散歩主義

2005年11月03日(木) 「封を切ると」

今日は祝日。
郵便局もお休みなので、「音函」の発送も出来ない。
部屋でいろいろなことを考えたり、散漫に過ごす。

何か書こう、とぼんやりとは決めていた。
しかし、書くことに入ることがためらわれる。
理由はぼんやりとは知っている。知っているけれども
はっきりとさせなければ書けないことも知っている。

つまりどういうことかというと
「封を切ると大変なこと」になるからだ。

「封を切ると大変なことになる」というのは
多田智満子さんの最後の詩集「封を切ると」の
「郵便物あるいは悪夢」という詩の最初の行である。

最後の詩集のタイトルを「封を切ると」としたのは高橋睦郎さん。
詩に使われている時とは言葉の意味を変えている。
秀逸なタイトルの付け方だと思う。
「この詩集の封を切ると…」
とも読めるし、「…」や「この詩集」の部分に読者ひとりひとりが
言葉を埋め込むことが出来るからだ。

今日書いている文脈での「封を切ると」の前とあとに来る言葉は
「ぼくの封を切ると溜息が止まらなくなる怖れがある」となるだろうか。

本を印刷し、綴じて、形を整え発送するという作業から離れて
詩や物語のイメージを捕まえようとしたり、書き出そうとすると
一気に空気の比重が重くなる。体温が上がる。そして溜息をつく。
そうなるのはまさに「封を切る」感覚なのだ。

とまれ、多田さんの詩からは多くのことが学べる。励ましにもなる。
よく書くためには、よく読むことなのだと改めて思う。

詩集「封を切ると」の付録に書かれた小池昌代さんと池澤夏樹さんの
「寄せる言葉」を何度も読んでいる。
まるで息のようだ、血のようだと感じながら。

そうして結局、ぼくは詩集「封を切ると」の封を切って熱中しているのだった。


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