散歩主義

2006年04月04日(火) 2006年4月の竹林柚宇子展




竹林柚宇子さんの個展を観にいった。
花曇り。
自転車で走る京都の町はとても暖かだった。

今回の個展はこれまでとはずいぶん趣が違う。
喫茶店の壁の三面(しきり壁がなければ二面)に長方形の絵が10枚ほど、一繋がりの絵として
展示してあった。「一繋がり」とはそれぞれの絵の中に「赤い糸」が描かれ、
それが「繋がって」いるのだ、その糸を何人かの女性が指でつまみ、はさみ、触れている。

店に入ったら、「一名、非喫煙者」なので絵から少し離れた窓際の席に案内され
そこから店内を含めた形で観ていた。
これはおもしろい。絵によって場が括られている。
お客さんのほとんどはおしゃべりと飲食に夢中。
あなたたちはもう少しで赤い糸でくるりと巻かれてしまうところだったんだぞ、なんて思うと
さらにおもしろい。

そこで席を立ち、絵の仔細を観にいった。
感じたのは「熱」。
桜色のような地に繊細な血の色をした線がたゆたうように画面を泳いでいる。
絵によっては糸が横断しているだけのものもある。
それがあおりの角度に(だから赤い糸は宙にあると思われる)
描かれた女性たちの指で整えられ、角度を与えられ、次へ次へと
引き渡されていく。絵の繋がり全体からとても上品な熱が発せられている。
混じりけがない。

以前、竹林さんとお話しした時、絵という概念からはみ出してしまうものがつくりたい
とおっしゃっていたことを思い出した。
それは絵に直接、古い建具そのものをつけてしまうような形態も生みだしたけれど、
このシンプルな表現であっても絵は絵でありながら、さらに
「そうではない何か」を生み出していた。

それはその場に行かなければ感じる事ができないもの。
天候、人の存在、音、そのなかに密やかに糸を繋ぐ女がいるという「空気」。
「赤い糸」は愛しあう男女を結ぶものとして語られる。
竹林さんの製作意図もそこから発している。だとしたらなんと一途なんだろう。


プレスリリースに書かれた竹林さんの言葉。

寝ても 覚めても 恋しくて
恋しくて 恋しくて
あなたが 恋しくて
あなたを 愛する わたしが 恋しくて
わたしを 愛する あなたが 恋しくて
寝ても 覚めても 恋しくて

恋ふように 絵を描く

(竹林柚宇子)


さてぼくはカフェオレを飲み干し、起ち上がる。
店を出て外階段を下り自転車に乗った。
たぶん赤い糸は目に見えなくなって、ゆらゆらと天まで伸びていたに違いない。
桜の異名は「夢見草」だったなあと、そんなことも思いながら。

●竹林柚宇子展
2006年4月3日〜4月22日(土) 日祝休み
午前11時より午後9時まで
京都市中京区丸太町通り小川西入ル 京都ITPクリエイターズビル2F
カフェ・ブランチ内
入場無料。

●お昼時などは混み合うので外した方がおすすめです。


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