斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2005年11月26日(土) |
ソフトバンク株で儲かってしまっている僕の矛盾 |
ソフトバンク株が異常な高騰を続けている。 僕は、ソフトバンク株のホルダーなので、結構な利益が出ていて儲かっている。 ありがたいことではあるのだけれど、この相場、本当に怖い。
理論的には説明のつかない株価だから。
ソフトバンク株が高騰して、かつホルダーとして儲かっているんだから、いいじゃん、という考え方もあるのだろうけれど、説明のつかない高騰なので、いつ暴落するかわからない恐怖がついてまわる。 安値で仕込んでいるので、少々下げても、十分な利幅は取れるのだけれど、怖い。 株は、ゆっくりと上昇するけれど、下落するときの速度は速い。 下落するときは、あっという間に下落する。 買い時よりも売り時のほうがずっと難しい。
僕は、毎日、今日は暴落かな、と思う。 でもそれに反して、ソフトバンク株は急騰を続けている。 そして、仮に暴落したとしても、それが継続的に下落する兆候なのか、単なる株価の調整なのかの判断は難しい。
株価は正しい企業価値だけで形成されるわけではない。 正しい企業価値をもとに判断すれば、ソフトバンクの株価上昇は異常である、と言える。 僕には、今後、どのようにソフトバンク株が推移するか、全く予想がつかない。 基本的に赤字会社なので、PERなどの一般的な株式評価指標が使えない。 企業価値は、将来の収益を何年か取って、それを現在価値に割り戻して求める。 が、ソフトバンクは基本的には赤字会社だし、将来の収益見通しも予想は難しい。 将来の収益を何年分取るか、というのは、すなわちPERである。 PER倍率が高い、ということは、将来に渡って、高収益を期待されている成長企業、ということである。
ソフトバンクの株価は、全く評価のしようがない。 赤字だとPERが見えない。 たぶん、将来の収益性はこんなもんだろう、というほとんど勘にもとづいた乱暴な方法で企業価値を求めなくてはならない。 ソフトバンク自体は、将来の明確な業績見通しを明らかにしていないので、インプットするデータはあくまでも僕の個人的な見通しである。 ソフトバンクの正しい企業価値を算定、デューデリできる人間など、世界中探してもひとりもいないだろう。
ソフトバンクの株価を売り上げや利益、資産などから推察することは、全く不可能。 チャートや手口、誰が買っているか、信用取り組み状況などから株価を判断するしか手がない。 そして、チャート的には、明らかに株価の上昇速度が速すぎる(機関投資家ではなく、個人投資家、しかもデイトレが多いので、手口もわかりづらい。信用取り組み状況はそれほど悪くない。窓も空いてはいない)。
僕は、毎日、毎日、今日こそは暴落するだろう、と思っていると、予想に反して株価が上昇している。 でもって、僕はホルダーなので、ここのところ毎日、自分の資産が恐ろしい勢いで増えていっている。 僕は、全く予想ができず、いや、それどころか今日こそは、下がるだろう、そろそろ逃げなきゃ、と思いつつ、ソフトバンクの株価は下落の気配を見せず、予想に反して資産が増える。 気持ち悪い。 儲かっているんだけど、儲かっている理由が説明できない。
ソフトバンクの適正株価が読みにくいのは、投資会社から事業会社への転換の渦中にあるから、という側面もある。 事業が複雑怪奇なコングロマリットなので、事業の評価が難しい。 一般的にコングロマリットは、コングロマリットディスカウントが入るので、本来は過小評価される傾向があるのだけれど、なぜだかソフトバンクに限っては高評価。
加えて、携帯電話事業は今までのソフトバンクの事業モデルとは異なるアセットビジネス。 最初に大きな投資をして、長期にわたって、償却するモデルだ。 今までの投資会社的なスタンスとは全く異なる。 株価指標でいえば、PBRが重視されるモデルへの転換期。 P/LやC/FよりもB/S。
携帯電話事業への参入は、電波という有限の資源をもとにした免許を取得しての認可事業であり、死にいくしかない固定通信と比べると、ずっと収益性が高いし、ある種の独占事業である。 携帯電話事業への参入が認められたことそのものは、「買い」の材料である。 しかも、ソフトバンクは、YahooBBや日本テレコムといった固定通信網も保有しており、携帯電話と固定通信の融合したサービス(いわゆるFMC)を展開できる数少ない企業でもある。 一応の優位性はあるのだ。
ところが、携帯電話事業だけを取ってみると、電波を割り当てた総務省の思惑は、競争促進にある、と思える。 総務省がソフトバンクに期待しているものは、いわゆる「当て馬」。 現在の、NTTドコモ、KDDI、ボーダフォンの3社が市場と利益を独占している現状に対して、競争を促進しようとしているのではないか、と思われる。 ソフトバンクが携帯電話事業に参入することは、ナンバーポータビリティーの導入と相まって、携帯電話事業の競争を激化させるだろう。 間違いなく激烈な価格競争が始まる。
ソフトバンクは、その競争を激化させるためのただの当て馬のように見える。 今更、携帯電話事業をゼロベースで立ち上げて、競争力を持てるのか? NTTグループは、グループ再編成により、NTT法ギリギリのビジネスを展開しようとしている(僕はすでに違法といってもいいくらいの状態だと思う)。 少なくとも、ソフトバンクは、NTTドコモ、KDDIには勝てない。 ボーダフォンは、何とかできるかもしれないけれど(場合によっては買収?とか少なくともMVNOくらいは使うだろう。でも、ボーダフォンのインフラを使うんだったら、そもそも免許なんていらないよな・・・)。
その勝ち目のない戦いに数千億円が投入される。 アセットビジネスなんだから、最初に巨額の投資をせざるを得ない。 ソフトバンクは、赤字が出ないように慎重に投資していく、と言っているが、固定網と違い、携帯電話はどこでも繋がらないと話にならないので、少しずつ投資していく、という論法はおかしい。 固定通信、光ファイバーなどは、点から線、面へと少しずつ広げていけばいいのだけれど、携帯電話は、サービス開始時点で全国どこでも繋がる、というインフラが整備される必要がある。 立ち上げ時に一気に投資してインフラを整えなくては、携帯電話事業ははじめられない。 今更23区内だけ繋がる(かもしれない)携帯電話に乗り換えるアホがいるか? ソフトバンクに勝ち目があるとすれば、数千億から一兆円近い投資を一気に行えるか、固定網との融合を早期に達成できるか(今期の黒字を維持したい)、NTTの再編を止められるか(総務省に借りがある)、しかない。 僕なら、裁判で勝てる勝てないは別として、NTTのグループ再編に対して、独禁法違反、NTT法違反で訴えて、時間稼ぎをすることからはじめるけど。 これから数年間の通信のキーワードはFMC、固定網と携帯網の融合なので、NTTグループの再編の動きは、ソフトバンクにとっては脅威であるはず。
と、まあ僕にとっては、あり得ない、と思いつつも、現実にはソフトバンクの株価は異常な高騰を続け、僕は儲かっている。 逃げたい。 でも、僕は、儲かっているし、株価上昇のスピードは落ちていない。 自分の思惑とは、全く逆なのに、儲かっている、という現実。
ギャンブルというか、チキンレースというか。 株価はいずれ適正価格に収斂するはずなので、暴落する日は来るだろう。 でも、いつ暴落するのか、どこが天井なのかが判断不可能。 スイングトレードでもやってヘッジするしかないのかな。
逃げ遅れないようにしなきゃね。 もはや欲との戦いだ。
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