散歩主義

2003年10月20日(月) 天才

昨日のテレビ「情熱大陸」をご覧になっただろうか。
ぼくはワクワクしながら見てました。今、ニューヨークで有名な日本人といえばダントツでヤンキースの松井だけど、ジャズファンの間では一人の若き日本女性が注目を浴びている。その名は上原ひろみ。23歳。ピアニスト。

この人の演奏は凄い。ジャズだから当然ライブのほうが凄いだろうと思っていた。それが昨日聴けた。凄かった。エネルギーの塊!!
息を呑んだ。

普段のホームグランドはボストン。バークリー音楽学院にいる。昨日の番組では彼女の私生活や発言も紹介していて、おもしろかった。
面白かったというと失礼かもしれない。もんのすごいエネルギーをもらった。

それでなくてもマイノリティのジャズ。その中の日本人、というのがどれほど好奇の目で見られているか、はっきり意識していた。
人影も疎らなジャズクラブの知り合いのライブを見る。テクニックと独創性がないと客は来ない。そして、テクニックと独創性「だけでも」客は来ない。

自らの印象を強くするために、典型的な小柄なアジア人の女性のように見える彼女は、黒髪を逆立て、膨らませて固める。そしてピアノの上で指が弾ける。
そう弾く、というよりも弾ける。出てくる音がとにかくすごい。

「できないとか、なんだとか言うのはセンチな子供のいうこと」と切って捨てるように言う。「曲がかけないとか。全部、自分がしていないだけのことなのにね」
若さの自負が彼女を前に前に送り出す。それでいいんだと思う。

けっして豊かとは言えない生活。週に一度のカップ麺が「ごほうび」だという。ニューヨークのライブに来たときの楽しみがyoshinoyaの牛丼だという。
着古したコート。ジーンズ…。生活のすべてをジャズに投企している。

多くのジャズの先達が彼女に賛辞を惜しまない。ほんとうにどこにでもいそうなな女の子のような彼女。激しいインプロヴィゼーションのあいまになんとも言えない至福の表情をするのも同じ人だ。ちょっと信じられない。

「幸運」と言う人もいるだろう。しかし、それを引き寄せたのは彼女の才能とそれをせっせと掘り返す彼女自身だ。「才能だけじゃだめ」ということを彼女は知っていた。

この音の凄さはしかし、「天才」である。
11月。彼女が日本に帰ってくるという。コンサートツアーだ。若さの刺激溢れるピアノが日本でどれだけ受け入れられるだろうか。

楽しみである。


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にしはら ただし [MAIL] [HOMEPAGE]