散歩主義

2007年01月26日(金) 犬に泣く

ハナの調子がどうもおかしい。
頻繁に嘔吐をする。
つい最近もそうなって、獣医さんに連れて行ったのだけれど
血液検査でも異常はなかった。

今日も、何度も水を吐く。夜になって三度繰り返したので
獣医さんへ「歩いて」いった。
そうなのだ、吐く以外はまったく元気なのである。

歩くのは全然平気で、一日に何度も出たがって、歩くと「るんるん」という風情だ。

獣医さんがじっくりと触診をし、体温を計り、毛づやを見、全身をくまなく見、首をひねる。
「異常はないですねえ。何故でしょうねえ」

うちがいっている獣医さんは作家の高村薫さんにそっくりなので、ひそかに「カオル先生」とよんでいるのだが、カオル先生の眼鏡がきらりと光ったのを合図に、ぼくの中で思い当たることがみつかった。

「あの、犬にもストレスってありますよね」
「はい、もちろん」
「こいつはぼくの横にいつもいるんです。パソコンを打っていたりして夜遅くなるとき、寝ているようにみえるんですけれど、実は寝ていないんじゃないかと思う時があるんです。寝不足は関係ありますかね」
「うーん、寝不足はないでしょう。寝たけりゃどこかほかの時間で寝ますよ。だけど小さい犬に多いんですけれど、ぴったり人にくっついている犬ほどストレスは多いみたいです」
「人の変化が原因ですか?」
「ええ、よくみていますよ」

「前にきたときは、ぼくが風邪をひいて酷い咳をしまくっていたときなんです」
「そのときに吐き始めたの?」
「ええ。で、先生に点滴と吐き止めの注射をしてもらいましたよね。だけど完全にとまったのはぼくが治ったときなんです」
「じゃ、今回は?」
ぼくは言葉に詰まった。ハナが意味不明の嘔吐を再び始めたのは、家人の抗ガン剤投与の日からなのだ。

何とかそのことを説明すると
「うん、とにかく人の様子はとてもよく見ているから、明るい顔してあげましょう」とカオル先生。

犬は飼い主に自分を重ね合わせてくるのである。
何から何まで。
飼い主が弱れば犬も弱る。飼い主が喜べば犬も喜ぶ。
人間が思っている以上に一心同体なのだ。

「そうだったのか、ハナごめん」
といいながら帰路に。
長い距離をぐいぐいと元気よく歩いた。
ハナに問題はない。
問題はぼくたちだった。

今日は早く寝てやろうとおもう。

good night,sleep tight


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