| 2004年06月08日(火) |
N‘s jazz house vol.5 |
ぼくは一時期、ジャズといえばキース・ジャレットばかり聴いていたころがあります。 20代の何年か。 「ケルン・コンサート」はもちろんだったけれど、ソロのほかにコンボの演奏が好きでした。きっかけとなったのは「SOMWHERE BEFORE」という作品。とても美しいマイナーのメロディーのリフがあって、たちまち虜になったものでした。今日、紹介するのは、さらに名盤だと思っている「DEATH AND FLOWER」(邦題「生と死の幻想」)。1974年の作品です。
思えばこの作品のリリースから30年が過ぎたんですね…。
30年たってどうかと言うと、まったく輝きは落ちていないし、むしろキースの音楽性の多彩さ、彼の特徴でもあるメロディーの美しさを再確認できるし、そしてコンポーザーとしての才能と先見性を思い知るし、曲づくりがまったく「新しい」ままだということにも気づきます。 ぼくにとっては名盤ですね。
メンバーは キース・ジャレット…ピアノ デューイ・レッドマン…テナーサックス チャーリー・へイデン…ベース ポール・モチアン…ドラムス ギレルミ・フランコ…パーカッション
キース、へイデン、モチアンのトリオが核で、そこにレッドマンが加わり、さらに本作でギレルミが加わった形です。 デューイとヘイデンはオーネット.コールマンのコンボでキャリアを積み、モチアンはビル・エヴァンスのコンボで活躍していたという相当の強者で、変幻自在の素晴らしいプレイを聴かせてくれます。 現在のワールドミュージックのアイデアを内包した、こんな素晴らしい演奏が1974年にすでに存在したということが、凄いことです。
キースのピアノは繊細で美しく…特にニ曲目の「PRAYER」(邦題「祈り」)を聴いてください。この曲はベースとピアノのデュオなのですが、このピアノはとにかく美しい。
現在のキース・ジャレットといえばスタンダード・トリオの演奏が、とにかく凄くて、そちらもたっぷりと聴いていますが、若く音楽的な野心に満ち、新しい「航路」を開くべく大胆に、怖れを知らず、美に耽溺していくかのような演奏を展開していたころの、「前のめり」の姿勢にたまらなく惹かれます。
オリジナル・ジャケットにはキースの詩 DEATH AND FLOWER が書かれています。 その中の一節。
私たちは誕生と死の間を生きている あるいはそのように自分自身を納得させている 本当は自らの生の絶え間ない瞬間に 生まれつつあると同時に 死につつもあるのだ 私たちはもっと花のようにつとめるべきである 彼らにとっては毎日が生の体験であり、死の体験でもあるから それだけに私たちは花のように生きるための 覚悟を持たなければならないだろう
その後のキースの華々しい活躍と大きな病を得てほとんどピアノから離れた時期と、そして復活と、そんな時間の流れを想うとき、この詩とこのアルバムはとても意味深いものとして読めてきます。それはたぶん花から種になり樹となっていったミュージシャンの、たぶん最も「花」であった時代の貴重なドキュメントとして。
その後のキース作品については、ぼくのホームページの「MUSIC REVIEW」のなかで、「Melody at Night,With You」に関して感想を書いています。よろしければそちらもどうぞ。
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