斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2005年04月06日(水) |
企業はバカ正直であれ |
先日、「個人情報を守れない個人情報保護法」という文章で、僕は、個人情報保護法をのガイドラインを拡大解釈したネット会社について、その会社からきた約款変更に「同意できません」旨のメールを送った、と書いた。
そのネット会社とは何度かやりとりがあったのだけれど、最終結論は以下のメール。
>弊社の利用目的にご同意頂けない場合につきましては、大変残念ではござ >いますが、お客様ドメインの管理を他社レジストラ(又は指定事業者)へ >移管頂く(トランスファー)、又はドメイン廃止のお手続きを行っ >て頂くかたちとなります。恐れ入りますが、何卒ご理解頂けます様宜しく >お願い申し上げます。
気に入らないなら出て行け、という事である。
この某社は、メールの文面から見て分かるとおり、レジストラである。 このレジストラは、僕の個人情報を関連会社、提携会社、その他と「僕の同意を得ることなく利用する」、と宣言してきた。 それが気に入らなければ、サービスは提供しない、と。 最も個人情報保護を重視しなくてはならないはずのレジストラがこの有様。
このレジストラの論理によると、個人情報保護法では、利用目的を明確にすれば、その範囲で個人情報は利用できる、と言う。 このレジストラは、個人情報の利用目的と範囲を「考え得る全て」に適用している。 個人情報利用の範囲と目的において、企業内を超え、提携企業、もしくはその他特定の者と共同利用する、利用者を無制限にしており、利用目的は、「想定の範囲を超えて利用することがある」、とも宣言している。 「想定の範囲を超えることがある個人情報の利用」に対して同意しろ、と言っている。 個人情報の取り扱いは「想定の範囲を超えることがある」と宣言し、それに対して同意したのだから、何をやっても合法。 同意するワケないだろ。
個人情報の無制限な利用を個人に強制する事は、個人情報保護法の趣旨に反するのではないか、と正したところ、それが気に入らなければ退会せよ、との返事。 同意できないのであれば、退会しろ、ときた。 もちろん退会したい。 この某社は「当社に対し支払われた利用料金は,いかなる理由があっても返還を行いません」と約款に書いている。 僕はこのレジストリに対し、数年間分の利用料金を先払いしている。 約款変更が気に入らなければ、金だけ置いて、出て行け、との事。 このレジストラに登録している僕のドメイン名は特殊ドメインなので、日本国内では、このレジストラしか扱っていない。 レジストラを変更したとしても、レジストラを海外に移さなくてはならないので、僕の個人情報は国内法では保護されない。 僕の個人情報保護のためには、ドメイン廃止しか手がない。
僕は、企業にとって、法律は最低限守るべきものであり、企業のモラルは法律よりもずっと高くてはならない、と思っている。 法律は最大限ではない。
きちんとした企業は、法律よりもずっと高いモラルを持って行動している。 法律違反、グレーゾーンにあたる行為は、ご法度だ。 司法に判断を委ねなくてはならないような行為には、そもそも近寄らない。
コンプライアンス、法令遵守と言った文脈で語られる場合、それは企業が法律に違反してはならない、という事を言っているのではなく、企業は法律を超える高いモラルを持って行動しなくてはならない、と言っている。
長期的な企業の利益を考えると、企業が最も利益を上げられる戦略は、「バカ正直」であることだ。 ゲーム理論を使って、定量的、定性的にシミュレーションしてみるといい。 ナッシュ均衡にたどりつく答えは、常に「バカ正直」である。
企業は、短期的な視野でもって、顧客を騙す、裏切る行為を取る事は、結局、その企業の価値を毀損する。 個人情報保護法が施行されたからといって、大慌てで約款を顧客に対して不利益になるような変更を行い、短期的な訴訟リスクを低減させるような行為は、企業にとって最悪の戦略である。
企業は「バカ正直」に顧客に接しなくてはならない。 株主利益、といっても顧客からお金が入ってこなくては、株主利益の前に収益さえ得られない。 「浮利」を追っているとしか思えない。
この某社の長期的成長はあり得ないだろう。 個人顧客だから、と言ってバカにした態度を取りつづける事が自殺行為だということに気づかないのか? 愚かだ。
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