にも落ちないところへ遊離し、一人、行き過ぎてしまうのだとも知った。 その繰り返しの日常が続く先には、今そこに居てくれている、最も傍に付き添ってくれる人が、疲れ果てて、却って孤独に苛まれるのだろうということも解りつつある。 悪魔に向かってこの心臓を差し出すつもりで、何かを一言、言うとすれば。際限なく繰り返され、深みを徐々に強めてゆく、再現できないほどのこのトリップの果てで言うべき一言を、言うとすれば。 その答えを誤ってはならない。 私はあの人を本当に愛しているのだ、ということだけは必ず言わねばならない。 必ず。 そこだけは必ず。 |
writer*マー | |
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