| 2008年08月01日(金) |
terra/川上弘美 |
川上弘美の「terra」を読んだ。 「新潮」八月号に掲載されている。 これから単行本に収録されていくだろうから、内容にはあまり触れないでおく。 七月に読んだ小説の中でいちばん心を掴まれた作品だった。
とても大雑把に描くと、 死者=主人公=語るヒト=語られるヒト=女性と男性との語り、となる。
しかし乾いている。とても乾いているので切なさが剃刀みたいだった。 世界に穴が開いて、そこを風が吹き抜けていくような感覚。
死の「こちら側」と「あちら側」という関係が二人ともが同じ側にいた時の関係を彫り上げていくような会話。 シンプルで、とても哀しくて、とても切ない物語。
前向きも後ろ向きもない。ひたすらに透明になっていく感覚が読後に。 断ち切られる無念さも同じくらい。
terraとは大地。いのちが地に帰って行く物語なのだった。
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