| 2005年01月05日(水) |
パウラ・モレレンバウムを聴く |
彼女の名前を初めて知ったのは、夫とともに坂本龍一氏と組んだ、アントニオ・カルロス・ジョビンへのトリビュートともいえるプロジェクト、”morelenbaum2/sakamoto”のアルバム”CASA”ででした。
その透明感あるヴォーカルに魅了され、美しい水や軽やかな風に喩えたくなる誘惑に駆られました。 その声は今回紹介するアルバム「ビレンバウム」でも健在です。
このアルバムには大きな二つの特徴があります。 ひとつはボサ・ノヴァ、最大の詩人ともいえる故ヴィニシウス・ディ・モラエスの作品に絞ったこと。
もう一つは現在進行形の最新のブラジル音楽による演奏であること。音は新しいです。
モラエスの代表的な作品は例えば「イパネマの娘」。ボサ・ノヴァの創生期からの詩人であり、様々な作曲家と組んだ傑作が数多くあります。 このアルバムでは、ギタリストとしても有名なバーデン・パウエルが3曲、御大アントニオ・カルロス・ジョビンが3曲、カルロス・リラが2曲。ピシンギーニャが1曲、シコ・ブアルギが1曲、モラエス自身名義が2曲という構成。
パウエルの作品はジャズ・サンバ的だし、ジョビンはボサノヴァそのもの。他の作品もショーロ的なものもあれば熱いサンバもあり、という具合。 アレンジが凝っていて、エレクトロニクス加工された音も実に効果的に配され、音楽そのものが発展している感がします。けっして損なわれる方向ではないと思います。
一番好きなのは5曲目の「インサンセテス」。アントニオ・カルロス・ジョビンが作曲。 このボサノヴァのスタンダードともいえる曲に施されたアレンジがなんとも絶妙。「電子音」が細かなニュアンスの表現に成功していると思います。歌詞は恋に破れた人へのクールなメッセージなんですが、そのクールさを引き立たせる曲とその演奏が何ともいえません。
ところどころエレクトロニクスポップに意匠を変えて久しい、EBTGに通じる部分もあります。だけど考えてみれば彼らもボサノヴァから彼らの音楽をスタートしていて、そのスタンスは変わっていないなと改めて思ったり。
使われている曲は古い曲だけれど、新しい息を吹き込まれて鮮やかな存在感に溢れています。
ブラジルの新しい水、新しい風です。 モラエスの歌詞はすべて「恋」。焦がれ、身を灼き、望み、燃え上がる。成就と破綻と…。 このテーマは永遠ですね。
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