散歩主義

2007年06月19日(火) みぞおち

■村治佳織さんのギターで、武満徹を聴いた。
曲目は「不良少年」。かわいたエレジーというべきか。やわらかな旋律が美しい。
続いてスペイン舞曲を聴く。

■モノカキの姿勢について。

レイモンド・チャンドラー「ロンググッドバイ」のあとがきで訳者の村上春樹さんは、彼の手紙を引用しつつ、こう書いている。


『うまく文章を書くことは、彼にとっての重要なモラルだった。
彼はある手紙の中にこのように書き記している。

「私は思うのですが、生命を有している文章は、だいたいはみぞおちで書かれています。
文章を書くことは疲労をもたらし、体力を消耗させるかもしれないという意味あいにおいて激しい労働ですが、意識の尽力という意味あいでは、とても労働とは言えません。
作家を職業とするものにとって重要なのは、少なくとも一日に四時間くらいは、書くことのほか何もしないという時間を設定することです。

べつに書かなくてもいいのです。
もし書く気が起きなかったら、むりに書こうとする必要はありません。
窓から外をぼんやり眺めても、逆立ちをしても、床をごろごろのたうちまわってもかまいません。
ただ何かを読むとか、手紙を書くとか、雑誌を開くとか、小切手にサインするといったような意図的なことをしてはなりません。書くか、まったく何もしないかのどちらかです。」

彼の言わんとすることは僕にもよく理解できる。
職業的作家は日々常に、書くという行為と正面から向き合っていなくてはならない。
たとえ実際には一字も書かなかったとしても、
書くという行為にしっかりとみぞおちで結びついている必要があるのだ。
それは職業人としての徳義に深くかかわる問題なのだ。おそらく。』




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