雨の降る薄ら寒い日だった。
久しぶりに陳信輝のギターを聴いた。 今は亡き兄のヒーローだった。兄と二人でクリームのホワイト・ルームをon timeで聴いたのが中学生の時だった。それから二人でロックとジャズを漁るように聴きだした。 二人の好みはどんどん離れていったけれど、ピタリと一致する趣味もあった。
それがフード・ブレイン。 ギターが陳信輝、ベースがルイズルイス加部、ドラムスがつのだひろ、キーボードが柳田ヒロ。 このグループの作品を聴いて混沌から生まれる信じがたい一瞬を経験した。 明らかにフリーセッションの生み出すものに焦点を当てた作品だった。 陳信輝のアプローチは明らかにジャズの影響が強く出ていて、それもインプロヴィゼーションの域に達していた。
はるかに時代が下り、もはやギターを置き、ビジネスマンとして辣腕をふるう彼にインタヴューした記事がかつてのブルータスに載っていて、それによるとやはりローランド・カークなどを熱心に聴いていたという。
兄は高校の時からドラムを叩きはじめ、結構なとこまではいったと思う。 かつてふたりで熱を上げていた作品を聞きながら、その頃の事を思い出していた。 そして作品の変わらぬ新しさに改めて感心もしていた。 ぎりぎりまで自由を標榜した精神の生み出したものは、いつまでもスリリングなままだ。
だから「ヨコハマ」は憧れだった。 亡くなる前に兄はそこで暮らしていた。
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